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第31話 既視感のある世界
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「……スター。マスター」
「…………」
僕を呼ぶ小さな声。
僕はゆっくりと目を開けた。
頬に触れる地面の冷たい感触が、徐々に意識に伝わってくる。
僕は……客の少女に書物を返そうとして……
そこで意識が覚醒し、僕はがばっと身を起こした。
そんな僕を傍で膝をついて見つめているのは、僕に本を売りに来た冒険者の少女。
彼女は僕が目覚めたことに安堵したのか、ほっと息をついた。
「……良かった。なかなか目を覚まさないから、死んじゃったのかと思って……」
「……そう簡単には死なないよ。大丈夫」
僕は周囲を見回した。
僕たちを取り巻いているのは、名前も分からない木々の群れ。真っ黒な空と、その割には不自然に明るい土の道。
僕は眉間に皺を寄せた。
「……此処は?」
「それが……」
少女は何やら言いにくそうに、答えた。
「私たち……あの本の中に、吸い込まれてしまったみたいなんです」
「……は?」
僕は少女に目を向けた。
「本に、吸い込まれた?」
「一瞬だけ、あの本に描かれた魔法陣が大きくなるのが見えたんです……それに、見て下さい……この景色」
彼女は立ち上がって、周囲の景色に目を向けた。
「この景色は、あの本に描かれていた景色と酷似しているように思えます……ですから、私の予想は、あながち間違っていないと思うんです」
……確かに言われてみれば、この景色は『逆さの塔』と記されていたページに描かれていたものに似ているような気がする。
彼女の言う通り、本当に、僕たちはあの書物に吸い込まれて……?
こんな現象を引き起こすものを、僕はひとつ知っている。
それは『魂の絵画』と呼ばれる罠だ。古びた城とか建物型のダンジョンなんかによくある魔術仕掛けの罠で、近付いた人間を絵画の中に引き摺り込んでしまう厄介なものなのだ。
絵画に引き摺り込まれたら、その絵画の世界を探索して出口を見つける以外に脱出する方法はないとされている。しかし大抵の場合はその出口を見つけられずに絵画の中で息絶えてしまうので、基本的に絵画に引き摺り込まれたら助からないと言っていい。
それと同じだとしたら、この世界を探索して出口を見つけない限り、僕たちは此処から出られないということになる。
……とんでもないことになった。
僕は頭を抱えた。
こんな何の手掛かりもない、何処まで広がっているかも分からない世界の中に隠されている出口を探さないとならないなんて。
こんなの、ダンジョン探索と一緒じゃないか!
「あの……」
少女は言った。
「此処にいても状況は何も改善しないと思うんです……ですから、移動しませんか?」
「………… そうだね」
僕は溜め息をついて、立ち上がった。
気が重い。しかし此処で僕が腐っていたって、僕たちがこの世界に閉じ込められてしまったという事実は変わらないのだ。
立って、歩かなければ。元の平穏な日常に戻るために。
僕は少女に言った。
「僕は戦えないから、万が一魔物が出てきた時は君に任せることになるけど、構わないね?」
少女は頷いて、背負っていた大きな杖を取り出した。
「分かりました。マスターのことは、私が精一杯守ります」
「シルカでいいよ。マスターって呼ばれると何だか君のことを使役してるような気分になる」
「それなら、私のことはアリスと呼んで下さい。……それでは、シルカさん。行きましょう」
僕たちは、道に沿って歩き始めた。
僕たちが行く先には、森の木々に隠れるようにして塔が建っている。
とりあえずはそれを目指すことにして、森の中を進んでいった。
「…………」
僕を呼ぶ小さな声。
僕はゆっくりと目を開けた。
頬に触れる地面の冷たい感触が、徐々に意識に伝わってくる。
僕は……客の少女に書物を返そうとして……
そこで意識が覚醒し、僕はがばっと身を起こした。
そんな僕を傍で膝をついて見つめているのは、僕に本を売りに来た冒険者の少女。
彼女は僕が目覚めたことに安堵したのか、ほっと息をついた。
「……良かった。なかなか目を覚まさないから、死んじゃったのかと思って……」
「……そう簡単には死なないよ。大丈夫」
僕は周囲を見回した。
僕たちを取り巻いているのは、名前も分からない木々の群れ。真っ黒な空と、その割には不自然に明るい土の道。
僕は眉間に皺を寄せた。
「……此処は?」
「それが……」
少女は何やら言いにくそうに、答えた。
「私たち……あの本の中に、吸い込まれてしまったみたいなんです」
「……は?」
僕は少女に目を向けた。
「本に、吸い込まれた?」
「一瞬だけ、あの本に描かれた魔法陣が大きくなるのが見えたんです……それに、見て下さい……この景色」
彼女は立ち上がって、周囲の景色に目を向けた。
「この景色は、あの本に描かれていた景色と酷似しているように思えます……ですから、私の予想は、あながち間違っていないと思うんです」
……確かに言われてみれば、この景色は『逆さの塔』と記されていたページに描かれていたものに似ているような気がする。
彼女の言う通り、本当に、僕たちはあの書物に吸い込まれて……?
こんな現象を引き起こすものを、僕はひとつ知っている。
それは『魂の絵画』と呼ばれる罠だ。古びた城とか建物型のダンジョンなんかによくある魔術仕掛けの罠で、近付いた人間を絵画の中に引き摺り込んでしまう厄介なものなのだ。
絵画に引き摺り込まれたら、その絵画の世界を探索して出口を見つける以外に脱出する方法はないとされている。しかし大抵の場合はその出口を見つけられずに絵画の中で息絶えてしまうので、基本的に絵画に引き摺り込まれたら助からないと言っていい。
それと同じだとしたら、この世界を探索して出口を見つけない限り、僕たちは此処から出られないということになる。
……とんでもないことになった。
僕は頭を抱えた。
こんな何の手掛かりもない、何処まで広がっているかも分からない世界の中に隠されている出口を探さないとならないなんて。
こんなの、ダンジョン探索と一緒じゃないか!
「あの……」
少女は言った。
「此処にいても状況は何も改善しないと思うんです……ですから、移動しませんか?」
「………… そうだね」
僕は溜め息をついて、立ち上がった。
気が重い。しかし此処で僕が腐っていたって、僕たちがこの世界に閉じ込められてしまったという事実は変わらないのだ。
立って、歩かなければ。元の平穏な日常に戻るために。
僕は少女に言った。
「僕は戦えないから、万が一魔物が出てきた時は君に任せることになるけど、構わないね?」
少女は頷いて、背負っていた大きな杖を取り出した。
「分かりました。マスターのことは、私が精一杯守ります」
「シルカでいいよ。マスターって呼ばれると何だか君のことを使役してるような気分になる」
「それなら、私のことはアリスと呼んで下さい。……それでは、シルカさん。行きましょう」
僕たちは、道に沿って歩き始めた。
僕たちが行く先には、森の木々に隠れるようにして塔が建っている。
とりあえずはそれを目指すことにして、森の中を進んでいった。
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