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第97話 海の街セロナ
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僕たちは日が沈むまで北を目指して飛び続け、目的地の途中にある村で一夜を明かした。
街の宿と違って小さく古めかしい宿ではあったが、幻獣が飛ぶ速度と高度の恐怖と戦い続けていた僕にとっては心休まる時を提供してくれる有難い場所であった。
木の匂いがする毛布に包まって一夜を明かし、翌朝日の出と共に出発して、再び高度と速度の恐怖と戦いながら飛び続け。
何とか、スエルニャ洞穴最寄の街であるセロナに到着した。
セロナは、アメミヤよりも賑やかで活気付いた海の街だった。
新鮮な魚を売っている屋台が通りに並んでおり、そこかしこから魚を懸命に売る店主たちの威勢の良い声が聞こえてくる。
街に吹く風は潮の香りを含んでおり、海が間近にあることを感じさせてくれる。
朝飯を食べるために入った食事処のメニューも魚を中心としたものばかりで、お勧めだとプッシュされた料理が幾つも並んでいた。
ガラムサーモンの包み焼き。メディクラムのバターソテー。ガラムトゥーナのステーキ。どれも美味しそうだ。
どれにしようかな、とメニューを見ている僕の横で、ブランは料理と一緒にブランデーを注文していた。
おいおい、これからダンジョンに行くのに飲むのかよ。
と思ったら、ブランは運ばれてきたブランデーを腰のポーチから取り出した空の瓶に移し変えていた。
「……何やってるんだ?」
「これか?」
瓶の蓋をしっかりと閉じてポーチにしまいながら、ブランは笑う。
「こいつは、保険だ」
「保険?」
一体何だと言うのだろう。
意味が分からない。
そんな彼に目を向けながら、イオンは温かい茶をふーふーと吹き冷ましながらちびちびと飲んでいる。
僕もさっさと料理を注文しよう。
僕は店員さんに料理を注文して、メニューをイオンに渡した。
イオンはメニューを見て少し考えた後、黒パンのサンドイッチを注文していた。
どうやら彼女は小食らしい。
「さて。目的地に着いてからだが──」
空になったコップをテーブルの端の方に寄せて、ブランは真面目な面持ちで話しだした。
「おそらく中は錬金術の罠だらけだ。魔物も相当の数がいると思われる。それらを確実に潰しながら、最奥を目指す」
「海賊王の宝の在り処のヒントになる鍵があるって言ってたな。それがどんなものなのかは分かるのか?」
僕の問いに彼は小さく首を振った。
「分からん。だが、最奥に行けばあるだろうと俺は踏んでいる」
憶測だけでダンジョンの最奥まで突っ込む気なのか。相変わらずの猪突猛進っぷりだな、この男は。
前情報を集めて準備をしてからダンジョンに潜る兄貴とは大違いだよ。
「シルカの役割は錬金術の罠を無力化することだ。頼りにしてるからな」
「……あまり当てにするなよ。錬金術の罠ってそんなに単純なものじゃないんだからな」
錬金術の罠は同じ錬金術でなら必ず解除できるというものではないのだ。
中には設置されたら最後、発動させなければ無力化できないものもあるのである。
それを見分けることはできないので注意が必要だ。
「それよりも。魔物が出たらちゃんと守ってくれよ、僕のこと」
「何だ、灰燼の魔術師の台詞とは思えないな。お前、魔物を問答無用で燃やすのは得意だったよな?」
「僕は冒険者を引退してるって言ったはずだよな!?」
僕の大声に、ブランは笑いながら分かってると言うばかりだった。
本当に……大丈夫なのか、この男。
自分で自分の身を守らなければならないという杞憂が現実になりそうで恐ろしいよ。
「まあ、何とかなるさ。ちょっとした遠足みたいなもんだと思って気楽に行こうぜ」
「いざという時は幻獣たちに何とかしてもらいますからぁ、大丈夫ですよぉ」
「……何でそんな楽天的に物事を考えられるんだよ、あんたたちは」
二人の気楽な言葉を聞きながら、僕は不満をぶつけるように運ばれてきた料理にフォークをがつっと突き立てた。
やっぱり、よろず屋の店主はダンジョンになんて行くもんじゃない。二人を見ていてますますそう思った僕だった。
街の宿と違って小さく古めかしい宿ではあったが、幻獣が飛ぶ速度と高度の恐怖と戦い続けていた僕にとっては心休まる時を提供してくれる有難い場所であった。
木の匂いがする毛布に包まって一夜を明かし、翌朝日の出と共に出発して、再び高度と速度の恐怖と戦いながら飛び続け。
何とか、スエルニャ洞穴最寄の街であるセロナに到着した。
セロナは、アメミヤよりも賑やかで活気付いた海の街だった。
新鮮な魚を売っている屋台が通りに並んでおり、そこかしこから魚を懸命に売る店主たちの威勢の良い声が聞こえてくる。
街に吹く風は潮の香りを含んでおり、海が間近にあることを感じさせてくれる。
朝飯を食べるために入った食事処のメニューも魚を中心としたものばかりで、お勧めだとプッシュされた料理が幾つも並んでいた。
ガラムサーモンの包み焼き。メディクラムのバターソテー。ガラムトゥーナのステーキ。どれも美味しそうだ。
どれにしようかな、とメニューを見ている僕の横で、ブランは料理と一緒にブランデーを注文していた。
おいおい、これからダンジョンに行くのに飲むのかよ。
と思ったら、ブランは運ばれてきたブランデーを腰のポーチから取り出した空の瓶に移し変えていた。
「……何やってるんだ?」
「これか?」
瓶の蓋をしっかりと閉じてポーチにしまいながら、ブランは笑う。
「こいつは、保険だ」
「保険?」
一体何だと言うのだろう。
意味が分からない。
そんな彼に目を向けながら、イオンは温かい茶をふーふーと吹き冷ましながらちびちびと飲んでいる。
僕もさっさと料理を注文しよう。
僕は店員さんに料理を注文して、メニューをイオンに渡した。
イオンはメニューを見て少し考えた後、黒パンのサンドイッチを注文していた。
どうやら彼女は小食らしい。
「さて。目的地に着いてからだが──」
空になったコップをテーブルの端の方に寄せて、ブランは真面目な面持ちで話しだした。
「おそらく中は錬金術の罠だらけだ。魔物も相当の数がいると思われる。それらを確実に潰しながら、最奥を目指す」
「海賊王の宝の在り処のヒントになる鍵があるって言ってたな。それがどんなものなのかは分かるのか?」
僕の問いに彼は小さく首を振った。
「分からん。だが、最奥に行けばあるだろうと俺は踏んでいる」
憶測だけでダンジョンの最奥まで突っ込む気なのか。相変わらずの猪突猛進っぷりだな、この男は。
前情報を集めて準備をしてからダンジョンに潜る兄貴とは大違いだよ。
「シルカの役割は錬金術の罠を無力化することだ。頼りにしてるからな」
「……あまり当てにするなよ。錬金術の罠ってそんなに単純なものじゃないんだからな」
錬金術の罠は同じ錬金術でなら必ず解除できるというものではないのだ。
中には設置されたら最後、発動させなければ無力化できないものもあるのである。
それを見分けることはできないので注意が必要だ。
「それよりも。魔物が出たらちゃんと守ってくれよ、僕のこと」
「何だ、灰燼の魔術師の台詞とは思えないな。お前、魔物を問答無用で燃やすのは得意だったよな?」
「僕は冒険者を引退してるって言ったはずだよな!?」
僕の大声に、ブランは笑いながら分かってると言うばかりだった。
本当に……大丈夫なのか、この男。
自分で自分の身を守らなければならないという杞憂が現実になりそうで恐ろしいよ。
「まあ、何とかなるさ。ちょっとした遠足みたいなもんだと思って気楽に行こうぜ」
「いざという時は幻獣たちに何とかしてもらいますからぁ、大丈夫ですよぉ」
「……何でそんな楽天的に物事を考えられるんだよ、あんたたちは」
二人の気楽な言葉を聞きながら、僕は不満をぶつけるように運ばれてきた料理にフォークをがつっと突き立てた。
やっぱり、よろず屋の店主はダンジョンになんて行くもんじゃない。二人を見ていてますますそう思った僕だった。
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