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第113話 それはきっと意味のあること
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無事に遺跡を脱出して村への道を歩きながら、僕たちは言葉を交わしていた。
僕の手中には、遺跡で手に入れた銀貨が握られている。
「錬金術というのは、敵に回ると厄介な代物だな」
銀貨を見つめながら、ジュードさんはそう言った。
確かに彼が言う通り、錬金術には魔術のように直接命を殺めるような力はないが、使いようによっては魔術以上の脅威を生む力がある。
今回の遺跡は、それを嫌と言うほどに体験させてくれる場所だった。
そんな厄介な仕掛けに守られていた、この銀貨。
スエルニャ洞穴でブランたちが手に入れた金貨と同じ形をしたこの貨幣は、果たしてどんな意味を持つ品なのだろうか。
唯一の宝と言っても過言ではないこれを本当にいらないのかとジュードさんに尋ねると、彼は首を振りながら答えた。
「俺は宝目当てであの遺跡に挑戦したわけじゃない。先に言った通り、それは今回の依頼の報酬としてあんたにやる」
「……あんたがそれでいいなら、有難く貰うよ」
僕は銀貨を鞄の中にしまった。
「あんたはどうするんだ? これから」
僕の問いかけに、彼は空を見上げて、
「この世には面白い謎を秘めた遺跡やダンジョンがごまんとある。また新しい謎解きを探して、旅を続けるよ」
──冒険者は金策が目的で遺跡やダンジョンに潜るものだとばかり思っていた。
実際、冒険者時代の僕がそうだった。
冒険者の中には彼のように金策を目的としないで危険に挑戦する人間もいるんだな。
本当に、世の中には色々な奴がいるね。
「俺の我儘に付き合ってくれて助かった。感謝する」
空を見上げたまま、ぶっきらぼうに彼は言った。
それを聞いて、僕はふっと微笑を浮かべたのだった。
僕をアメミヤまで送り届けたジュードさんは、あっさりとした別れの言葉を残して別の土地へと旅立っていった。
僕は店先の掃除をしながら、空を見上げていた。
思い浮かぶのは、今は何処とも知れない場所で冒険を続けている知人たちのこと。
彼らは今も、目の前の謎解きに心を躍らせて旅を続けているのだろうか?
『ねえ、シルカ』
店の中から僕を呼ぶ声。
入口のところでひなたぼっこをしながら、シルバーがのんびりとこちらを見つめていた。
『シルカは、外で色々なものが見られることを楽しいって思ってる?』
「僕?」
僕は箒を動かす手を止めて、少し考えた。
「そうだなぁ……ただの旅行なら楽しいだろうなって思うことはあるけど」
シルバーの方を見て、微笑みながら、続けた。
「色々なものが見られることは、悪いことじゃないよ。僕にとっては、だけど」
『それでも、シルカは此処にいるんだね』
尻尾をゆらりと揺らして、シルバーは目を閉じた。
『歩ける足があるのに歩かないのは、シルカにとって本当に大事なことなのかな』
歩けるのに歩かない僕。歩くことをやめた僕。
それを誰かに責められたわけじゃないけれど、それを良しと考えない人がいることは知っている。
分かってはいるけれど。
それでも僕は、此処にいることを選んだのだ。
それが今の僕の生き方だからって、他ならぬ僕が決めたことなのだから。
「……意味はあるんだよ。僕の今の生き方にも」
僕の呟きに、シルバーが答えることはなかった。
太陽を隠すように、大きな雲が流れていく。
雲の陰から漏れる太陽の光は、きらきらと光っていてまるで銀貨に反射した光のようだった。
僕の手中には、遺跡で手に入れた銀貨が握られている。
「錬金術というのは、敵に回ると厄介な代物だな」
銀貨を見つめながら、ジュードさんはそう言った。
確かに彼が言う通り、錬金術には魔術のように直接命を殺めるような力はないが、使いようによっては魔術以上の脅威を生む力がある。
今回の遺跡は、それを嫌と言うほどに体験させてくれる場所だった。
そんな厄介な仕掛けに守られていた、この銀貨。
スエルニャ洞穴でブランたちが手に入れた金貨と同じ形をしたこの貨幣は、果たしてどんな意味を持つ品なのだろうか。
唯一の宝と言っても過言ではないこれを本当にいらないのかとジュードさんに尋ねると、彼は首を振りながら答えた。
「俺は宝目当てであの遺跡に挑戦したわけじゃない。先に言った通り、それは今回の依頼の報酬としてあんたにやる」
「……あんたがそれでいいなら、有難く貰うよ」
僕は銀貨を鞄の中にしまった。
「あんたはどうするんだ? これから」
僕の問いかけに、彼は空を見上げて、
「この世には面白い謎を秘めた遺跡やダンジョンがごまんとある。また新しい謎解きを探して、旅を続けるよ」
──冒険者は金策が目的で遺跡やダンジョンに潜るものだとばかり思っていた。
実際、冒険者時代の僕がそうだった。
冒険者の中には彼のように金策を目的としないで危険に挑戦する人間もいるんだな。
本当に、世の中には色々な奴がいるね。
「俺の我儘に付き合ってくれて助かった。感謝する」
空を見上げたまま、ぶっきらぼうに彼は言った。
それを聞いて、僕はふっと微笑を浮かべたのだった。
僕をアメミヤまで送り届けたジュードさんは、あっさりとした別れの言葉を残して別の土地へと旅立っていった。
僕は店先の掃除をしながら、空を見上げていた。
思い浮かぶのは、今は何処とも知れない場所で冒険を続けている知人たちのこと。
彼らは今も、目の前の謎解きに心を躍らせて旅を続けているのだろうか?
『ねえ、シルカ』
店の中から僕を呼ぶ声。
入口のところでひなたぼっこをしながら、シルバーがのんびりとこちらを見つめていた。
『シルカは、外で色々なものが見られることを楽しいって思ってる?』
「僕?」
僕は箒を動かす手を止めて、少し考えた。
「そうだなぁ……ただの旅行なら楽しいだろうなって思うことはあるけど」
シルバーの方を見て、微笑みながら、続けた。
「色々なものが見られることは、悪いことじゃないよ。僕にとっては、だけど」
『それでも、シルカは此処にいるんだね』
尻尾をゆらりと揺らして、シルバーは目を閉じた。
『歩ける足があるのに歩かないのは、シルカにとって本当に大事なことなのかな』
歩けるのに歩かない僕。歩くことをやめた僕。
それを誰かに責められたわけじゃないけれど、それを良しと考えない人がいることは知っている。
分かってはいるけれど。
それでも僕は、此処にいることを選んだのだ。
それが今の僕の生き方だからって、他ならぬ僕が決めたことなのだから。
「……意味はあるんだよ。僕の今の生き方にも」
僕の呟きに、シルバーが答えることはなかった。
太陽を隠すように、大きな雲が流れていく。
雲の陰から漏れる太陽の光は、きらきらと光っていてまるで銀貨に反射した光のようだった。
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