【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか

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一度目のあやまち

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 妖精は美しいものを愛する

 一度目の時、フェミアはおろかにも、婚約者を愛した。


 フェミア・ローデグリーンはイライラと爪を噛んだ。
 ピンク色の爪は、肉が見えるぎりぎりまで、ギザギザに噛み切られている。

 なんで、マキシムはあんな女と一緒にいるのよっ。

 マキシム・シーガルト・サザンライト。
 このサザンライト王国の王太子であり、フェミアの婚約者だ。

 物心つく前に婚約した王太子のことを、フェミアはとても愛していた。

 キラキラ輝く金髪も、真夏の空のような青い瞳も、柔らかい響きで笑う声も。
 全てフェミアのお気に入りだった。


 私の婚約者がこんなにきれいな人間で、私は幸せ。

 マキシムのためにフェミアはたくさん、たくさん努力をした。

 妖精族は寿命が長いかわりに体の成長が遅い。大人の姿になるまで人間の6倍以上の時をかける。先祖の妖精の特色を強く持ったフェミアは、先に成長するマキシムを見て、悲しくなった。そして、禁断の方法を取ったのだ。

 全身の魔力を無理やり消費して、人間と同じ成長速度になるようにしたのだ。

 骨はきしみ、筋肉は震え、全身が絶え間ない苦痛に襲われた。
 無理やり成長させた体はいびつで、手足の長さはちぐはぐで、体はガリガリに痩せ細り、自慢の銀髪は細く縮れて、どんなに櫛でといても、すぐにもつれてしまった。

 何より、急激な成長に心が追い付かず、いつもイライラして、癇癪をおこし、苛立ちのまま、召し使いに暴力を振るうまでになった。

 特に苛立つのは、女性がマキシムに近づく時。
 学園に入学してから、マキシムに話しかけようと多くの女生徒が近づいてきた。
 制裁を加えてやりたくて、イライラして爪を噛んだ。

 図々しくもマキシムの隣の席に座った女。
 用があるふりをして話しかけた女。
 マキシムに汚い誘惑の視線を送った女。

 二度とマキシムの視界に入らない場所に送ってやりたい。

 でも、できなかった。

 フェミアは妖精の血をひくとはいえ、伯爵家は中級貴族に過ぎず、高位貴族には強く出れない。
 いずれ、マキシムと結婚して王太子妃になった際には仕返ししてやると、復讐ノートに記入するのみ。

 フェミアは魔法が使えなかった。
 魔力はあふれるほどある。だが、成長するために禁忌の魔法に手を出したため、使うことができなくなった。

 この魔法学園では魔力が全て。フェミアは落ちこぼれの醜い伯爵令嬢。

 とても惨めで、悔しくて情けなくて、イライラと爪を噛む。

 もしかして、マキシムも私をそんなふうに思っているのだろうか。


「ねえ、ちょっと大丈夫?あなた、ひどい顔色よ」

 誰もが私を避ける中、話しかけてきたのは、転校生のカヤノヒナコだった。


 ヒナコは珍しい黒髪に黒目のおぞましい姿をしていた。

 顔立ちは可愛らしいと思う。でも、その色彩は地獄の生物と同じ。
 東の国にはそのような色彩の者もいるらしいが、この国では忌避される色だった。

 ああ、嫌われもの同士一緒にいろということね。

「同室のよしみで寮内を案内するわ」

 まあ、いいわ。地獄なんて、私はこわくないもの。

 異世界から来たというヒナコは、この世界の事を何も知らなかった。

「もっと、ご飯食べたほうがいいよ。フェミちゃんは、ちょっと痩せすぎ。ええと。ダイエットじゃないよね。もしかして、拒食症かな。無理にたべたら吐いちゃう?」

 何も知らないヒナコは私を心配してくれる。

「ええー。伯爵令嬢なの? 困ったな。私、貴族のことよく分かんなくて。敬語とか使った方がいい?」

 なんにも知らないから、平民のくせに図々しい。

「ああ、もう、歴史無理。地理も無理ぃ。何で昔の王家の人は500年とか生きてるの? ありえなくない? それから上空島領地って何? 島が浮かんで移動してるの? 常識がおかしい~」

 一緒に過ごす日々で、ほんの少し、フェミアは爪を噛むことがなくなった。
 
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