3 / 11
一度目のあやまち
しおりを挟む
妖精は美しいものを愛する
一度目の時、フェミアはおろかにも、婚約者を愛した。
フェミア・ローデグリーンはイライラと爪を噛んだ。
ピンク色の爪は、肉が見えるぎりぎりまで、ギザギザに噛み切られている。
なんで、マキシムはあんな女と一緒にいるのよっ。
マキシム・シーガルト・サザンライト。
このサザンライト王国の王太子であり、フェミアの婚約者だ。
物心つく前に婚約した王太子のことを、フェミアはとても愛していた。
キラキラ輝く金髪も、真夏の空のような青い瞳も、柔らかい響きで笑う声も。
全てフェミアのお気に入りだった。
私の婚約者がこんなにきれいな人間で、私は幸せ。
マキシムのためにフェミアはたくさん、たくさん努力をした。
妖精族は寿命が長いかわりに体の成長が遅い。大人の姿になるまで人間の6倍以上の時をかける。先祖の妖精の特色を強く持ったフェミアは、先に成長するマキシムを見て、悲しくなった。そして、禁断の方法を取ったのだ。
全身の魔力を無理やり消費して、人間と同じ成長速度になるようにしたのだ。
骨はきしみ、筋肉は震え、全身が絶え間ない苦痛に襲われた。
無理やり成長させた体はいびつで、手足の長さはちぐはぐで、体はガリガリに痩せ細り、自慢の銀髪は細く縮れて、どんなに櫛でといても、すぐにもつれてしまった。
何より、急激な成長に心が追い付かず、いつもイライラして、癇癪をおこし、苛立ちのまま、召し使いに暴力を振るうまでになった。
特に苛立つのは、女性がマキシムに近づく時。
学園に入学してから、マキシムに話しかけようと多くの女生徒が近づいてきた。
制裁を加えてやりたくて、イライラして爪を噛んだ。
図々しくもマキシムの隣の席に座った女。
用があるふりをして話しかけた女。
マキシムに汚い誘惑の視線を送った女。
二度とマキシムの視界に入らない場所に送ってやりたい。
でも、できなかった。
フェミアは妖精の血をひくとはいえ、伯爵家は中級貴族に過ぎず、高位貴族には強く出れない。
いずれ、マキシムと結婚して王太子妃になった際には仕返ししてやると、復讐ノートに記入するのみ。
フェミアは魔法が使えなかった。
魔力はあふれるほどある。だが、成長するために禁忌の魔法に手を出したため、使うことができなくなった。
この魔法学園では魔力が全て。フェミアは落ちこぼれの醜い伯爵令嬢。
とても惨めで、悔しくて情けなくて、イライラと爪を噛む。
もしかして、マキシムも私をそんなふうに思っているのだろうか。
「ねえ、ちょっと大丈夫?あなた、ひどい顔色よ」
誰もが私を避ける中、話しかけてきたのは、転校生のカヤノヒナコだった。
ヒナコは珍しい黒髪に黒目のおぞましい姿をしていた。
顔立ちは可愛らしいと思う。でも、その色彩は地獄の生物と同じ。
東の国にはそのような色彩の者もいるらしいが、この国では忌避される色だった。
ああ、嫌われもの同士一緒にいろということね。
「同室のよしみで寮内を案内するわ」
まあ、いいわ。地獄なんて、私はこわくないもの。
異世界から来たというヒナコは、この世界の事を何も知らなかった。
「もっと、ご飯食べたほうがいいよ。フェミちゃんは、ちょっと痩せすぎ。ええと。ダイエットじゃないよね。もしかして、拒食症かな。無理にたべたら吐いちゃう?」
何も知らないヒナコは私を心配してくれる。
「ええー。伯爵令嬢なの? 困ったな。私、貴族のことよく分かんなくて。敬語とか使った方がいい?」
なんにも知らないから、平民のくせに図々しい。
「ああ、もう、歴史無理。地理も無理ぃ。何で昔の王家の人は500年とか生きてるの? ありえなくない? それから上空島領地って何? 島が浮かんで移動してるの? 常識がおかしい~」
一緒に過ごす日々で、ほんの少し、フェミアは爪を噛むことがなくなった。
一度目の時、フェミアはおろかにも、婚約者を愛した。
フェミア・ローデグリーンはイライラと爪を噛んだ。
ピンク色の爪は、肉が見えるぎりぎりまで、ギザギザに噛み切られている。
なんで、マキシムはあんな女と一緒にいるのよっ。
マキシム・シーガルト・サザンライト。
このサザンライト王国の王太子であり、フェミアの婚約者だ。
物心つく前に婚約した王太子のことを、フェミアはとても愛していた。
キラキラ輝く金髪も、真夏の空のような青い瞳も、柔らかい響きで笑う声も。
全てフェミアのお気に入りだった。
私の婚約者がこんなにきれいな人間で、私は幸せ。
マキシムのためにフェミアはたくさん、たくさん努力をした。
妖精族は寿命が長いかわりに体の成長が遅い。大人の姿になるまで人間の6倍以上の時をかける。先祖の妖精の特色を強く持ったフェミアは、先に成長するマキシムを見て、悲しくなった。そして、禁断の方法を取ったのだ。
全身の魔力を無理やり消費して、人間と同じ成長速度になるようにしたのだ。
骨はきしみ、筋肉は震え、全身が絶え間ない苦痛に襲われた。
無理やり成長させた体はいびつで、手足の長さはちぐはぐで、体はガリガリに痩せ細り、自慢の銀髪は細く縮れて、どんなに櫛でといても、すぐにもつれてしまった。
何より、急激な成長に心が追い付かず、いつもイライラして、癇癪をおこし、苛立ちのまま、召し使いに暴力を振るうまでになった。
特に苛立つのは、女性がマキシムに近づく時。
学園に入学してから、マキシムに話しかけようと多くの女生徒が近づいてきた。
制裁を加えてやりたくて、イライラして爪を噛んだ。
図々しくもマキシムの隣の席に座った女。
用があるふりをして話しかけた女。
マキシムに汚い誘惑の視線を送った女。
二度とマキシムの視界に入らない場所に送ってやりたい。
でも、できなかった。
フェミアは妖精の血をひくとはいえ、伯爵家は中級貴族に過ぎず、高位貴族には強く出れない。
いずれ、マキシムと結婚して王太子妃になった際には仕返ししてやると、復讐ノートに記入するのみ。
フェミアは魔法が使えなかった。
魔力はあふれるほどある。だが、成長するために禁忌の魔法に手を出したため、使うことができなくなった。
この魔法学園では魔力が全て。フェミアは落ちこぼれの醜い伯爵令嬢。
とても惨めで、悔しくて情けなくて、イライラと爪を噛む。
もしかして、マキシムも私をそんなふうに思っているのだろうか。
「ねえ、ちょっと大丈夫?あなた、ひどい顔色よ」
誰もが私を避ける中、話しかけてきたのは、転校生のカヤノヒナコだった。
ヒナコは珍しい黒髪に黒目のおぞましい姿をしていた。
顔立ちは可愛らしいと思う。でも、その色彩は地獄の生物と同じ。
東の国にはそのような色彩の者もいるらしいが、この国では忌避される色だった。
ああ、嫌われもの同士一緒にいろということね。
「同室のよしみで寮内を案内するわ」
まあ、いいわ。地獄なんて、私はこわくないもの。
異世界から来たというヒナコは、この世界の事を何も知らなかった。
「もっと、ご飯食べたほうがいいよ。フェミちゃんは、ちょっと痩せすぎ。ええと。ダイエットじゃないよね。もしかして、拒食症かな。無理にたべたら吐いちゃう?」
何も知らないヒナコは私を心配してくれる。
「ええー。伯爵令嬢なの? 困ったな。私、貴族のことよく分かんなくて。敬語とか使った方がいい?」
なんにも知らないから、平民のくせに図々しい。
「ああ、もう、歴史無理。地理も無理ぃ。何で昔の王家の人は500年とか生きてるの? ありえなくない? それから上空島領地って何? 島が浮かんで移動してるの? 常識がおかしい~」
一緒に過ごす日々で、ほんの少し、フェミアは爪を噛むことがなくなった。
1,205
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる