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28 失望
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神殿に帰ってからは、ずっとベッドの中で過ごした。メアリーが心配そうに私に話しかけたけれど、それすらも、うっとうしく感じて、返事もしなかった。
ただ、もってきた食事を無理やり口に入れて、眠るだけ。そんな日が三日続くと、聖水を必要とする神殿長に命じられたメアリーが聖なる泉の水の入った小瓶を部屋に持ってきた。しぶしぶ手に取って握りしめた。
でも、ビンは光らずに、聖水ができることはなかった。
魔力が尽きてしまったのか?
驚いたメアリーが神殿長に報告に行った。
お見舞いに来た神殿長は、私の体を気遣うよりも聖水のことばかり心配していた。どうやっても作れないと言うと失望した表情で部屋を出て行った。
何日たっても私の魔力が戻らず、聖水が作れない。
神殿長は部屋に来なくなった。だから、もう、神殿を出よう。聖水すら作れなくなった私には何の価値もないでしょう?
私は侯爵家に戻ることを考えた。
父母に会うのは嫌だった。
でも、神殿に残って、市街地に出た魔物を退治した王子とその横で活躍したオディットの話を聞くのは、もっと嫌だった。
神殿を出る時には、メアリーには田舎に帰ってもらうことにした。幼馴染との婚約が整ったと言っていたもの。こんな私についている必要はないわ。最後に一つだけお願いをして、侯爵家に帰る時に別れた。涙を浮かべて別れの言葉を言うメアリーに、私も一緒になって泣いた。彼女の明るさと率直さに今まで何度も助けられていた。
久しぶりに帰ったデュボア侯爵家は、あまりいい状態じゃなかった。父は私を優しく気遣っていたけれど、イライラと使用人に当たり散らしていた。ゴシップ誌に私のことが悪く書かれているらしい。メイドの立ち話を聞いたら、私が治療院で使った聖水の代金を神殿騎士が取り立てに来たらしい。平民は払えずに借金奴隷になったとか。私は守銭奴聖女と呼ばれ、評判が下落していた。代わりに、無料で治療魔法を使って癒すオディットの評判が上がっている。
母が私を慰めに付きまとうかと思ったけれど、母も部屋にこもりきりで食事にも来ない。セドリックの声が聞こえないように、離れで生活しているそうだ。
私が戻って来た時も、警戒するかのように遠くから私を見るだけだった。
私は自室に閉じこもって、リリアーヌの日記の続きを書いた。
目覚めてから、今までのことを。毎日の気持ちの変化を。
そうして過ごしているうちに、婚約披露パーティの日が来た。
侍女に豪華なドレスを着せられて、久しぶりに部屋の外へ出た。
大丈夫。最後に会った時に、アルフ様は私を愛していると言ってくれた。私は彼の婚約者よ。王子妃になるの。魔力が戻らなかったら大聖女にはなれないけれど、魔力譲渡しなくてすむからこれでよかったのよ。
私はアルフ様と一緒になって、幸せになるの。
アルフ様は迎えに来てくれなかった。でも、王宮の馬車を送ってくれたわ。だから、アルフ様のくれた青いドレスを身にまとって、私は一人で王宮へ行くことにした。父と母には後から来るように伝えて。
まさかそこで、断罪が行われるなんて、知らずに。
断罪は王宮の控室でアルフ様とオディットによって行われた。
妹の魔力譲渡と魔力核の移植手術の罪で私は裁かれた。
元執事の日記が証拠らしい。
もう、何も考えたくない。
疲れてしまった。
修道院に入り、謝罪しながら一生を過ごすのならば、侯爵家を罪に問わないというアルフ様の提案は断った。
なぜ、私一人が犠牲にならないといけないの?
もう、全てを明らかにしてしまおう。これ以上、秘密を抱えてリリアーヌとして生きるのは疲れた。
私は裁判を望んだ。
ただ、もってきた食事を無理やり口に入れて、眠るだけ。そんな日が三日続くと、聖水を必要とする神殿長に命じられたメアリーが聖なる泉の水の入った小瓶を部屋に持ってきた。しぶしぶ手に取って握りしめた。
でも、ビンは光らずに、聖水ができることはなかった。
魔力が尽きてしまったのか?
驚いたメアリーが神殿長に報告に行った。
お見舞いに来た神殿長は、私の体を気遣うよりも聖水のことばかり心配していた。どうやっても作れないと言うと失望した表情で部屋を出て行った。
何日たっても私の魔力が戻らず、聖水が作れない。
神殿長は部屋に来なくなった。だから、もう、神殿を出よう。聖水すら作れなくなった私には何の価値もないでしょう?
私は侯爵家に戻ることを考えた。
父母に会うのは嫌だった。
でも、神殿に残って、市街地に出た魔物を退治した王子とその横で活躍したオディットの話を聞くのは、もっと嫌だった。
神殿を出る時には、メアリーには田舎に帰ってもらうことにした。幼馴染との婚約が整ったと言っていたもの。こんな私についている必要はないわ。最後に一つだけお願いをして、侯爵家に帰る時に別れた。涙を浮かべて別れの言葉を言うメアリーに、私も一緒になって泣いた。彼女の明るさと率直さに今まで何度も助けられていた。
久しぶりに帰ったデュボア侯爵家は、あまりいい状態じゃなかった。父は私を優しく気遣っていたけれど、イライラと使用人に当たり散らしていた。ゴシップ誌に私のことが悪く書かれているらしい。メイドの立ち話を聞いたら、私が治療院で使った聖水の代金を神殿騎士が取り立てに来たらしい。平民は払えずに借金奴隷になったとか。私は守銭奴聖女と呼ばれ、評判が下落していた。代わりに、無料で治療魔法を使って癒すオディットの評判が上がっている。
母が私を慰めに付きまとうかと思ったけれど、母も部屋にこもりきりで食事にも来ない。セドリックの声が聞こえないように、離れで生活しているそうだ。
私が戻って来た時も、警戒するかのように遠くから私を見るだけだった。
私は自室に閉じこもって、リリアーヌの日記の続きを書いた。
目覚めてから、今までのことを。毎日の気持ちの変化を。
そうして過ごしているうちに、婚約披露パーティの日が来た。
侍女に豪華なドレスを着せられて、久しぶりに部屋の外へ出た。
大丈夫。最後に会った時に、アルフ様は私を愛していると言ってくれた。私は彼の婚約者よ。王子妃になるの。魔力が戻らなかったら大聖女にはなれないけれど、魔力譲渡しなくてすむからこれでよかったのよ。
私はアルフ様と一緒になって、幸せになるの。
アルフ様は迎えに来てくれなかった。でも、王宮の馬車を送ってくれたわ。だから、アルフ様のくれた青いドレスを身にまとって、私は一人で王宮へ行くことにした。父と母には後から来るように伝えて。
まさかそこで、断罪が行われるなんて、知らずに。
断罪は王宮の控室でアルフ様とオディットによって行われた。
妹の魔力譲渡と魔力核の移植手術の罪で私は裁かれた。
元執事の日記が証拠らしい。
もう、何も考えたくない。
疲れてしまった。
修道院に入り、謝罪しながら一生を過ごすのならば、侯爵家を罪に問わないというアルフ様の提案は断った。
なぜ、私一人が犠牲にならないといけないの?
もう、全てを明らかにしてしまおう。これ以上、秘密を抱えてリリアーヌとして生きるのは疲れた。
私は裁判を望んだ。
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