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第2部 魔法学校編
57 最上階へ
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気持ち悪い。本当に気持ち悪い。異母弟の妾になるぐらいだったら、500年間精霊に監禁された方がまだマシかも……。
私とオスカー様は翌日、進級テストを受けて、2年生の授業を全てパスする権利を得た。で、また、辺境へ。
いよいよ、100階。ここより先は誰も到達していない。オスカー様は入口までついてきてくれた。
「レティ。行っておいで」
そして、ぎゅっと抱きしめられた。長い時間、オスカー様の体温を感じた後、離れ際に私の額にオスカー様の唇が触れた。
「やあ、やっときたね」
扉を開けるとそこにいたのは、光の精霊王ルシルだった。
「どうして、ルシルが? 師匠モンスターは?」
「ここでは僕が師匠だよ。彼らには聖の魔力は扱えないからね。さあ、始めようか」
キラキラした笑顔で、ルシルは私に小さな箱を差し出した。
「この結界を解いて」
何の変哲もない木の箱。でも、私はそれを見て驚いた。
箱の上には、日本語の文字が刻まれていたから。
「ネエサマヘ」とカタカナで彫られていた。
「勇者から君への贈り物だ」
「どうして……ネエサマ?」
姉さま。私をそう呼んだリョウ君の声が聞こえてきそうだった。
なぜ、勇者はその言葉を刻んだの? これは本当に私へ?
なぜか分からなかった。
箱には結界が薄く膜を作っていた。聖の魔力だけが、この結界を解くことができる。
私は杖を取り出して、聖の魔力を込める。不安と期待の入り混じった感情で魔力が乱れた。やがて、杖は銀色に輝き、そして、箱の結界がすっと解けた。かちりという音がして、蓋が開いた。中に入っているのは数枚の紙だった。
「姉さまへ リョウより」
一枚目に書かれた言葉を読んで、涙があふれた。
これは勇者リョウが書いた言葉なの? でも、これは、まるで……。
涙で見えにくい視界をぬぐって、先を読み進める。
「僕は元気にしています。聖女リシアと一緒に、魔王になってしまった精霊王を助けたり、光の精霊王の誕生に立ち会ったりと、夢にも思わなかった出来事を経験しました。
あの日、僕の誕生日に、黒炎が僕を過去に運んだ……」
ああ、リョウ君だ。
ずっと探していたリョウ君がここにいた。
ずっと、過去で生きていたんだ。
私は手紙を読み終わると、声を出して泣いた。
リョウ君が勇者だった。
なぜそんなことになってるの?
考えてもおかしなことだらけだ。
過去の人物に、未来の人物が成り代わる?
そんな馬鹿な事あるわけないのに。
でも、この手紙を書いたのはリョウ君だ。それだけは絶対に真実だ。
「時空の歪みができたんだ。君に話したかったけど、制約があるから、言えなかった。先の精霊王は、時間と次元を操る能力を持っていたから。魔石を通して、リョウは過去へ呼び寄せられた」
隣で精霊王が説明してくれる。それを聞きながら、私はリョウ君を想って泣いた。
手紙には、勇者になったリョウ君が、転生者の聖女リシアに世話されながら成長し、多少の困難はありながらも、楽しい充実した人生を過ごしていると書いてあった。
そして、ルシルを頼むことを謝っていた。
「姉さまに頼ることを許してほしい。伴侶のいない精霊王は魔王になり、魔物を増強してしまう。精霊王の伴侶になれるのは、異世界の魂を持つ者だけだそうだ。リシアは、王子と結婚することが決まっていて、伴侶になれない。でも、僕は未来で、彼が姉さまと出会うのを見た。姉さまが彼とともに生きることを、強制はできない。だから、遺産を残す。カザンのダンジョンに僕の魔道具を隠している。必ず受け取ってほしい」
リョウ君の手紙はそれで終わりだった。
勇者の遺産は、リョウ君から私に宛てたものだったのだ。
私とオスカー様は翌日、進級テストを受けて、2年生の授業を全てパスする権利を得た。で、また、辺境へ。
いよいよ、100階。ここより先は誰も到達していない。オスカー様は入口までついてきてくれた。
「レティ。行っておいで」
そして、ぎゅっと抱きしめられた。長い時間、オスカー様の体温を感じた後、離れ際に私の額にオスカー様の唇が触れた。
「やあ、やっときたね」
扉を開けるとそこにいたのは、光の精霊王ルシルだった。
「どうして、ルシルが? 師匠モンスターは?」
「ここでは僕が師匠だよ。彼らには聖の魔力は扱えないからね。さあ、始めようか」
キラキラした笑顔で、ルシルは私に小さな箱を差し出した。
「この結界を解いて」
何の変哲もない木の箱。でも、私はそれを見て驚いた。
箱の上には、日本語の文字が刻まれていたから。
「ネエサマヘ」とカタカナで彫られていた。
「勇者から君への贈り物だ」
「どうして……ネエサマ?」
姉さま。私をそう呼んだリョウ君の声が聞こえてきそうだった。
なぜ、勇者はその言葉を刻んだの? これは本当に私へ?
なぜか分からなかった。
箱には結界が薄く膜を作っていた。聖の魔力だけが、この結界を解くことができる。
私は杖を取り出して、聖の魔力を込める。不安と期待の入り混じった感情で魔力が乱れた。やがて、杖は銀色に輝き、そして、箱の結界がすっと解けた。かちりという音がして、蓋が開いた。中に入っているのは数枚の紙だった。
「姉さまへ リョウより」
一枚目に書かれた言葉を読んで、涙があふれた。
これは勇者リョウが書いた言葉なの? でも、これは、まるで……。
涙で見えにくい視界をぬぐって、先を読み進める。
「僕は元気にしています。聖女リシアと一緒に、魔王になってしまった精霊王を助けたり、光の精霊王の誕生に立ち会ったりと、夢にも思わなかった出来事を経験しました。
あの日、僕の誕生日に、黒炎が僕を過去に運んだ……」
ああ、リョウ君だ。
ずっと探していたリョウ君がここにいた。
ずっと、過去で生きていたんだ。
私は手紙を読み終わると、声を出して泣いた。
リョウ君が勇者だった。
なぜそんなことになってるの?
考えてもおかしなことだらけだ。
過去の人物に、未来の人物が成り代わる?
そんな馬鹿な事あるわけないのに。
でも、この手紙を書いたのはリョウ君だ。それだけは絶対に真実だ。
「時空の歪みができたんだ。君に話したかったけど、制約があるから、言えなかった。先の精霊王は、時間と次元を操る能力を持っていたから。魔石を通して、リョウは過去へ呼び寄せられた」
隣で精霊王が説明してくれる。それを聞きながら、私はリョウ君を想って泣いた。
手紙には、勇者になったリョウ君が、転生者の聖女リシアに世話されながら成長し、多少の困難はありながらも、楽しい充実した人生を過ごしていると書いてあった。
そして、ルシルを頼むことを謝っていた。
「姉さまに頼ることを許してほしい。伴侶のいない精霊王は魔王になり、魔物を増強してしまう。精霊王の伴侶になれるのは、異世界の魂を持つ者だけだそうだ。リシアは、王子と結婚することが決まっていて、伴侶になれない。でも、僕は未来で、彼が姉さまと出会うのを見た。姉さまが彼とともに生きることを、強制はできない。だから、遺産を残す。カザンのダンジョンに僕の魔道具を隠している。必ず受け取ってほしい」
リョウ君の手紙はそれで終わりだった。
勇者の遺産は、リョウ君から私に宛てたものだったのだ。
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