6月の花嫁

かりんとう

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悲しみは偽りの悲しさ

エピソード1

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2015年。6月15日。
中学三年生のときだった。
私には、綺麗で優しくて、お金持ちで、頭のいいお隣のお姉さんがいた。
お姉さんの名前は、本田マリン。年齢は、25歳で本日結婚する。
私の家も、それなりの身分のある家で、世間から見たらお嬢様と呼ばれる地位。
私の名前は、西川セナ。大財閥西川財閥の一人娘。
マリンちゃんは、代々政治家の家系で、マリンちゃんの祖父は、総理大臣を務めたこともあるほどの人だ。
親同士の仲も良く、小さい頃は同じ席で何度も食事をしてきた。
マリンちゃんの結婚は政略結婚だそうだ。
たしか、坂本樹さん、だったかな。
京都大学医学部付属病院の医院長の息子さんで、そこに嫁ぐらしい。
マリンちゃんの家は、お兄さんである本田ライトさんが継ぐそうだ。
式前に、マリンちゃんの控え室を訪ねた。
「あ、セナちゃん!来てくれてありがとう!純白のドレス素敵でしょ?これオーダーメイドなの。」
純白のドレスに身を包んだマリンちゃんは、すごく綺麗で美しかった。
「すごく綺麗です!!私もいつか着てみたいなぁ。」
「うふふ、セナちゃんは可愛いからドレスがよく似合うと思うわ。今日のブーケトス、セナちゃんに向かって投げるから、頑張ってね」
「死ぬ気で取りに行きます」
「じゃあ、そろそろだから、また後でね」
そう言われて、控え室をあとにした。

司会者がブーケトスの宣言をした。
「では、最後のイベント!!ブーケトスです!女性の皆様は頑張ってキャッチしてくださいね!!ただ、気合が入りすぎて、後ろの噴水に落ちないでくださいね!!結構深いですから」
おちゃらけながら、そう言うと周囲はどっと笑いだした。
「では、気を取り直して!!スタート!!」
マリンちゃんが私に向かって微笑む。相変わらず可愛い笑顔だ。あんな笑顔向けられたら、女の私もドキッとしちゃうな。
そして、ついに投げられる。
後、あとすこし。3センチくらいのところで、何とかキャッチしたが、そのまま噴水に落ちてしまう。
ドボン
と大きな音が響いた。
セナは、泳げないからそのまま沈んでゆく。
バッシャン
何かが、噴水に落ちた音がする。
うっすらと見えたのは、同じ年くらいの男の子の顔で、こちらに手を伸ばしている。
噴水近くにあった紫陽花に水がかかって、綺麗なんだろうなと思いながら彼の手に一瞬触れて意識を失った。


少年サイド
ブーケトスが行われた。俺と同じ年くらいの女の子がキャッチしたが、足を滑らせて噴水に落ちた。
ドボン
結構大きい音が響く。
落ちた衝撃で噴水の近くにあった紫陽花に水がかかった。
雫がこぼれて、宝石のように下の葉へと伝う水。
なんて、綺麗なんだろうと思った。
そして、今落ちた女の子は、そんな紫陽花のような淡い水色のドレスを着ていた。
水の中の色とよくあっていて、綺麗だと思った。
一目惚れした
偽りでも、美しい彼女を助けるために水の中に飛び込む。
手を伸ばすとうっすらと目を開けた彼女。
儚い、そう思う。
手に触れた瞬間彼女は意識を失った。
俺の腕の中にいる彼女の唇にキスをした。
俺にだって彼女はいるけど、なんだろうな。
君は、別なんだ。そう、別なんだ。




セナサイド
目を開けると白い天井が目に入った。
たしか、マリンちゃんの結婚式に参加していて、ブーケトスの時、後ろの噴水に落ちたのかな?
首を右に少し傾けると、白い壁と扉が目に入った。ここは、ベッドで、私は寝ている。そして、どこを見ても真っ白。おまけに、ベッドには、コール用のボタンがついている。
ここは、病院だ。
あの時、落ちた衝撃で気を失って、病院に運ばれたらしい。
その時、ガラガラと扉が開いた。そして姿を現したのはマリンちゃんだった。
「セナちゃんもう大丈夫なの?あのあと意識失っちゃったから、一応救急車呼んで、病院に運んだのよ?あ、これケーキね。お腹すいてると思って買ってきたの。ヨーグルトとか、ゼリーもあるよ。」
そう言って、病院のテーブルにケーキやらヨーグルトやらを並べていく。
いちごのタルト、チョコレートケーキ、ガトーショコラ、シュークリーム、エクレア、ぶどうのゼリー、桃のヨーグルト、レアチーズケーキと、たくさん並べていく。
「どれもすごく美味しそうだね!こっちの箱には何が入ってるの?」
そう聞くと、もうひとつの箱を開ける。
中には、新作のミルクティー味のプリン、紅茶風味のシュークリーム、いちごのクリームブリュレ、りんごのタルト。そして、フルーツケーキが入っていた。確か、このフルーツケーキは、南国風だから、新作のはず。
もう片方の箱には、新作のスイーツが入っていたのだ。
「じゃーん!全部新作のスイーツだよ!!セナちゃん甘いもの好きだから、たくさん買いすぎちゃった。いっぱい食べてね!」
「ありがとう」
私ってほんとに幸せだよね、キレイなマリンちゃんにこんなにも優遇されてるんだから。
「そう言えば、あなたが落ちた時、あなたと同じくらいの年齢の男の子があなたを助けてくれたのよ?すっごく絵になる場面だったなぁ。可愛くて綺麗なセナちゃんと私の夫の弟さん。」
今知ったが、彼は、マリンちゃんの旦那さんの弟が彼だとは、なにかの運命でもあるかのような展開だなぁ。
「そうだったんだ。水の中で目が合った時、ドキドキしちゃったりしてた」
こんなこと不謹慎だけど、ほんとにドキドキはしてたからね。
「うふふ、セナちゃんは、あの男のことが気になるのね」
「ち、違うよ。ただ、かっこいいとは思ったけど、あとお礼もしたいし」
お礼というのは建前で、会いたいという思いが隠れていることに気づかない私がいた。
「彼の名前はね、坂本斗真くん。頭が良くて、優しい人ですって。」
「そうなんだぁ」
「そうそう、退院の手続きをしたら、検査をすれば今日にでも帰れるそうだから、私少し受付に行ってくるわね。」
そう言い残して、マリンちゃんは病室をあとにした。


「会いたい、彼氏がいるのにそう思う私を神様は許してくれますか?」








2016年。6月15日。
マリンちゃんの結婚式から1年がたった。私は、中学三年生の時にできた彼氏に先に登校するとメールを打って、部屋から出た。
誰もいない家に向かって行ってきますと言ってローファーを履く。
戸締りをきちんとして、学校に向かった。いつもとは違う道で登校する。駅前には人が少なかった。そして、1人の男子生徒が不満そうな顔をしながらこう呟いた。
「どうして、断るんだ。」
正直いって巻き込まれたくはないから、その男子生徒の隣を急いで通過する。勢いをつけてね。
少し早歩きをしながら学校に向かった。そして、理由もなく遠回りをして学校に向かったため、いつもより到着が少し遅くなってしまったのは、気のせいだ。
学校に着き、教室に入る。
「おはようセナちゃん!!」
「おはよう、佐々木さん。なんのお話をしていたの?」
佐々木は興奮気味に話し始めた。
「実はね、駅前の交差点で、ウチの生徒がはねられて、即死らしいのよ。私の友達によると、はねたトラックの運転手は、押されたのを見たって言うし、怖いよねぇって話してたんだあ!!」
もう片方の女子も言った。
「流石に虚言だと思うけど、ほんとなら殺人だよね?帰り道1人で帰れないなぁ」
え、一体誰が?その話がほんとなら、近いうちに臨時集会が開かれそうね。そこで誰がどうなったのか明らかになるはずだけど、怖いな。
その時明るい声が教室のの扉付近からした。
「おっはよ!あ、今日感漢字の小テストじゃんか!!なんもやってねーわ、セナ見して!ノート」
佐々木と片割れの女の子も慌て始めた。
「あ、わたしもすっかりわすれてたわ!」
「私も!!セナちゃん話し込んじゃってごめんね!勉強するからまたね!」
「あ、私も行くわ!またね!」
「うん、バイバイ。それで、凛は何もやってないの?」
この明るい声で挨拶してきたのは、大谷凜。中学の時は、陸上短距離で全国1位。今は、バドミントン部の期待のエースとして活躍してる、部活少女。
短く切られた髪に、少し童顔っぽい顔が可愛いと思う。そして、高校の私の友達。
「実はさ、昨日テストあること思い出したんだけど、寝ちった」
「おいおい、寝るなよなぁ。ほら、私のノート見せてあげるから、何とかしなよ。これ再試あるからね不合格は」
「いやん、死んじゃう。」
またまた、明るい声がした。
「おはよう!あれ、今日は一段と人が来てないね。」
彼女は、加島美月。人気モデルをしていて、実は有名なケータイ小説家。
某小説サイトや、夢小説アプリなんかで活躍してて、某小説サイトでの活躍は、作品が書籍化になったりするほどだ。
小説家のことは伏せられているので、仲のいい私とか凛しか知らない秘密。
綺麗なブロンドの髪が良く似合う女の子
「おはー!美月小テストの勉強した?私はしてないから、セナのノート見せてもらってんの」
「私はやってあるけど、ものすごく凛の将来が不安になったよ」
「私も、同じ気持ちよ。」
それから少しずつ人が集まって、教室内がざわつき出した。そして、朝聞いたあの話をみんなが話している。
「そういやさ、みんな話してる事故ってなんの話?」
「私も、全く知らないんだけど。」
「佐々木さんから聞いたんだけど、ウチの生徒が車にはねられたんだって。なんか、即死らしいけど、運転手の人が誰かが生徒を車道に突き飛ばしたって、言ってるらしいのよ。」
そんな事件にわかには信じられないが、起きているのだから信じるしかないな。
「へぇ、やばいじゃん。誰かが生徒を車道に突き飛ばしたって、殺人になるよね?怖くてひとりで歩けない」
「私は、今日車で帰ろう。電車とか使いたくないなぁ。」
2人も不安そうな顔をした。
もちろん、私も不安だけど、こんな時だからこそ、明るくいないとだよね。
ガラガラ
「おーい、席につけ。真面目な話をするからな。」
隣の席の男子がポツリとつぶやく。
「あれ、本条いなくね?休みか?」
その発言で、担任の小川先生が顔をしかめた。
それだけで、みんな理解したらしい。
亡くなったのは、はねられて死んだのは、本条陸斗だって。
本条くんは、私の彼氏。中学三年生の時にできた彼氏。
「え、嘘。それって、え、なんで?」
私が戸惑いの声を上げたことによって、教室内はしんと静まり返った。
凛と美月が不安そうな視線を送ってくる。
死んだのは、私の彼氏だった。
頭が良くて、優しい。気遣いもできて、クラスの人気者な完璧なワタシの彼氏。
誰がなんで、殺したの?トラックの運転手?それとも、誰かが車道に突き飛ばしたの?
許せない、許せない。
悲しい、悲しいのに、どうして?涙はは流れないよ。
それどころか、去年のちょうど一年前の記憶がフラッシュバックしてくる。
坂本くん、私はね。無意識のうちに君に会いたがっていたの。
理由はあるけど無い。
あってないようなものだから。

坂本くん、あなたに会えたら、なにか変わってたのかな?
そして、ホームルームが終わった。
気づいたら、教室には私と凛と美月だけが残っていた。
「泣いてもいいよ、てか泣けよ!!お前の彼氏が死んだんだろ?我慢しなくていいから!!」
なぜか、凛は涙を流していた。
友達が悲しいときに一緒に泣いてくれる人って、ほんとにいたんだなぁと思いながら、凛に抱きつく。
声を抑えてただ涙を流す。
「凛も泣かないの!!悲しいのは、セナなのに。」
そう言いながらもうっすらと涙を浮かべている美月。
「もう、み、美月も、凛も、なか、ない、で……」
2人は、私の体を抱きしめてくれる。
たくさん泣いた後、私たちは気づいた。
「なあ、もう体育始まってるよな?これ」
「いくらセナの彼氏が亡くなったらからって言っても、特別扱いはされないよね。」
「う、うう。一応私優等生なのに。」
凛がツッコミをかます。
「いやいや、気にするところ間違ってるだろ」
美月も同調する。
「それな!気にしたら負けだって」
「とりあえずさ、ウチのじいちゃん理事長なんだぜ?その力を使ってさ、今日は、セナ帰ったらどうだ?あんまり追い詰めんなよ、自分を。悪いのは、殺したドライバーか、トラックの運転手なんだからさ。」
美月も言い出す。
「ならさ、とりあえず職員室に向かわない?理事長室って、校長室の隣でしょ?ならまずは、職員室に入らないといけないしさ。」
「なんか、二人ともありがとう。ちょっと落ち着いたわ。」
なんでここまでしてくれるのか疑問に思う。でも聞いたら行けない。帰ってくる答えを予想するなら、友達だから。
今はその優しさに縋りたい。
だから、好意に甘えて、職員室を目指した。




職員室に着くと、凛が理事長似合うために入っていった。
美月は、職員室の隣で、メイクを直すからといなくなってしまった。

職員玄関に置かれた花瓶には、綺麗な紫陽花が生けられていた。
職員玄関の扉が開けられた。
そこに立っていたのは、せなと同じくらいの年の青年。
黒く短い髪は清潔感があり、整った顔立ちをしていた彼は、私にこう言った。


「君は、ちょうど一年前の結婚式にいた、よね?たしか、西川セナさん。」


そう言ったとき、私は彼に抱きついていた。
彼は、少し戸惑いはしたが、抱き締め返してくれて、そのまま上を向かされ、キスをした。
「んぅ」
甘い吐息がこぼれる。
彼氏、本条くんとはした事の無いキスを私は、よく知りもしない男とした。
「ずっと、君に会いたかった。彼女がいたけど、君のことがきになってさ、それでね。たまたま転校したこの学校にいるなんて、運命みたいだな。」
違う。
神様は意地悪なんだよ。
彼氏が死んでしまった日に、会いたかった人と合わせて、癒されてるなんて、良くないとわかっていても、どうしても縋ってしまう。
あなたのことを好きになれと言わんばかりに、神様は意地悪なんだ。
キスをまた落とされる。
彼の背後の紫陽花を綺麗だと改めて思った。




斗真side
どうして?
君がいるんだろう?
そして、なぜ今抱きつかれているんだ?
よく知りもしない相手を抱き締め返して、上を向かせキスをした。
高校の職員室の前で。
彼女に目元は赤く腫れていて、見ているとなぜだか苦しくなる。
キスをするような間柄じゃないのに、キスをした。
ああ、ゾクゾクするなぁ。誰かに見られたら大変なことになるな。
でも、それでも君に何かを求めてしまうオレを、許してくれるのかな?君は。
あの時も十分綺麗だった君は、一段と成長したんだね。
1年ってそれほど長い時間だったことに気づいた。
「オレは、お前のことが好きなわけじゃないんだ。だから、恋じゃない。」
俺の腕にだかれながら彼女は言った。
「私もね、あなたのことが好きなわけじゃないの。ただ、あなたがいたから、抱きしめただけ。」
そんなこと言われたら、これがいけないことだと思えなくなる。
儚い君は消えそうな声でそう言った。
といっても、話したのはこれが初めて。出会ったのは、今日を覗いた去年の今日だけ。
「ああ、そうだな。これは恋じゃない。ただの感情のない行為だよ。」
そんなことないと言いたい、全部を訂正したい。
君に会いたいと思った時点で、オレは、君に感情を抱いてた。
好きってわけじゃない、恋してるわけじゃないけど、会いたいという興味と好意があったんだ。
「好きじゃないど、私あなたにあえてうれしいよ」
そんな笑顔を、儚そうな笑顔を向けられたらオレは、気が変になるぜいい加減。





夢物語じゃない現実をオレは受入れますから。







だから、神様。いけない事をした俺をどうか許してください。
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