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呪いの弁当?
しおりを挟む「あー… 呪われてんね」
「だな」
頷きつつも宗二はくすりと笑う。
それを目に止めた斎は、信じられないという顔をして声を上げた。
「いやいやいや、呪いの弁当もらって何で笑うんだよ? 笑う要素ねえだろ!?」
「そうか? 可愛いだろ?」
にこやかに言うと彼は訳が分からないという反応をする。しかし、宗二には可愛いとしか思えなかった。
「だってそうだろ、風邪をひいた後だから栄養を考えてお弁当を作ってくれるとか…。一晩中 看病して疲れてただろうにさ」
「そう言われるとめっちゃいい奴だよな、お前んとこの幽霊くん」
うーん、でもなぁ…と首をひねる斎を余所に生姜焼きとご飯を交互に口に運ぶ。
じわりと肉汁が口の中に広がり、甘じょっぱいタレがよく絡んで、ご飯との相性はバッチリだった。卵焼きも、少し甘めだが、ふわりとしていて出汁がよく効いている。
「やっぱり、ポルターガイストで作ってんのかねぇ?」
「さあ?」
作っているところを見たわけではないので何とも言えないが、おそらくそうだろう。
「お前、よくそんなわけのわからない手法で作られた弁当食えるよな…」
「リョウが作ってくれたものだからね。でなければ食べないよ」
「完全に彼女じゃん。…いや、彼氏か?」
「何言ってんだか」
添えられたミニトマトを宗二が口に放り込むとかけ蕎麦を手にして戻ってきた斎が目の前に座る。
「ところで、今度ハセぴょんの CD が出るんだけど一緒にーー…」
「行かないし、買わない」
「そこをなんとか、お前、昔からくじ運良かっただろ?」
「自分の運で勝つんだな」
「俺のついてなさは知ってるくせに…」
恨めしそうにしても、余分なものを買うお金はない。
これからは、自炊も視野に入れなければならないのだから。
そんなわけで、スーパーで買い物をして急いで帰ると、出迎えの怪奇現象はなかった。
リョウの姿もないので仕方なくキッチンに向かい、弁当箱を置いて戻る。
その際何気なく振り返ると、ちょうど白い影が現れたところだった。
白い影ことリョウは弁当の蓋を開け、中身が入っていないことを確認すると、小さく"よし"とガッツポーズを決める。
その姿がなんだか微笑ましくて、つい声をかけてしまった。
「ありがとう、美味しかったよ」と。
次の瞬間、彼はきゅうりを見た猫のように飛び上がり、弁当箱の蓋を閉める。
「な、なに喜んでるの? これにはね、呪いがいっぱい詰まってるんだから、覚悟しときなよ!」
早口でまくし立てて消えた彼の姿に首を傾げ、そのあまりに必死さに小さく笑った。
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