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対決
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青と赤の火花があちこちで弾ける。
そのたびに女とリョウの身体が傷ついていく。
実態のないリョウにとってその傷はそのまま 魂の傷だ。それが増えているということは…。
「やめろ、リョウ!」
叫んだ瞬間、押し負けたリョウが地面に転がった。その姿が一瞬だけ希薄になり、息が止まる。
「もういい、いいんだ、リョウ…」
これ以上、リョウの傷つくところは見たくない。そんなもの見るぐらいなら死んだ方がマシだ。
「大人しく引きこもっていればいいものを、馬鹿ね、あなた。私と宗二の間に割り込もう なんて身の程を知りなさいな。他の子達は私の運命の子になれなかったから殺しちゃったけど、宗二は私の理想そのもの。私の運命の人だもの」
うっとりとした顔で女を笑い、手を伸ばしてきた瞬間。女の手と顔に青い火花が飛んだ。
「汚い手で宗二に触んな!」
「リョウ!」
「うるさい!」
もうやめてくれと名を呼ぶと、火花と共に怒鳴り返される。
「あーもう、チクショウ。認めるよ! 認めてやるよ…!」
誰に言うでもない言葉をこぼし、リョウはまっすぐ女を見た。
「僕は宗二が好きだ! お前なんかよりずっーと、愛してる!! だから、 最初からあんたの入る余地なんてないんだよ! 分かったら消えろ!この変態殺人鬼!!」
スッ…とリョウの姿が消え、女の前に現れると 同時に情け容赦のない回し蹴りが炸裂する。その瞬間、金縛りが解け、 身体に自由が戻った。
「リョウ」
宗二がポケットから出したソレを見て、リョウは女から素早く離れる。
「宗二~」
「俺はずっとリョウのものだ。お前のものじゃない」
甘えた声を出しながら飛んできた女めがけて、セージのアロマスプレーを噴射する。
振りかかった女はもんどりうち、顔を押さえてこちらを睨んだ。
殺してやる。
そう語る目の恐ろしさに後ずさると、リョウがその視線からかばうように前に立つ。
「殺してやりたいのは、僕も一緒だよ。お前だけは許さない、宗二から笑顔を奪っていた。お前だけは…っ」
ひときわ大きな音が鳴り、リョウの突き出した手に合わせて青い火花が散った。
女は吹き飛び、地面に転がる。
するとその地面が急に黒く染まっていった。
「宗二、下がれ。ヤバいのが来る!」
リョウが叫ぶと黒く染まった地面から無数の人の手が現れる。
人の手は粛々と泣きわめきだした女を地面に引きずり込んだ。そして、顔を出した黒い影がチラリとリョウを見る。とっさにそれを身体で遮り、リョウは連れて行かせないと手を広げた。
何を考えているかわからない黄色い目と見つめ合うこと数秒。
影はそのまま背を向けて女が消えた地面に吸い込まれていった。
何もなくなった地面に、緊張の糸が切れて崩れ落ちるように二人はへたり込む。
「…終わったのかな?」
「…多分ね」
これで終わってなかったら、もうお手上げだ。
「宗二ぃー、リョウゥー!」
聞きなれた声と見慣れたシルエットが野原の向こうから走ってくる。
それを見て、二人は身体から最後の力が抜いた。
ーー助かったのだ、と。
そのたびに女とリョウの身体が傷ついていく。
実態のないリョウにとってその傷はそのまま 魂の傷だ。それが増えているということは…。
「やめろ、リョウ!」
叫んだ瞬間、押し負けたリョウが地面に転がった。その姿が一瞬だけ希薄になり、息が止まる。
「もういい、いいんだ、リョウ…」
これ以上、リョウの傷つくところは見たくない。そんなもの見るぐらいなら死んだ方がマシだ。
「大人しく引きこもっていればいいものを、馬鹿ね、あなた。私と宗二の間に割り込もう なんて身の程を知りなさいな。他の子達は私の運命の子になれなかったから殺しちゃったけど、宗二は私の理想そのもの。私の運命の人だもの」
うっとりとした顔で女を笑い、手を伸ばしてきた瞬間。女の手と顔に青い火花が飛んだ。
「汚い手で宗二に触んな!」
「リョウ!」
「うるさい!」
もうやめてくれと名を呼ぶと、火花と共に怒鳴り返される。
「あーもう、チクショウ。認めるよ! 認めてやるよ…!」
誰に言うでもない言葉をこぼし、リョウはまっすぐ女を見た。
「僕は宗二が好きだ! お前なんかよりずっーと、愛してる!! だから、 最初からあんたの入る余地なんてないんだよ! 分かったら消えろ!この変態殺人鬼!!」
スッ…とリョウの姿が消え、女の前に現れると 同時に情け容赦のない回し蹴りが炸裂する。その瞬間、金縛りが解け、 身体に自由が戻った。
「リョウ」
宗二がポケットから出したソレを見て、リョウは女から素早く離れる。
「宗二~」
「俺はずっとリョウのものだ。お前のものじゃない」
甘えた声を出しながら飛んできた女めがけて、セージのアロマスプレーを噴射する。
振りかかった女はもんどりうち、顔を押さえてこちらを睨んだ。
殺してやる。
そう語る目の恐ろしさに後ずさると、リョウがその視線からかばうように前に立つ。
「殺してやりたいのは、僕も一緒だよ。お前だけは許さない、宗二から笑顔を奪っていた。お前だけは…っ」
ひときわ大きな音が鳴り、リョウの突き出した手に合わせて青い火花が散った。
女は吹き飛び、地面に転がる。
するとその地面が急に黒く染まっていった。
「宗二、下がれ。ヤバいのが来る!」
リョウが叫ぶと黒く染まった地面から無数の人の手が現れる。
人の手は粛々と泣きわめきだした女を地面に引きずり込んだ。そして、顔を出した黒い影がチラリとリョウを見る。とっさにそれを身体で遮り、リョウは連れて行かせないと手を広げた。
何を考えているかわからない黄色い目と見つめ合うこと数秒。
影はそのまま背を向けて女が消えた地面に吸い込まれていった。
何もなくなった地面に、緊張の糸が切れて崩れ落ちるように二人はへたり込む。
「…終わったのかな?」
「…多分ね」
これで終わってなかったら、もうお手上げだ。
「宗二ぃー、リョウゥー!」
聞きなれた声と見慣れたシルエットが野原の向こうから走ってくる。
それを見て、二人は身体から最後の力が抜いた。
ーー助かったのだ、と。
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