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第ニ章 運命との戦い
第二十九話 ダリラの回想
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光輝く太陽、どこまでも広がる緑の平原。
「ダリラ~ もう出発しちゃうよ~」
「ああ、今行くよ!」
ダリラはワイバーンの遊牧民族のところで育った。
「もう、どこに行ってたの! いつもどこかへ消えてしまうからみんなが心配するのよ!」
「悪いね・・・ 今日も剣の稽古に熱中してしまったよ・・・」
あたいに良く話しかけてくれた女がいたな・・・ 名前は、なんだったっけ・・・
「いつもいつも剣ばっかり振って飽きないの? 私たちは遊牧民族なんだから、たいして力は必要ないし・・・」
「いや、あたいは確信してるよ。いつかこの力が役に立つ時がね」
「もう、ダリラったら物騒なことを言わないでよ~」
(・・・あんたの言う通りだと思う。戦いなんてそうそう起こりやしないよ。たとえ起こったって、あたいらの飼っているワイバーンたちで瞬殺だしね)
ダリラはため息をつく。昔は、素敵な女騎士になりたくて仕方がなかった。
だが、現実はそう甘くない。ダリラたちは生涯、ワイバーンたちの世話をして生きていくことが決まっていたのだ。
ダリラは自分が育てているワイバーンの元へ向かう。
しばらく歩いたのち、ワイバーンたちが集まっているキャンプに着いた。
「グ? ギュルウ!」
あるワイバーンは近づいてくるダリラをいち早く見つけ、そそくさと飼い主の元へ走ってきた。
「おっ! グリム! 良い子にしていたか?」
「グルル!」
ダリラが飼っているワイバーン、グリムは嬉しそうに返事をする。
「ははは! ダリラ! 今日も剣に没頭かい? グリムはお前が寂しくて一日中鳴いていたぞ」
同じ部族の男が話しかけてきた。
「そうかそうか、寂しかったんだな。今度はお前も剣の稽古に連れて行ってやるさ!」
「グリュウ!」
そうしてグリムのことを撫でた。グリムは嬉しそうに尻尾を振っている。
「愛されているな、ダリラ。グリムはこれからもどんどん成長するだろう。立派に育てるんだぞ」
「はいはい、分かっているよ!」
勿論、育てたワイバーンは将来売りに出さなければならない。しかし、ダリラはそれがたまらなく嫌だった。
(グリムはあたいの親友だ。死ぬまでそばにいてやるんだ!)
ダリラの決意はとても堅かった。しかし・・・
「え? グリムが病気だって!? なんてこった!」
ある時、グリムが急に病にかかった。
病名は、腐敗病。体が段々と腐っていき、最終的には死に至る。そんな恐ろしい病気だ。
ダリラは急いで駆けつける。グリムは、キャンプから離れた場所で寝かされていた。
「グリム! 大丈夫かい!」
「グ、リュウ・・・」
グリムはかろうじて意識があった。しかし、翼はボロボロになっており、身体も一部腐敗していた。
「まってな! 今何とかして治してやる!」
「無理だ。腐敗病は不治の病。辛いだろうが、グリムはここに置いていくしかない・・・」
近くにいた部族の人がそう話す。
「そんな! ここで見捨てると言うのかい! そんなことはできないよ!」
「腐敗病は死体から感染するんだ。ここで放置する。それ以外のことはできない」
「なら、あたいも一緒に死んでやる!」
あたいは部族の人たちと大喧嘩。何日も居座った結果、とうとう置いて行かれてしまった。
ダリラはずっと、平原で寝そべっている。
「なあ、グリム。あたいたちはいつまでも一緒だぞ」
「・・・」
しかし、グリムから返事はない。
ダリラは、自分にも腐敗病に感染したことに気づいていた。
光輝く太陽、どこまでも広がる緑の平原で、ダリラは孤独感に襲われる。
このまま死んでしまう。そう思っていた。しかし・・・
「・・・?」
とうとう声も出せなくなった頃、ダリラはこちらに近づいてくる人に気づいた。
「ククク・・・ こんな所で仲良くのたれ死んでいるのですか?」
ぼんやりと見える視界には、全身真っ黒の人が映っている。
「実験台としては丁度良いですね。ほら、今助けてあげますよ・・・」
そう言って男は黒い宝玉を取り出す。そして、それをダリラの体の中に押し込んだ。
「ア、ガッ!」
ダリラは悶え苦しむ。まるで自分が自分でなくなっていく感覚。しかし、同時に彼女の五感は瞬く間の元に戻っていく・・・!
やがて、ダリラの体は真っ黒に染まってしまった。
「・・・グリムは?」
喋れるようになったダリラは一つ、それだけを問う。
「グリム? ああ、そこにある死体のことですか。大丈夫です、死体くらいすぐに蘇生できますよ」
そうして、男はまた黒い宝玉をを取り出した。
「私に、忠誠を使ってくれますね?」
「キャキャキャ・・・! もちろんだよ! グリム、あたいらはいつまでも一緒だ・・・!」
そう言って、ダリラはグリムの死体を撫で回す。
「貴方もこれで優等種族の仲間入りです。どう思いますか? 今の人間は。病気や怪我ですぐ死んでしまう奴らを・・・」
黒き男はそのまま話し続ける。
「そんな種族は滅んでしまえば良い! 私たちの手で浄化してやるのさ! ・・・おっと、興奮し過ぎてしまったようです。貴方、名前は?」
「・・・ダリラ、あたいの名前はダリラだよ」
「ククク・・・ ダリラ。これからよろしく頼みますよ?」
そうして男は手を差し伸べる。ダリラはその手をとった。
(今度こそ、あたいは素敵な女騎士・・・ いや、竜騎士になるんだ!)
こうして、彼女の地獄が始まったのだった・・・
「ダリラ~ もう出発しちゃうよ~」
「ああ、今行くよ!」
ダリラはワイバーンの遊牧民族のところで育った。
「もう、どこに行ってたの! いつもどこかへ消えてしまうからみんなが心配するのよ!」
「悪いね・・・ 今日も剣の稽古に熱中してしまったよ・・・」
あたいに良く話しかけてくれた女がいたな・・・ 名前は、なんだったっけ・・・
「いつもいつも剣ばっかり振って飽きないの? 私たちは遊牧民族なんだから、たいして力は必要ないし・・・」
「いや、あたいは確信してるよ。いつかこの力が役に立つ時がね」
「もう、ダリラったら物騒なことを言わないでよ~」
(・・・あんたの言う通りだと思う。戦いなんてそうそう起こりやしないよ。たとえ起こったって、あたいらの飼っているワイバーンたちで瞬殺だしね)
ダリラはため息をつく。昔は、素敵な女騎士になりたくて仕方がなかった。
だが、現実はそう甘くない。ダリラたちは生涯、ワイバーンたちの世話をして生きていくことが決まっていたのだ。
ダリラは自分が育てているワイバーンの元へ向かう。
しばらく歩いたのち、ワイバーンたちが集まっているキャンプに着いた。
「グ? ギュルウ!」
あるワイバーンは近づいてくるダリラをいち早く見つけ、そそくさと飼い主の元へ走ってきた。
「おっ! グリム! 良い子にしていたか?」
「グルル!」
ダリラが飼っているワイバーン、グリムは嬉しそうに返事をする。
「ははは! ダリラ! 今日も剣に没頭かい? グリムはお前が寂しくて一日中鳴いていたぞ」
同じ部族の男が話しかけてきた。
「そうかそうか、寂しかったんだな。今度はお前も剣の稽古に連れて行ってやるさ!」
「グリュウ!」
そうしてグリムのことを撫でた。グリムは嬉しそうに尻尾を振っている。
「愛されているな、ダリラ。グリムはこれからもどんどん成長するだろう。立派に育てるんだぞ」
「はいはい、分かっているよ!」
勿論、育てたワイバーンは将来売りに出さなければならない。しかし、ダリラはそれがたまらなく嫌だった。
(グリムはあたいの親友だ。死ぬまでそばにいてやるんだ!)
ダリラの決意はとても堅かった。しかし・・・
「え? グリムが病気だって!? なんてこった!」
ある時、グリムが急に病にかかった。
病名は、腐敗病。体が段々と腐っていき、最終的には死に至る。そんな恐ろしい病気だ。
ダリラは急いで駆けつける。グリムは、キャンプから離れた場所で寝かされていた。
「グリム! 大丈夫かい!」
「グ、リュウ・・・」
グリムはかろうじて意識があった。しかし、翼はボロボロになっており、身体も一部腐敗していた。
「まってな! 今何とかして治してやる!」
「無理だ。腐敗病は不治の病。辛いだろうが、グリムはここに置いていくしかない・・・」
近くにいた部族の人がそう話す。
「そんな! ここで見捨てると言うのかい! そんなことはできないよ!」
「腐敗病は死体から感染するんだ。ここで放置する。それ以外のことはできない」
「なら、あたいも一緒に死んでやる!」
あたいは部族の人たちと大喧嘩。何日も居座った結果、とうとう置いて行かれてしまった。
ダリラはずっと、平原で寝そべっている。
「なあ、グリム。あたいたちはいつまでも一緒だぞ」
「・・・」
しかし、グリムから返事はない。
ダリラは、自分にも腐敗病に感染したことに気づいていた。
光輝く太陽、どこまでも広がる緑の平原で、ダリラは孤独感に襲われる。
このまま死んでしまう。そう思っていた。しかし・・・
「・・・?」
とうとう声も出せなくなった頃、ダリラはこちらに近づいてくる人に気づいた。
「ククク・・・ こんな所で仲良くのたれ死んでいるのですか?」
ぼんやりと見える視界には、全身真っ黒の人が映っている。
「実験台としては丁度良いですね。ほら、今助けてあげますよ・・・」
そう言って男は黒い宝玉を取り出す。そして、それをダリラの体の中に押し込んだ。
「ア、ガッ!」
ダリラは悶え苦しむ。まるで自分が自分でなくなっていく感覚。しかし、同時に彼女の五感は瞬く間の元に戻っていく・・・!
やがて、ダリラの体は真っ黒に染まってしまった。
「・・・グリムは?」
喋れるようになったダリラは一つ、それだけを問う。
「グリム? ああ、そこにある死体のことですか。大丈夫です、死体くらいすぐに蘇生できますよ」
そうして、男はまた黒い宝玉をを取り出した。
「私に、忠誠を使ってくれますね?」
「キャキャキャ・・・! もちろんだよ! グリム、あたいらはいつまでも一緒だ・・・!」
そう言って、ダリラはグリムの死体を撫で回す。
「貴方もこれで優等種族の仲間入りです。どう思いますか? 今の人間は。病気や怪我ですぐ死んでしまう奴らを・・・」
黒き男はそのまま話し続ける。
「そんな種族は滅んでしまえば良い! 私たちの手で浄化してやるのさ! ・・・おっと、興奮し過ぎてしまったようです。貴方、名前は?」
「・・・ダリラ、あたいの名前はダリラだよ」
「ククク・・・ ダリラ。これからよろしく頼みますよ?」
そうして男は手を差し伸べる。ダリラはその手をとった。
(今度こそ、あたいは素敵な女騎士・・・ いや、竜騎士になるんだ!)
こうして、彼女の地獄が始まったのだった・・・
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