亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第3話 俺があいつの護衛になった理由 3

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「ひ、久しぶりだな……」
「あ、えぇ。そうね……」

 空気が、空気が重い……
 メルサと知って、かえって気まずい。一体何を言えばいいんだ?

「とりあえず、話を整理するぞ。嬢ちゃんは弁償してもらいたい、けどシュベルトは金を持ってない。さあどうするかだな」
 
「……お金を取りには戻れないの?」
「ああ…… 実は俺、衛兵から逃げ回っている状態でな」

「……え?」

 まあ、そんな反応になるだろうな。メルサとはまだ会ったばかりだ。
 最後にあったのはいつだろうか、5年前か?
 あの時は俺とメルサは共に14歳くらいだったな。

「何があったの?」
「……俺は近衛騎士だったんだ」

「近衛騎士…… まさか、本当に…… でも、なんで今は?」
「どうやら、俺が平民だったのが気に食わなかったみたいでな…… あらぬ罪を被せられた」

 あの時の記憶が鮮明によみがえってくる……
 あいつらにとって、俺は何だったんだろうか。……すぐに切り捨てられる、都合の良い駒だったんだろうな。

「それって……どんな罪?」
「……国家反逆罪だ」

「国家……反逆罪……」
「バカらしいだろう? ハハ、ハハハ……」

「シュ、シュベルト?」
 とても腹が立つ。先王に国を守ると誓い、今までやってきたのに……
 なのに! こんな仕打ち、おかしいだろう!
 
「俺は、政治の道具としてな、利用されて! 捨てられて!」

「おい、冷静になれ。お前らしくないぞ……」
「あいつらは、あいつらは……!! 俺を!」
「ちょっと。ねぇ……」
 
「クソッ、クソッ……! いっそ、あいつらと戦うしか……!」

 ――ダンッッ!!!

「……シュベルトッ!! しっかりして!」
「――!! め、メルサ……?」

 メルサは席から立ち上がった。そして、顔を俺の方に近づけてくる。 

「……な、何だよ」
「苦しかったの、凄くわかるよ」

「お前に、何が、分かるんだよ…… 知りもしないくせに!」
「だって、シュベルトが怒るの、初めて見たよ? それほど苦しかったってことでしょ?」

「何を…… 勝手に!」

 
「私たちは幼なじみだから。分かるよ」
 ……っ! 俺は何をしているんだ! メルサは関係じゃないか! 
 けど、やりようのない怒りを、どうすれば……! 
 
「ぅぅ……クソッ……」
「いつものように冷静に、考えればいいのよ……」

 ……落ち着け、一旦落ち着くんだ。
 自然と俺はうつむいた。あんまり、今の顔を見られたくない。

「はいはい。話を元に戻そうぜ。ほら、これでも飲んで落ち着け」
 ゲルツが出したお茶は、ほんのりと温かい。

「す、すまなかった、つい……」
「……気にしないで、あなたは悪くないんだから」

 ――カッ、カッ、カッ……
 沈黙が続く。

「おい、しっかりしろ! 今度は萎えすぎだぞ?」
「…………あぁ」

 今まで近衛騎士になるため、頑張ってきた人生。
 ……もう、日が暮れてきた。俺がここに居れるのもあとわずかだろう……

「……ねえ、ということは、シュベルトって今無職?」
「え? あ、あぁ。そうなるな」
「……そうなんだ。なら、代わりに頼みたいことがあるんだけど…… いい?」
「……頼み?」

 こんな俺に頼みなんてあるのか?
 ラーペンではもう、まともに身動きすらできないぞ。

 
「……私の、護衛になって!」
 
「は? 護衛?」
 話が急展開すぎてあまり頭に入ってこない。
 え、どういう…… ん? 護衛?

「うん、そう。護衛になってほしいの」
「は、はぁ…… 護衛、そう…… ん??」

 
 ~~


 ――冒険者ギルド、馬小屋にて

 メルサに言われるがまま、ここに連れてこられた。
 どうやら見せたいものがあるらしい。

「……着いたわ。これが私の馬車ね」
「おお……」
 目の前にあるのは、馬が一頭、そして荷車。手入れが行き届いている。
 まさか、こんなのを持っていたなんてな……

「メルサ、お前……行商人だったのか?」
「そうよ。今までやってきたの。そしてこれから……」

 なるほど、行商人の護衛を頼んでいたということか。
 ここは故郷の村から結構離れている。メルサこそ、どれだけの苦労を……
 

「で、今からこの街から出るわけ。聞いてるの?」
「え? あ、あぁ……といっても、商品が無ければ駄目だろう」

 見ての通り、馬車の中身はほぼからっぽだ。
 このまま行っても、赤字になるのは間違いない。
 
「もちろん、ここも協力してもらいたいんだけど……」
「ん? つまり……」
「代わりに道中で魔物を狩って、その素材を売りたいの。できるかしら?」
「ふむ、どれくらいだ?」

「……金貨200枚?」
「な!? それは違うだろう! まさか本気だったのか!?」

「わ、私にとってはそれくらいの価値があるの!」
「ほ、法外だっっ……!」

 まあ、どうせ他にやることなんてない。どうしたものか……
 金貨200枚は流石におかしいがな。

「……魔物の素材は集めよう、だが金額の話は後でな」
「ほんと? やった! これで絶対黒字ね」

「おい、本性が出てるぞ?」
「あ、ごめんごめん。つい」

 どうやら準備の方は終わったようだ。
 馬の上にまたがり、トコトコと軽く歩かせてみている。

「で、護衛になってくれるの?」
「……俺で良いのか? この国にはもう戻れないぞ?」

 よくよく考えると都合が良すぎる気がする。
 俺はこの国では国家反逆者だ。メルサまで罪に問われてしまったら……
 考えるだけで、恐ろしい。

「……大丈夫、私はシュベルトにやってもらいたいの」
「本当か?」

「本当、あなた以上に信頼できる人はいないの。護衛選びって、命がけだから……」
「…………」

 俺が幼なじみ……だから、か。
 正直、ゲルツに探してもらえば他にもいるはずだ。
 俺はもう、人を守る資格は無い。

「メルサ、無理しなくていいぞ? 俺は別に大丈夫だ」
「……別に無理なんてしてないわ。とんでもない」

「いや、やっぱり……」
「シュベルト、私、本当にずっとあなたを探してたの。最初は変わりすぎていて、気づかなかったけど……」

 俺を……探していた?

「あなたが村から急にいなくなって、出ていったと知らされて、私も飛び出したの」
「なんで……」

「それは、ここでは伝えられないわ。 ……どうしても、駄目なの?」
 
 ――!! 
 なんで、そんな目をするんだよ……

「いや、でも…… っな!」

 メルサは俺の手をぎゅっと握って離さなかった。
 うつむいていて、顔も見えない…… 

「おい……やめろ」
「…………」
 それでもメルサは手を離さない。
 
 
 ……俺の負けだ。もうなんだってやってやる。
 すべてをリセットして、新しい道に進む。……悪くないな。

「……分かった。護衛の件、引き受けよう」

「……え? いいの?」

 メルサはすぐに顔を上げ、こっちに向けてきた。
 おい。急に元気になったな? まあ、それがメルサらしいというかな。
 
「そこまで言われたら、断る理由は無い」
 
「シュベルト……」
「ん? どうかしたか?」

「……っよし! そう来なくっちゃ!」

 メルサは少し赤くなった目をこっちに向けて、ニカッと笑ったのだった。
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