亡国の近衛騎士 ~追放された王家直属の最強護衛、幼なじみの旅商人と共に世界を回ることにする~

アイスクリーム仕立て

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第10話 街の中心部 教会兵との戦闘

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「何それ、怖い話ね……」
「……うん。ハンスじいが言うには、外の誰かの仕業だって。街のどこを探しても居ないから」

 レアの前では言えないが、まあ納得と言うか、ありえそうな話だな。
 だが、俺もここの人がやっているとは思えない。

 今日も中央通りにはたくさんの露店で賑わっている。
 子供たちも元気に遊んでいるのを見ると、ここの人たちを信用しているのが分かる。

「…………」
「空気を悪くしちゃってごめん。えっと、リウはいい街だからね! そういうところを除いたら……」
「大丈夫よ、気にしないで。ねえ、シュベルトはどう思うの?」

「俺? 俺は……」
 なんて返そうか。正直に言ったら嫌われることは間違いないだろうしな……
 何か良い返答は無いか?

 レアはこちらのことを見てきている。うーん……
「まあ……そうだな……少なくとも、俺たちを襲うようなことがあれば全力で守る。それが俺の役目だからな」

 どうだ? 悪くない返しだと思うが、レアの反応は?

「……」
 うぬ、少し偉そうだったか? いや、でもこれくらいしか……

「……ありがとう。でも、できるだけそういうことが起こらないように頑張るよ」
「あ、あぁ。いつでも頼ってくれ」

 くぅ……! よし! レアと少し打ち解けることができた。
 ん? なんかメルサからの視線が冷たいような気がするのだが?

「へぇ…… やるわね?」
「め、メルサ。なんでそんなに怒ってるんだ?」
「怒ってないわよ。ふん」

 目をそらすメルサの頬は、微妙に膨れている。……いや、これは絶対怒ってるな。
 俺、何か言ってはいけないことを言ってしまったか!?

「ほら、そんなところで止まってないで、行くわよ!」
 メルサが不機嫌なまま、足早に先へと進んでいく。

「え? ちょっと、道は分かるの?」
「間違ってたら教えて!」

 レアは困ったように俺の方を向いてきた。うーん、何か、すまん。
「仕方ない、メルサについて行こう」

 ~~~

 そのまましばらく歩き続けると、何やら街の雰囲気が変わってきた。
 まず、建物が違う。今までの無秩序に積みあがったあれとは違って、爺さんの家みたいな木造住宅が見える。
 そして、言えることがもうひとつ。それは、全く人が居ないということだ。

「ね、ねぇ。こっちで合ってるのよね?」
「うん、そのまま進んでいいよ」
「……いや、やっぱり後ろについて行くわ」
 そういってメルサは俺のそばに再びやってきた。少し怖がり始めたか……

「……みんな、前を見て。もう見え始めたよ」
 レアは歩きながら前の方を指さした。

「ん? 何も見えないぞ。あるのは外壁じゃないか。もう西の方に着いたんじゃないのか?」
「いや、ここは街の中心。そう、あの壁だよ」

「……なんだよ、これ。街の真ん中に壁があるなんて、どういうことだ?」
 そびえ立つ目の前の壁、何も変わらないような気もするが、異質な感じがする。
 上にはなんだ? 警備兵でも居るのか? 人影が見えるぞ。

「ストップ。これ以上近づいたら教会兵にやられちゃうから、ここら辺で見よう」
「どういうこと? 教会兵って何なの?」

「……実は、あの壁の向こうにも街があるの。ラーハ正教の、ね」

 ラーハ正教? 確か、爺さんが敵視していた。
 あれがすべての元凶というのか?

「ラーハ正教はね……人間族以外の種族を敵としているの」
「何それ? 初めて聞いたわ、それってつまり……」
「うん。だから、この街の状態が気に入らなかったんだろうね。異種族と人間が一緒に暮らしていることが」

 ……俺は少しだけだが知っている。
 
 ――第一次血盟戦争。そのように呼ばれた戦争が数千年前にあった。
 人類は異種族の侵攻を前に、何もできずにいた。
 しかし、ラーハ神が現れ、瞬く間に敵を打ち砕いたとされている。

「なるほどな。で、ここは教会兵が攻撃してくるから誰も居ないと」
「うん。それだけじゃなくて、段々とその壁が移動しているんだよ、こっち側にね」
「えぇ……?」

「何か魔法でも使って移動さしているのだろうか」
「分からない。近づくことさえできないから。みんなここは危ないから出ていっちゃったの」

 そう語るレアの目は暗い。
 昔のリウの街並みは、まだ生活感を残している。きっと、レアも迫害を体験してきたんだ。

「とんでもない街だな……」
「あんまりそうやって言わないで。ここは、私たち異種族の唯一の居場所だから……」
「す、すまない。失言だった」

 レアはさらに落ち込んでしまった。
 どうしよう……やってしまった。何か手は無いか?

「……」

 ……よし。
 
「少し壁の方へ行ってくる。すぐ戻って来るから、待っててくれ」
「……へ? あちょっと、言ったでしょ? 危ないって」
「大丈夫だ」

 俺はレアの制止を振り切り、例の壁の方へ向かう。
 教会兵に見つからないように、建物の間を縫って行こう。

「……ぁ! ……っ、け…… ぉ!」

 ……! 気付かれたか? 間違いない! 気付かれてる!
 
 ――魔法陣展開 発動 魔法障壁
 ――ヒュンッ! ヒュンッ! ガガガッ!
 
 鳴り響く爆音と共に魔法が障壁に直撃し、周囲に光の粒が飛び散る。
 術者は5人程度か。これならまだ対処できるだろう。

 ――ボォンッ!

 目の前に巨大な火球、俺に着弾……することなく目の前で消え去った。
 驚いた、これほどの探知能力だったとは。

「……! なんでっ……ぁ、……ッ!」

 白装束の教会兵は諦めずにまだ魔法を撃ってくる。
 
 だが無駄だ、あいつらは魔術戦用の魔法を打っていない。民間人を殺すための魔法だ。
 つまり、障壁を壊すような一点に集める魔法ではなく、効率よく広範囲を攻撃する魔法ってことだ。

 だが、油断は禁物だ。早く壁にたどり着いてしまおう。

 ――魔法陣展開 付与 跳躍
 隠れるのは時間の無駄だ、全力疾走! 行くぞ!
 
 ――ヒュンッ、ドドッ、ダダダンッ!
 先ほどよりも魔法の数は多くなっている、だが、俺に当たることは無い。
 それ以上の速さで俺が避けているからだ。

「ここまで来るぞ! 武器を構えろ、奴はただ者じゃない!」
「了解です! 異端者を必ずや撃滅します!」

 教会兵の会話がしっかりと聞こえる。
 だが、俺の目的はお前たちじゃない。
 用があるのはその、壁だ……!
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