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その二 不動明王呪
七
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「私は鈴(すず)と申します」
「私は万(まん)です」
「六(ろく)と申します」
残りの三人も次々と名乗る。
「田主殿がお父上と申されましたな。田主殿はご健在なのですね」
「はい、田主は私たちにとり、この世でただ一人の父親にございます。父の様子は、和尚様が直にご覧になるのが一番かと思います。どうぞこちらへ」
そう言うと弥生は向きを変えた。
空海と田村麻呂は互いに顔を見合わせ、軽く頷くと二人並んで歩き出す。
すっと弥生が立ち止まり、振り向いた。
「申し訳ございませぬが、ここよりは空海和尚様お一人でお願いたします。田村麻呂様は、弟妹たちとここでしばらくお待ちください」
弥生は表情を一切変えずに、田村麻呂にそう言った。
「そうはいかんな。申し訳ないが俺は、あんたたちを信じてはいない。背中や顔を切られ殺された者が二人もいるという話を聞いた。一体誰が殺したのかは知らぬがな」
「父を助けていただく方に何の危害を加えましょうや。何の心配もありませぬ。田村麻呂様はどうぞここでお持ちください」
弥生は礼儀正しく丁寧に、しかし、きっぱりと田村麻呂を拒否した。
「田村麻呂、ここにいてくれ。俺に助けを求める以上、いきなり取って食われることもないだろう」
「おいおい空海、それはあまりにも危険だ。何が起こるかわからんのだぞ」
「まあ大丈夫だろうよ。お前こそ気をつけてくれ。お前は匂いに敏感だから、この屋敷は辛かろう。後は頼むぞ」
「さあさ、和尚様まいりましょう」
田村麻呂を残し、空海は弥生の後について行った。周りには弥生の弟と妹が三人。六つの目が田村麻呂をじっと見つめている。
「私は万(まん)です」
「六(ろく)と申します」
残りの三人も次々と名乗る。
「田主殿がお父上と申されましたな。田主殿はご健在なのですね」
「はい、田主は私たちにとり、この世でただ一人の父親にございます。父の様子は、和尚様が直にご覧になるのが一番かと思います。どうぞこちらへ」
そう言うと弥生は向きを変えた。
空海と田村麻呂は互いに顔を見合わせ、軽く頷くと二人並んで歩き出す。
すっと弥生が立ち止まり、振り向いた。
「申し訳ございませぬが、ここよりは空海和尚様お一人でお願いたします。田村麻呂様は、弟妹たちとここでしばらくお待ちください」
弥生は表情を一切変えずに、田村麻呂にそう言った。
「そうはいかんな。申し訳ないが俺は、あんたたちを信じてはいない。背中や顔を切られ殺された者が二人もいるという話を聞いた。一体誰が殺したのかは知らぬがな」
「父を助けていただく方に何の危害を加えましょうや。何の心配もありませぬ。田村麻呂様はどうぞここでお持ちください」
弥生は礼儀正しく丁寧に、しかし、きっぱりと田村麻呂を拒否した。
「田村麻呂、ここにいてくれ。俺に助けを求める以上、いきなり取って食われることもないだろう」
「おいおい空海、それはあまりにも危険だ。何が起こるかわからんのだぞ」
「まあ大丈夫だろうよ。お前こそ気をつけてくれ。お前は匂いに敏感だから、この屋敷は辛かろう。後は頼むぞ」
「さあさ、和尚様まいりましょう」
田村麻呂を残し、空海は弥生の後について行った。周りには弥生の弟と妹が三人。六つの目が田村麻呂をじっと見つめている。
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