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その七 鏡よ、鏡
二十一
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田村麻呂が阿弖流為の剣を受ける。
火花が飛ぶ。
二人の体に大きな力が生まれ、押し合う。
「おう!」
「ふん!」
二人が一気に同時に離れた。
構える。
阿弖流為が飛燕の速さで剣を繰り出す。田村麻呂は全てはじき返す。
剣を振るいながら、一瞬の間隙をつき、互いに拳や足で相手を攻撃する。
「ぬおおおおっ」
「来い!」
田村麻呂の剛剣が阿弖流為の烈剣を襲う。
鋼が飛び散る。
風が巻き上がる。
音が響き渡る。
二人の戦いには誰も入れない。
空海も弥生も空麻呂も見ているしかできない。
互角だ。
田村麻呂が普通の状態であれば・・・。
二人の力の均衡が崩れ始めてきた。
少しずつ、少しずつ田村麻呂が押され始めている。
それは数値では出せないほどの変化である。
花びら一枚が落ちる程度。
蜘蛛の巣が、風でたわむ程度。
それほどの違い。
だが間違いなく田村麻呂は押され始めている。
母禮との死闘を終えたばかりの田村麻呂は、やはり相当に体力、気力を消耗している。
阿弖流為の剣が動いた。
田村麻呂の体から血しぶきが上がる。
「やお殿、清友殿、弥生、空麻呂殿、力を貸してくれ」
空海はそう言うと、自分の近くにこの四人を招き寄せ、小声で語り掛けた。
「空海、何を考えてんだい?」
やおが問う。
清友は無言でうなずく。
「お任せ下さい」
弥生が言う。
「和尚様がそう仰るならば」
空麻呂が答える。
「では、行く」
田村麻呂と阿弖流為が打ちあっている。
一瞬たりとも気を抜けない。空海たちの事は目に入ってはいないだろう。
田村麻呂と阿弖流為の周囲に、東、西、南、北に空海は懐から取り出した「何か」を置いた。
「やお殿、清友殿、弥生、空麻呂殿、今だ!」
空海は右の掌を地面につけ、呪文を唱えた。
清友が阿弖流為の背後に取りつき、羽交い絞めにする。
「邪魔立てするなっ!」
阿弖流為は軽々と振りほどき、清友を投げ捨てた。
その瞬間、やお、弥生、空麻呂が田村麻呂の下に走り込んだ。
「田村麻呂っ、空麻呂に乗るんだよっ」
「な、何だと!」
やおと弥生がいぶかしむ田村麻呂の手をとり、強引に空麻呂の背中に乗せた。
空麻呂は田村麻呂を背負い、疾風の如く走り去る。
やおと弥生もその後に続く。
阿弖流為が四人を追う。
「動(どう)」
空海が手を合わせ、声を発した。すると先ほど東西南北の四方に置いた「もの」達が光った。
光る「もの」、それは神像であった。
四天王像だ。
東の持国天が光る。
南の増長天が輝く。
西の広目天から光が上がる。
北の多聞天が煌めく。
阿弖流為と空海の周囲、10m弱ほどの正方形の四方が金色に光り輝く。
「結界を引いた。もう誰も出られないし、入れない」
空海の目が阿弖流為を見据える。
「何になる?お前、逃げられんぞ。すぐに殺せる。そうすれば結界は壊れる。俺はその後で田村麻呂を殺すだけだ」
阿弖流為が空海に近寄ってくる。
空海が右手を阿弖流為に向け伸ばす。
掌を開いた。
火球が燃えている。
「阿弖流為、俺とお前の死出の旅だ。あの世では仲良くしようぜ」
空海が、火球を阿弖流為の足元に投げつけた。
火が燃え上がる。
空海は次々に火球を投げていく。
結界の中、火が煌々と燃え盛る。
「まさかお前!空海!お前、阿弖流為と一緒に焼け死ぬ気かぁ!やめろっ、やめるんだ、空海!」
田村麻呂が悲痛な声を上げた。
「空海っ」
やおが叫びながら、空海に近寄る。が結界に阻まれ、それ以上は近づけない。
「俺が死ねば結界はなくなる。けど、その時は阿弖流為、お前も焼死んでいるさ。さあ、俺と共に行こうぜ」
阿弖流為の足下に火が燃え移った。
体、顔に向かい火が上昇していく。
空海の周りにも飛び火してきた。
空海の服にも火がついた。
「空海!なめるなっ!この程度の火で俺を焼き殺せると思ったかぁ!今、お前を殺してくれる!そこを動くなっ!」
全身を火に包まれながら、阿弖流為が空海に歩み寄る。
空海は服を燃やしながら、合掌し静かに目を閉じた。
「空海ーっ、死ねーっ」
阿弖流為の燃えさかる手に、松明(たいまつ)の如く火をまとわりつかせた刀が振り上げられた。
振り下ろされる。
空海は目を閉じたままで合掌。
微動だにしない。
バン!
大きな音がした。
空海が結界の外にはじき出された。
その瞬間、金色に輝く結界が消えた。
火花が飛ぶ。
二人の体に大きな力が生まれ、押し合う。
「おう!」
「ふん!」
二人が一気に同時に離れた。
構える。
阿弖流為が飛燕の速さで剣を繰り出す。田村麻呂は全てはじき返す。
剣を振るいながら、一瞬の間隙をつき、互いに拳や足で相手を攻撃する。
「ぬおおおおっ」
「来い!」
田村麻呂の剛剣が阿弖流為の烈剣を襲う。
鋼が飛び散る。
風が巻き上がる。
音が響き渡る。
二人の戦いには誰も入れない。
空海も弥生も空麻呂も見ているしかできない。
互角だ。
田村麻呂が普通の状態であれば・・・。
二人の力の均衡が崩れ始めてきた。
少しずつ、少しずつ田村麻呂が押され始めている。
それは数値では出せないほどの変化である。
花びら一枚が落ちる程度。
蜘蛛の巣が、風でたわむ程度。
それほどの違い。
だが間違いなく田村麻呂は押され始めている。
母禮との死闘を終えたばかりの田村麻呂は、やはり相当に体力、気力を消耗している。
阿弖流為の剣が動いた。
田村麻呂の体から血しぶきが上がる。
「やお殿、清友殿、弥生、空麻呂殿、力を貸してくれ」
空海はそう言うと、自分の近くにこの四人を招き寄せ、小声で語り掛けた。
「空海、何を考えてんだい?」
やおが問う。
清友は無言でうなずく。
「お任せ下さい」
弥生が言う。
「和尚様がそう仰るならば」
空麻呂が答える。
「では、行く」
田村麻呂と阿弖流為が打ちあっている。
一瞬たりとも気を抜けない。空海たちの事は目に入ってはいないだろう。
田村麻呂と阿弖流為の周囲に、東、西、南、北に空海は懐から取り出した「何か」を置いた。
「やお殿、清友殿、弥生、空麻呂殿、今だ!」
空海は右の掌を地面につけ、呪文を唱えた。
清友が阿弖流為の背後に取りつき、羽交い絞めにする。
「邪魔立てするなっ!」
阿弖流為は軽々と振りほどき、清友を投げ捨てた。
その瞬間、やお、弥生、空麻呂が田村麻呂の下に走り込んだ。
「田村麻呂っ、空麻呂に乗るんだよっ」
「な、何だと!」
やおと弥生がいぶかしむ田村麻呂の手をとり、強引に空麻呂の背中に乗せた。
空麻呂は田村麻呂を背負い、疾風の如く走り去る。
やおと弥生もその後に続く。
阿弖流為が四人を追う。
「動(どう)」
空海が手を合わせ、声を発した。すると先ほど東西南北の四方に置いた「もの」達が光った。
光る「もの」、それは神像であった。
四天王像だ。
東の持国天が光る。
南の増長天が輝く。
西の広目天から光が上がる。
北の多聞天が煌めく。
阿弖流為と空海の周囲、10m弱ほどの正方形の四方が金色に光り輝く。
「結界を引いた。もう誰も出られないし、入れない」
空海の目が阿弖流為を見据える。
「何になる?お前、逃げられんぞ。すぐに殺せる。そうすれば結界は壊れる。俺はその後で田村麻呂を殺すだけだ」
阿弖流為が空海に近寄ってくる。
空海が右手を阿弖流為に向け伸ばす。
掌を開いた。
火球が燃えている。
「阿弖流為、俺とお前の死出の旅だ。あの世では仲良くしようぜ」
空海が、火球を阿弖流為の足元に投げつけた。
火が燃え上がる。
空海は次々に火球を投げていく。
結界の中、火が煌々と燃え盛る。
「まさかお前!空海!お前、阿弖流為と一緒に焼け死ぬ気かぁ!やめろっ、やめるんだ、空海!」
田村麻呂が悲痛な声を上げた。
「空海っ」
やおが叫びながら、空海に近寄る。が結界に阻まれ、それ以上は近づけない。
「俺が死ねば結界はなくなる。けど、その時は阿弖流為、お前も焼死んでいるさ。さあ、俺と共に行こうぜ」
阿弖流為の足下に火が燃え移った。
体、顔に向かい火が上昇していく。
空海の周りにも飛び火してきた。
空海の服にも火がついた。
「空海!なめるなっ!この程度の火で俺を焼き殺せると思ったかぁ!今、お前を殺してくれる!そこを動くなっ!」
全身を火に包まれながら、阿弖流為が空海に歩み寄る。
空海は服を燃やしながら、合掌し静かに目を閉じた。
「空海ーっ、死ねーっ」
阿弖流為の燃えさかる手に、松明(たいまつ)の如く火をまとわりつかせた刀が振り上げられた。
振り下ろされる。
空海は目を閉じたままで合掌。
微動だにしない。
バン!
大きな音がした。
空海が結界の外にはじき出された。
その瞬間、金色に輝く結界が消えた。
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