婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜

みのすけ

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婚約破棄当日 やるべきことは済ます

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ここは貴族の子弟が通う王立学園の一室。

私アレキサンドライト・セレスは応接室のソファに腰掛け、トントンと手元の書類を整える。
トロイ・ブロウ伯爵子息と私の婚約破棄に関する書類はこれで揃った。あらかじめ持ち歩いていて良かった。

「トロイ様、婚約破棄を承りました」

契約締結した今からは、呼び方も改めないとね。

「ブロウ伯爵子息、ドロール男爵令嬢、お二人の末永い幸せをお祈りしております」

目の前の長椅子でイチャイチャするカップルに退出の礼をして、私は部屋を出た。

破棄の手続きに立ち会ってくれたニール教授と共に、その足で学園長室を訪ねる。学園長先生に事の顛末を報告した。

「セレス君、なんと言って良いか…。先日卒業試験に合格した旨を伝えたばかりというのに…」

学園長先生はどの生徒にも優しく、私にも何度か声をかけてくださった方だ。心配そうな顔を見ると、なんだか申し訳なくなってしまう。

「学園長先生、気を遣わせてしまい申し訳ございません。私は大丈夫です。ましてこのような私事に学園の応接室をお借りして、申し訳ありませんでした」

「ニール教授、お忙しいにも拘わらず、手続きにお立ち会いくださり、ありがとうございました」

私は学園長先生とニール教授それぞれに、頭を下げた。

ニール教授は王立研究所の博士でいらっしゃる優秀な先生で、私の論文について何度かご指導いただいたことがある。お忙しい先生の手を煩わせて申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、大人に立ち会ってもらえると心強かった。

「学園長先生、このようなことで学園を騒がせてしまいましたので、私は近日中に退学させていただきたく存じます」

「セレス君には何の落ち度もないと、教授からも聞いているよ。……優秀な生徒がこんな形で辞めるのは悔しいかぎりだ」

「先生方のお気持ち、とても嬉しいです。それでは7日後に退学手続きをさせて頂きたくお願いいたします」

✳︎

学園の、衆目がある中で婚約破棄されたら瞬く間に噂になるだろう。社交界でも話題になること間違いなしだ。
学園に行くのは退学手続きの時のみ、社交のお誘いは全てお断りしよう。目立たないのに限る。

貴族社会において、婚約破棄された私は令嬢としては傷物。今後ろくな縁談は来ないだろう。政略結婚として使える私の価値は殆どない。

私は婚約破棄の書類を役所に提出して、その足で銀行に向かい、所用を済ませて帰路に着いた。
重いと思った足取りは、意外と軽かった。

✳︎

夕食時、家族が揃った食卓で私は婚約が破棄されたことを報告した。養父母は言葉を失い、兄弟はブロウ伯爵家に対して憤慨していた。

「姉さんと5年も婚約していたのに酷すぎるよ!」

弟のクリスが怒ってくれた。
普段は人当たりのよい可愛い弟だ。怒らせることになって申し訳ない気持ちになった。

「婚約する時だって、あちらがレイを見初めて強引に進めてきたのに今更…」

兄のオリバーが悔しがってくれた。
王宮の騎士団に所属する優秀な兄で、ブロウ伯爵家のことに常々心を砕いてくれている。
ちなみに『レイ』は家族間の私の呼び名である。

「お兄様、クリス、怒らないで。相手は伯爵家ですもの。仕方ないことです」

私は2人を諭める。
実の兄弟のように接してくれる彼らに、私はいつも感謝している。

「…レイ、こんなことになって…亡くなった姉さん達に顔向けできないわ」

「お母様、泣かないで下さい。これは仕方ないことなのです。天国の両親もわかってくれますわ」

養母は亡くなった母の実の妹で、オリバー兄様とクリスの実母だ。私の事も実の娘の様に接してくれるとても優しい方。

「…私の力不足ですまない。レイはこれからどうしたい?」

亡くなった父に代わり家門を継いでくれたのが、養父一家だった。私の事も養女にしてくれて、実の娘として接してくれる。

「お父様のせいではありません。これからのことは…ゆっくり考えたいと思います。しばらく領地に行ってもよろしいですか?」

「もちろん構わないよ。しっかり者のレイが決めたことだ。私達は尊重するよ。レイの好きにするといい」

「ありがとうございます、お父様。では9日後に領地に向かおうと思います」

いきなり9日後に出発すると言った私に、家族は戸惑いを感じた様だった。だが私が落ち込んでいる様子を見て、各々納得してくれたようだった。

優しい家族を私はとても大切に思っている。
だから私の婚約破棄のことで迷惑をかけることを、とても申し訳なく思っている。

今回は伯爵家からの一方的な婚約破棄となり、慰謝料等の賠償金は伯爵家より支払われる。
婚約破棄の手続きを娘の私の一存で行ったことは行き過ぎであったが、書類の控えを渡すと、養父も家令も何も言わなかった。

我が家にとって不名誉ではあるが、実際の損失は限りなくゼロにできただろう。

あとは…しばらくは社交界の噂になるが、それも長くは続かないと思っている。

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少し変わった婚約破棄の話に興味があれば、続きを見て頂けると嬉しいです。最初は恋愛色薄めなので、しばらくお付き合い頂けると幸いです。
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