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婚約破棄から2日目 ブロウ家からの来客
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婚約破棄から2日目、今日も来客があった。
ブロウ伯爵家の家令が、婚約破棄に伴う諸手続きに来たのだ。
私がブロウ伯爵子息と取り交わした婚約破棄の書類に基づき、伯爵家からの賠償金等諸々を受け取る。
婚約破棄条件の履行として、ブロウ伯爵家とセレス子爵家が今後一切関わらない旨の誓約書も取り交わした。
ブロウ伯爵家の家令を前にして、私は終始うつむき加減で対応する。しかしながら書類にはしっかりと目を通す。
婚約破棄に伴う履行がきちんとなされるか、自分の目で確かめたかったのだ。結果として、私が提示した破棄条件は全て履行された。
5年も婚約していたのに一方的に破棄された挙句、ブロウ伯爵家から家令のみが遣わされた事実に対し、手続きに同席した両親はとても怒っていた。
子爵家というより、私が軽んじられていることに憤慨しているのだ。
私のために怒ってくれる家族にはとても感謝している。
伯爵家の家令が帰ったあと、両親は涙を流して悔しがってくれた。
「お父様、お母様、もう泣かないでください。私は大丈夫です。ブロウ家とは今後関わらない誓約も交わしましたし、この先トロイ様とお会いすることもありませんから」
「……そうね。こんな薄情な家に嫁がせなくて良かったかもしれないわ」
「……そうだな。共同事業も解消したし、今後関わることはないだろう」
共同事業とは名ばかりで、もともとセレス家が立ち上げた事業にブロウ家が乗っかってきたのだ。
ブロウ家は名義だけでなにもせず、実質の運営はセレス家だけで成り立っていたので、私が両家の共同事業の解消を婚約破棄の条件に含めた。ブロウ家の持ち株も譲渡させ、運営用資金も銀行から引き上げ済だ。
「お父様、ブロウ伯爵家からの賠償金については、今まで伯爵家とのお付き合いに使用した我が家の資金の補填分としてお納めください」
我が家は貧しくはないが、裕福でもない。
経済状況を把握している私としては、賠償金をセレス家のために使ってほしいと思う。
「レイ、これは貴方がお使いなさい。貴方の心を癒すためのお金です」
「ではお母様、なおさら我が家の補填にお使いください。今だから言えますが、ブロウ伯爵家は散財しすぎというか……お金の使い方が派手で、それに付き合う我が家も色々大変だったと思います。それでも相手は伯爵家ですし、私の立場を慮って意向に沿わないわけにはいかなかったでしょう。
……私、お父様とお母様には本当に感謝しておりますから」
「レイ、遠慮しなくて良いんだよ。レイが相続した前子爵の遺産分もほとんど領地に投資しているだろう」
「お父様、ご心配なく。投資分はきちんと回収していますから。当座の資金は問題ありませんので」
私は微笑んで、すかさず話題を変える。
「それよりもクリスのことですが、あの子は学問の才能があります。研究熱心で植物図鑑を暗唱してしまえるほどなの。もう私では教えられないわ。クリスにきちんとした家庭教師をつけてほしいのです」
「ふむ…クリスもそろそろ年頃だし、後継者教育を始める時期かもなぁ。…レイが言うなら間違いないだろう。オリバーの時もそうだったしな」
父が言う。
「そうそう。オリバーに騎士団なんて向かないと思っていたけど、今や王太子殿下の側近だしね」
母が言う。
本来なら嫡子のオリバーお兄様が子爵家を継ぐ予定だ。だが実直で裏表のないオリバーは貴族社会に向いているとは言えず「剣技を活かして騎士団の入団試験を受けてみれば」と私がアドバイスしたのだっけ。
表向きは今もオリバーお兄様が嫡子だが、騎士団で役職を得た以上家督を継ぐのが難しくなる。
そのため弟のクリスにも後継者教育を施しておこうということになっていたのだ。
「クリスだけど、レイによく懐いているから、新しい家庭教師をつけたとして上手くやれるかしら」
母が言う。
「クリスなら大丈夫ですよ。もしよければクリスに合いそうな教師をリストアップしましょうか?昨日お友達から優秀な家庭教師の先生のお話を聞いたばかりなの」
「それは助かるわ。レイの見立てなら間違いないわね」母が言う。
間違いのないように、下調べは入念にしてある。
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お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。
ブロウ伯爵家の家令が、婚約破棄に伴う諸手続きに来たのだ。
私がブロウ伯爵子息と取り交わした婚約破棄の書類に基づき、伯爵家からの賠償金等諸々を受け取る。
婚約破棄条件の履行として、ブロウ伯爵家とセレス子爵家が今後一切関わらない旨の誓約書も取り交わした。
ブロウ伯爵家の家令を前にして、私は終始うつむき加減で対応する。しかしながら書類にはしっかりと目を通す。
婚約破棄に伴う履行がきちんとなされるか、自分の目で確かめたかったのだ。結果として、私が提示した破棄条件は全て履行された。
5年も婚約していたのに一方的に破棄された挙句、ブロウ伯爵家から家令のみが遣わされた事実に対し、手続きに同席した両親はとても怒っていた。
子爵家というより、私が軽んじられていることに憤慨しているのだ。
私のために怒ってくれる家族にはとても感謝している。
伯爵家の家令が帰ったあと、両親は涙を流して悔しがってくれた。
「お父様、お母様、もう泣かないでください。私は大丈夫です。ブロウ家とは今後関わらない誓約も交わしましたし、この先トロイ様とお会いすることもありませんから」
「……そうね。こんな薄情な家に嫁がせなくて良かったかもしれないわ」
「……そうだな。共同事業も解消したし、今後関わることはないだろう」
共同事業とは名ばかりで、もともとセレス家が立ち上げた事業にブロウ家が乗っかってきたのだ。
ブロウ家は名義だけでなにもせず、実質の運営はセレス家だけで成り立っていたので、私が両家の共同事業の解消を婚約破棄の条件に含めた。ブロウ家の持ち株も譲渡させ、運営用資金も銀行から引き上げ済だ。
「お父様、ブロウ伯爵家からの賠償金については、今まで伯爵家とのお付き合いに使用した我が家の資金の補填分としてお納めください」
我が家は貧しくはないが、裕福でもない。
経済状況を把握している私としては、賠償金をセレス家のために使ってほしいと思う。
「レイ、これは貴方がお使いなさい。貴方の心を癒すためのお金です」
「ではお母様、なおさら我が家の補填にお使いください。今だから言えますが、ブロウ伯爵家は散財しすぎというか……お金の使い方が派手で、それに付き合う我が家も色々大変だったと思います。それでも相手は伯爵家ですし、私の立場を慮って意向に沿わないわけにはいかなかったでしょう。
……私、お父様とお母様には本当に感謝しておりますから」
「レイ、遠慮しなくて良いんだよ。レイが相続した前子爵の遺産分もほとんど領地に投資しているだろう」
「お父様、ご心配なく。投資分はきちんと回収していますから。当座の資金は問題ありませんので」
私は微笑んで、すかさず話題を変える。
「それよりもクリスのことですが、あの子は学問の才能があります。研究熱心で植物図鑑を暗唱してしまえるほどなの。もう私では教えられないわ。クリスにきちんとした家庭教師をつけてほしいのです」
「ふむ…クリスもそろそろ年頃だし、後継者教育を始める時期かもなぁ。…レイが言うなら間違いないだろう。オリバーの時もそうだったしな」
父が言う。
「そうそう。オリバーに騎士団なんて向かないと思っていたけど、今や王太子殿下の側近だしね」
母が言う。
本来なら嫡子のオリバーお兄様が子爵家を継ぐ予定だ。だが実直で裏表のないオリバーは貴族社会に向いているとは言えず「剣技を活かして騎士団の入団試験を受けてみれば」と私がアドバイスしたのだっけ。
表向きは今もオリバーお兄様が嫡子だが、騎士団で役職を得た以上家督を継ぐのが難しくなる。
そのため弟のクリスにも後継者教育を施しておこうということになっていたのだ。
「クリスだけど、レイによく懐いているから、新しい家庭教師をつけたとして上手くやれるかしら」
母が言う。
「クリスなら大丈夫ですよ。もしよければクリスに合いそうな教師をリストアップしましょうか?昨日お友達から優秀な家庭教師の先生のお話を聞いたばかりなの」
「それは助かるわ。レイの見立てなら間違いないわね」母が言う。
間違いのないように、下調べは入念にしてある。
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お立ち寄り頂きありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。
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