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婚約破棄?その言葉待っていました!
婚約破棄から3日目 護衛依頼
婚約破棄から3日目、今日は一日外回りの予定。
貴族令嬢は通常外出の際に供を連れているが、私アレキサンドライト・セレスは一人で外出することが多い。
我が子爵家は質素倹約思考で、使用人の数も限られている。だから私が自分の用事で動く時は、大概一人で行動する。
普段は徒歩の私だが、今日は馬車を使う。
王都で付き合いのある商会や商人に挨拶回りをするとともに、領地用の買い出しをして回る。
王都の商人はいわばその道のプロ、本来なら身分の確かな、信頼ある大人としか渡り合わない。
しかし縁あって、私は何人かと個人的にお付き合いさせてもらっている。相手は私よりも一回り以上年上ばかりだが、一介の子爵家の小娘に過ぎない私にも、客として礼を尽くしてくれる。
商人は情報が命、耳早い彼らは当然私が婚約破棄された事情を知っている。「王都を離れる」という突然の挨拶にも、全く驚いてくれない。
「お嬢様が王都を離れるなんて、寂しくなります。新しい布地のご相談もできなくなりますね」
「領地に居ては王都の流行りに疎くなるので今までのように力にはなれないでしょうが、何かありましたら連絡して下さい」
「ありがとうございます。ですが、私はお嬢様が王都を離れること自体は良いことだと思います。お嬢様、王都を離れるまでは身辺に気をつけられた方が良いと思います」
「社交界で噂になっているからかしら?婚約破棄は成立したし、身辺に注意する程ではないかと思うのだけれど……」
「……ブロウ伯爵家です。セレス子爵家との共同事業から撤退した件で、ブロウ伯爵家から手を引く者が多く出ています。このままではブロウ伯爵家は今のような振る舞いはできなくなるでしょう。……御身お気をつけ下さい」
耳聡き彼らはブロウ伯爵家から一旦距離をとるか。確かにあの家の内情を考えればもっともな選択だろう。
商人の情報網と即断実行の力を再評価する。
「教えて下さりありがとうございます。ブロウ家と我が家は今後関わらないけれど、十分に注意します」
店を出た私は、その足で傭兵組合に向かう。
知り合いの傭兵さんを訪ねたら、彼は昼間から酒を飲んでいた。
「ジーク隊長、急ですが明日から1ヶ月程お願いしたい依頼があります。内容は領地の警護、貴方の信頼に値する方達を一隊、セレス領に派遣してもらえませんか?」
ジーク隊長はベテランの傭兵で、縁あって色々お世話になっている方だ。元は地方の騎士団に所属していた猛者で、今は王都にて若い傭兵の面倒を見ているらしい。
大柄でいかにも猛者っぽいが、私にとっては信頼できる気の良い小父さんである。
「嬢ちゃん、婚約の話は聞いてるぜ。嬢ちゃんの護衛じゃなくて、領地の方でいいのかい?」
ジーク隊長は状況判断が早い。
王都の街の人々にも好かれているので、私の噂も知っていて提案してくれたのだ。話が早くて助かる。
「はい、領地の方をお願いします。特に西側の境と北側に人を配置してください」
「あー……昔侵入された方のルートを潰せばいいんだな」
「はい、領地には連絡しておきますので、明日中にはセレス領入りしてもらえませんか?私が領地に入るのは少し後になります。日額報酬は相場、加えて成功報酬で倍乗せします」
「嬢ちゃんの頼みなら仕方ないな。酒をやめて仕事するとしよう」
「交渉成立ですね。よろしくお願いします」
私は急いで早馬を手配し、領地の家令に指示を送る。セレス領は王都から馬車で1日くらいの距離だから、早馬なら今日中に届くだろう。
私は残りの外出予定を取り止め、家路を急ぐ。
家族に身辺に注意するように伝えよう。
あと領地に護衛を送る件を父に承諾してもらわないと。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お立ち寄りいただきありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。
貴族令嬢は通常外出の際に供を連れているが、私アレキサンドライト・セレスは一人で外出することが多い。
我が子爵家は質素倹約思考で、使用人の数も限られている。だから私が自分の用事で動く時は、大概一人で行動する。
普段は徒歩の私だが、今日は馬車を使う。
王都で付き合いのある商会や商人に挨拶回りをするとともに、領地用の買い出しをして回る。
王都の商人はいわばその道のプロ、本来なら身分の確かな、信頼ある大人としか渡り合わない。
しかし縁あって、私は何人かと個人的にお付き合いさせてもらっている。相手は私よりも一回り以上年上ばかりだが、一介の子爵家の小娘に過ぎない私にも、客として礼を尽くしてくれる。
商人は情報が命、耳早い彼らは当然私が婚約破棄された事情を知っている。「王都を離れる」という突然の挨拶にも、全く驚いてくれない。
「お嬢様が王都を離れるなんて、寂しくなります。新しい布地のご相談もできなくなりますね」
「領地に居ては王都の流行りに疎くなるので今までのように力にはなれないでしょうが、何かありましたら連絡して下さい」
「ありがとうございます。ですが、私はお嬢様が王都を離れること自体は良いことだと思います。お嬢様、王都を離れるまでは身辺に気をつけられた方が良いと思います」
「社交界で噂になっているからかしら?婚約破棄は成立したし、身辺に注意する程ではないかと思うのだけれど……」
「……ブロウ伯爵家です。セレス子爵家との共同事業から撤退した件で、ブロウ伯爵家から手を引く者が多く出ています。このままではブロウ伯爵家は今のような振る舞いはできなくなるでしょう。……御身お気をつけ下さい」
耳聡き彼らはブロウ伯爵家から一旦距離をとるか。確かにあの家の内情を考えればもっともな選択だろう。
商人の情報網と即断実行の力を再評価する。
「教えて下さりありがとうございます。ブロウ家と我が家は今後関わらないけれど、十分に注意します」
店を出た私は、その足で傭兵組合に向かう。
知り合いの傭兵さんを訪ねたら、彼は昼間から酒を飲んでいた。
「ジーク隊長、急ですが明日から1ヶ月程お願いしたい依頼があります。内容は領地の警護、貴方の信頼に値する方達を一隊、セレス領に派遣してもらえませんか?」
ジーク隊長はベテランの傭兵で、縁あって色々お世話になっている方だ。元は地方の騎士団に所属していた猛者で、今は王都にて若い傭兵の面倒を見ているらしい。
大柄でいかにも猛者っぽいが、私にとっては信頼できる気の良い小父さんである。
「嬢ちゃん、婚約の話は聞いてるぜ。嬢ちゃんの護衛じゃなくて、領地の方でいいのかい?」
ジーク隊長は状況判断が早い。
王都の街の人々にも好かれているので、私の噂も知っていて提案してくれたのだ。話が早くて助かる。
「はい、領地の方をお願いします。特に西側の境と北側に人を配置してください」
「あー……昔侵入された方のルートを潰せばいいんだな」
「はい、領地には連絡しておきますので、明日中にはセレス領入りしてもらえませんか?私が領地に入るのは少し後になります。日額報酬は相場、加えて成功報酬で倍乗せします」
「嬢ちゃんの頼みなら仕方ないな。酒をやめて仕事するとしよう」
「交渉成立ですね。よろしくお願いします」
私は急いで早馬を手配し、領地の家令に指示を送る。セレス領は王都から馬車で1日くらいの距離だから、早馬なら今日中に届くだろう。
私は残りの外出予定を取り止め、家路を急ぐ。
家族に身辺に注意するように伝えよう。
あと領地に護衛を送る件を父に承諾してもらわないと。
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お立ち寄りいただきありがとうございます。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
またよろしくお願い致します。
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