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婚約破棄から7日目 退学手続き
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婚約破棄から7日目、私は退学手続きをするために王立学園にいる。
学園はこの日授業が午前中で終わるため、午後は職員しかいない。今以上の噂にならない様に、生徒が早帰りするこの日に手続きする予定にしていたのだ。
生徒が下校した頃を見計らって私が学園に着くと、シルフィーユ様が仁王立ちしていた。
「ご機嫌よう、セレス嬢」
シルフィーユ様は優雅に微笑む。仁王立ちしていても絵になる美しさだ。私は憧れの人の登場に驚いた。
シルフィーユ・イヴェル侯爵令嬢は眩しいくらい美しい方だ。
銀糸の美しい髪、銀の輝く瞳、はっきりとした目鼻立ち、人形の様に完璧な造形で見る者を魅了してしまう。
侯爵令嬢としての振る舞いも完璧で、まさに理想の令嬢。その場に居るだけで華やぐ『学園の花』だ。
私から高位の令嬢に話しかけることはできないので、生徒会役員として活躍するシルフィーユ様のお姿を遠目から見るのが好きだった。
シルフィーユ様は曲がったことを許さず、高潔無比なお方である。
学園に通う最も身分の高いのご令嬢でありながら取り巻きを作らず、生徒会役員として生徒に平等に接する方なので、シルフィーユ様から私に話しかけられた時はとても嬉しかった。
名前で呼ぶ許可を頂いたことは良い思い出だ。
「シルフィーユ様、お目にかかれて光栄です。」
私は舞い上がって声が上ずる。
まさか今日お会いできるとは思わなかったから。
「貴方を待っていたの。学園を退学するのは本当かしら?」
「……はい。本日で最後になります」
「ブロウ伯爵子息が原因なら、貴方が辞めることはなくってよ」
「シルフィーユ様、そう言ってくださりありがとうございます。ですが私事で学園を騒がせた以上、速やかに学園を去りたいと思います。
ライオール殿下の在籍中にこのようなことになり、大変申し訳ございませんでした」
「殿下も、貴方を案じていらっしゃったわ」
「殿下にまでお気遣いいただき、言葉もありません」
私は最敬礼をとる。
シルフィーユ様は生徒会役員として、私を見送りに来て下さったのだろう。
「貴方の意思は固いようね。学園を辞めた後はどうするつもりかしら?」
「しばらく領地で過ごそうと思います」
「では手紙を書くわ。返事を下さるかしら?」
「勿体無いことです」
「私は貴方のことが気に入っているの。また会いましょう」
颯爽と去るシルフィーユ様の後ろ姿を見送りながら、私は胸が熱くなった。
王立学園に入って良かったのは先生や友人に恵まれたことと、シルフィーユ様に出会えたことだと思う。
学園に入る前の私は、貴族に対して良い印象を持てなかった。自分が貴族であるということも後ろめたかった。
しかし学園に来てから、貴族も平民もその在り方が違うだけで同じ人間なのだということに気付いた。
また貴族の在り様を、私なりにある程度理解できるようになり、結果として自分の在り方を一部肯定できた。
それはシルフィーユ様や良き友人達のおかげなのだろう。
✳︎
その後退学手続きをして、先生方に挨拶をする。
学園長先生やニール教授も、私のことを惜しんで下さった。お心遣いが嬉しい。
学園を出る時、私はなんだか感情的になっていた。
だから気付かなかった。
背後から迫る人影に。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
気に入って下さった方はお気に入りやいいね頂けると励みになります^_^
よろしくお願い致します。
学園はこの日授業が午前中で終わるため、午後は職員しかいない。今以上の噂にならない様に、生徒が早帰りするこの日に手続きする予定にしていたのだ。
生徒が下校した頃を見計らって私が学園に着くと、シルフィーユ様が仁王立ちしていた。
「ご機嫌よう、セレス嬢」
シルフィーユ様は優雅に微笑む。仁王立ちしていても絵になる美しさだ。私は憧れの人の登場に驚いた。
シルフィーユ・イヴェル侯爵令嬢は眩しいくらい美しい方だ。
銀糸の美しい髪、銀の輝く瞳、はっきりとした目鼻立ち、人形の様に完璧な造形で見る者を魅了してしまう。
侯爵令嬢としての振る舞いも完璧で、まさに理想の令嬢。その場に居るだけで華やぐ『学園の花』だ。
私から高位の令嬢に話しかけることはできないので、生徒会役員として活躍するシルフィーユ様のお姿を遠目から見るのが好きだった。
シルフィーユ様は曲がったことを許さず、高潔無比なお方である。
学園に通う最も身分の高いのご令嬢でありながら取り巻きを作らず、生徒会役員として生徒に平等に接する方なので、シルフィーユ様から私に話しかけられた時はとても嬉しかった。
名前で呼ぶ許可を頂いたことは良い思い出だ。
「シルフィーユ様、お目にかかれて光栄です。」
私は舞い上がって声が上ずる。
まさか今日お会いできるとは思わなかったから。
「貴方を待っていたの。学園を退学するのは本当かしら?」
「……はい。本日で最後になります」
「ブロウ伯爵子息が原因なら、貴方が辞めることはなくってよ」
「シルフィーユ様、そう言ってくださりありがとうございます。ですが私事で学園を騒がせた以上、速やかに学園を去りたいと思います。
ライオール殿下の在籍中にこのようなことになり、大変申し訳ございませんでした」
「殿下も、貴方を案じていらっしゃったわ」
「殿下にまでお気遣いいただき、言葉もありません」
私は最敬礼をとる。
シルフィーユ様は生徒会役員として、私を見送りに来て下さったのだろう。
「貴方の意思は固いようね。学園を辞めた後はどうするつもりかしら?」
「しばらく領地で過ごそうと思います」
「では手紙を書くわ。返事を下さるかしら?」
「勿体無いことです」
「私は貴方のことが気に入っているの。また会いましょう」
颯爽と去るシルフィーユ様の後ろ姿を見送りながら、私は胸が熱くなった。
王立学園に入って良かったのは先生や友人に恵まれたことと、シルフィーユ様に出会えたことだと思う。
学園に入る前の私は、貴族に対して良い印象を持てなかった。自分が貴族であるということも後ろめたかった。
しかし学園に来てから、貴族も平民もその在り方が違うだけで同じ人間なのだということに気付いた。
また貴族の在り様を、私なりにある程度理解できるようになり、結果として自分の在り方を一部肯定できた。
それはシルフィーユ様や良き友人達のおかげなのだろう。
✳︎
その後退学手続きをして、先生方に挨拶をする。
学園長先生やニール教授も、私のことを惜しんで下さった。お心遣いが嬉しい。
学園を出る時、私はなんだか感情的になっていた。
だから気付かなかった。
背後から迫る人影に。
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