婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜

みのすけ

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突入作戦(オリバー視点)

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「……レイが帰っていない?!」

私、オリバー・セレスは戦慄した。
両親から知らせを受けたのは、突入作戦が始まる1時間前だった。

私の様子に気付いた王太子殿下が問いただす。
私は妹がまだ帰宅していない旨を報告した。

レイは今日退学手続きをするために、王立学園に出向いた。手続きが終わり次第帰宅する予定だったが、日が暮れた今も家に戻っていないという。

王立学園に通う学生のうち、上位貴族や金銭的に余裕のある家は馬車を使うが、下位貴族の学生は大半が徒歩で通学している。
王立学園に入学した当初、レイは馬車で通っていた。婚約者の義務として、ブロウ伯爵子息と一緒に登下校していたからだ。しかし入学後1年もしないうちにブロウ伯爵子息は送り迎えをしなくなり、以降レイは徒歩で通っている。

騎士団により王都の治安が守られているとはいえ、慣れた通学路とはいえ、レイに何かあったのだろう。嫌な予感がする。

いくら王都でも日が暮れれば女性の一人歩きは危ない。
だからレイは必ず日のあるうちに帰宅するし、外出予定を変更する時は出先から必ずセレス家に連絡を入れる。彼女は常に家族や家人に心配をかけないように努めている。

両親もレイの性格を分かっているから何かあったと思い、王宮にいる私にも連絡したのだろう。
両親が確認したところ彼女が学園を出てから既に5時間以上経っており、商会や孤児院など思い当たる場所を探したが行方がわからないという。
家人も総出で方々を探しても見つからず、娘が帰宅していないことについては騎士団にも届出済みとのことだ。

悪い想像が頭をよぎり落ち着かない私に対し、王太子殿下は任務から離れてセレス家に帰るよう勧めてくださった。

だが、思い当たるのはブロウ伯爵家のこと。
それならばこの作戦に参加した方がレイの行方に繋がるのではないか、と思った。

緊急時、私は自分の直感を信じることにしている。そのおかげで過去何度となく助かり、結果として今の職務に就いたのだから。


レイの所在不明の件について、王太子殿下が第二王子殿下へ情報を共有する。
ブロウ伯爵家が関わる件については、元婚約者とはいえレイも関係者扱いだからだ。

そして急きょクローディア公爵子息が助っ人として作戦に参加することになった。
高位貴族の子弟が現場に出るなんて聞いたことないが、彼が自ら希望したらしい。

「筆頭公爵家嫡男が怪我でもしたらどうするのか?!」と周りが止めそうなものだが、クローディア公爵子息は優れた魔術師として有名だ。
魔術師は貴重だし大きな戦力になるので、現場としては正直有り難い。

クローディア公爵子息はブロウ伯爵邸捜査の隊に同行することになった。

そして予定通りに作戦は開始された。

今回の目的はブロウ伯爵家とドロール男爵家の不正行為の証拠を押さえること。
そのために事前に調査した複数の拠点を一斉に捜査する。

私が配されたのはドロール男爵家お抱えの犯罪集団のアジト。荒事が予想される現場だ。

「作戦開始。場にいるものを全員捕えよ」

王太子殿下の命令で各隊が作戦を開始する。

王宮魔術師達が一斉に転移魔法を展開。
隊ごとに目的地へ転移する。

転移魔法は魔術とは違う古代魔法で、今は使える人が少ない貴重なものらしい。
そのため転移魔法の使い手は王宮魔術師に採用されるほどだ。

確かに一瞬にして現着できるのは、こちらにとって最大のアドバンテージだろう。

私達の転移先は王都郊外の空き屋敷。
書類上は巧妙に隠されているが、実際はドロール男爵家の所有物だ。

鬱蒼とした森に囲まれた古い建物で、外見は所々破損している。日が暮れた今は、余計薄気味悪く見える。

この屋敷の周囲に見張りがいないことは視認魔術で確認済み。現在は建物2階付近に多数の人影があるとの報告だった。

隊を2つに分けて、2箇所から建物へ突入する。

屋敷に入ると異様な雰囲気だった。
2階からドンドンと扉や壁を叩く音、複数の人の叫ぶ声、何かが割れる音がする。

隊員同士、顔を見合わせる。
只事ではない様子に緊張が高まる。

慎重に歩を進めていたところ急に屋敷の温度が上がり、階段上から煙が伝わってきた。

「火だ」

私達は一気に階段を駆け上がる。

中からドンドンと叩かれる扉を、隊員がこちら側に開く。すると複数の男性が飛び出してきた。

一見して堅気に見えない格好の男達。
手に持つ刃物を振り回して、何かを叫びながら逃げていく。

明らかに様子がおかしい。

「1人も逃すな!」

部屋から出てきた男達を部下に任せ、私はすばやく部屋に入る。見渡すと3箇所から火柱が上がり、数名の男達が床にうずくまって呻いていた。

異様な光景に身がすくんだが、とにかく男達を捕らえる。

同行した魔術師が急いで消火のための魔術をかける。
ランプが割られてそこからカーテンに燃え移っているようだ。

「セレス隊長!女の子がいます」

隊員の1人が声を上げ、私は急いで駆けつけた。

王立学園の制服を着た女の子が床に倒れている。両手両足を縛られて、意識がない。
それは紛れもなく、行方がわからなかった妹の顔だった。

「レイ!」
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