13 / 36
婚約破棄から7日目 誘拐
しおりを挟む
気が付いたら、薄暗い部屋の中だった。
明かりがなく、だだっ広い。
ほこりっぽい部屋の床に私アレキサンドライト・セレスは転がっていた。
手足が何かで拘束されている。
周りを見渡すと誰も居なかった。
窓から見えるのは夕日だろうか?
別の窓の外には木が茂っている。
ここは今は使われていない屋敷のようだ。
私は記憶を辿る。
退学手続きを終えて、学園を後にしたことは覚えている。急に鼻と口を布で押さえられて、薬みたいな匂いがして……記憶が途切れている。
状況からして、私は誰かに攫われた様だ。
窓から差し込む日差しが朱い。たぶん夕日……仮に今は夕方だとして、3時間くらい気を失っていただろうか?
3時間あれば、馬車で移動できるのは王都の端くらいまで。まぁ特殊な術を使わない限りは。
あと窓から見える木の葉っぱに特徴を見つける。
確かクリスの植物図鑑に写真があった……限られた地域に生息する木の葉だ。
確か王都郊外の東のエリアだったな。
ならばここは王都の東の端、貴族の別荘が点在する郊外のエリアの可能性が高い。
部屋の中を見渡す。
広さがあり、物がない部屋だと思ったが、隅にごちゃごちゃと物が退けてあるだけだった。
目を凝らして見ると壊れたアンティーク家具がある。意匠に見た事のある家紋があしらわれていた。
あれは……ドロール男爵家の紋か。
そうなると、ここはドロール男爵家の使われていない別荘の可能性が高い。
ドロール男爵家の別荘は、今は領地にあるだけのはず。ここが王都なら、この屋敷は意図的に隠された別荘ということになる。
もし私がずっと探していたところだとしたら……。
自分の体を見ると学園の制服のままで、手足はロープで縛られている。
縄は外せないが指は動かせる。
あと口も動かせる。
良かった。私は運が良い。
さて、どうしようか?
私は意外に落ち着いているようだ。
自分でも驚くけれど、頭もクリアだ。
実はこういうことは初めてではない。
こんなに早く機会が巡って来るとは思わなかった。
ここは私が探していた場所らしい。
ずっと、ずっと、この状況を待っていたのだから。
幸いこの部屋には誰もいない。
私は口元が綻んだ。仕掛けるなら今だ。
私は指先を動かし、小さな魔法陣を空に描く。
小さな声で呪文の詠唱。対価は私。
部屋全体に魔法陣が広がり、青白い光に包まれる。その後光が収束し、扉に紋章が浮かび上がった。
『汝、生きたいのか、それとも死にたいのか』
扉が私に問いかける。
「私は生きたい。目的を果たすために」
私ははっきりとした声で、扉に言い放つ。
魔法陣は完成している。
術は成功したようだ。
突然ドタドタと足音が近付いてきた。
足音からして大人の男性、それも複数いる。ガチャガチャと…武器を携帯する音もする。
発光に気付かれたためか、私をここに連れて来た関係者が様子を見に来るのだろう。
私は入って来る輩を直接見たかったが、急に身体が重くなり、急速に意識が薄れていった。
術の対価が支払われるのだ。
ほどなく、勢いよく部屋の扉が開け放たれた。
明かりがなく、だだっ広い。
ほこりっぽい部屋の床に私アレキサンドライト・セレスは転がっていた。
手足が何かで拘束されている。
周りを見渡すと誰も居なかった。
窓から見えるのは夕日だろうか?
別の窓の外には木が茂っている。
ここは今は使われていない屋敷のようだ。
私は記憶を辿る。
退学手続きを終えて、学園を後にしたことは覚えている。急に鼻と口を布で押さえられて、薬みたいな匂いがして……記憶が途切れている。
状況からして、私は誰かに攫われた様だ。
窓から差し込む日差しが朱い。たぶん夕日……仮に今は夕方だとして、3時間くらい気を失っていただろうか?
3時間あれば、馬車で移動できるのは王都の端くらいまで。まぁ特殊な術を使わない限りは。
あと窓から見える木の葉っぱに特徴を見つける。
確かクリスの植物図鑑に写真があった……限られた地域に生息する木の葉だ。
確か王都郊外の東のエリアだったな。
ならばここは王都の東の端、貴族の別荘が点在する郊外のエリアの可能性が高い。
部屋の中を見渡す。
広さがあり、物がない部屋だと思ったが、隅にごちゃごちゃと物が退けてあるだけだった。
目を凝らして見ると壊れたアンティーク家具がある。意匠に見た事のある家紋があしらわれていた。
あれは……ドロール男爵家の紋か。
そうなると、ここはドロール男爵家の使われていない別荘の可能性が高い。
ドロール男爵家の別荘は、今は領地にあるだけのはず。ここが王都なら、この屋敷は意図的に隠された別荘ということになる。
もし私がずっと探していたところだとしたら……。
自分の体を見ると学園の制服のままで、手足はロープで縛られている。
縄は外せないが指は動かせる。
あと口も動かせる。
良かった。私は運が良い。
さて、どうしようか?
私は意外に落ち着いているようだ。
自分でも驚くけれど、頭もクリアだ。
実はこういうことは初めてではない。
こんなに早く機会が巡って来るとは思わなかった。
ここは私が探していた場所らしい。
ずっと、ずっと、この状況を待っていたのだから。
幸いこの部屋には誰もいない。
私は口元が綻んだ。仕掛けるなら今だ。
私は指先を動かし、小さな魔法陣を空に描く。
小さな声で呪文の詠唱。対価は私。
部屋全体に魔法陣が広がり、青白い光に包まれる。その後光が収束し、扉に紋章が浮かび上がった。
『汝、生きたいのか、それとも死にたいのか』
扉が私に問いかける。
「私は生きたい。目的を果たすために」
私ははっきりとした声で、扉に言い放つ。
魔法陣は完成している。
術は成功したようだ。
突然ドタドタと足音が近付いてきた。
足音からして大人の男性、それも複数いる。ガチャガチャと…武器を携帯する音もする。
発光に気付かれたためか、私をここに連れて来た関係者が様子を見に来るのだろう。
私は入って来る輩を直接見たかったが、急に身体が重くなり、急速に意識が薄れていった。
術の対価が支払われるのだ。
ほどなく、勢いよく部屋の扉が開け放たれた。
16
あなたにおすすめの小説
誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる
吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」
――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。
最初の三年間は幸せだった。
けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり――
気づけば七年の歳月が流れていた。
二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。
未来を選ぶ年齢。
だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。
結婚式を目前にした夜。
失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。
「……リリアナ。迎えに来た」
七年の沈黙を破って現れた騎士。
赦せるのか、それとも拒むのか。
揺れる心が最後に選ぶのは――
かつての誓いか、それとも新しい愛か。
お知らせ
※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。
直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。
「君は大丈夫だろ?」と可哀想な元恋人を選択した夫。~今さら復縁を迫っても、愛は既に錆び付いています~
水上
恋愛
夫と白い結婚をして、傾いた領地を努力と苦労の末に立て直した伯爵令嬢ヴィクトリア。
夫との関係も良好……、のように見えていた。
だが夫は「君は強いから」と、めそめそ泣く元恋人を優先し、ヴィクトリアの献身を踏みにじった。
その瞬間、彼女の恋心は錆び付き始めた。
「私が去ったら、この領地は終わりですが?」
愛想を尽かした彼女は、完璧な微笑みの裏で淡々と離縁の準備を始める。
これは、有能な妻が去り、無能な夫が泥沼に沈むまでを描く、冷徹な断罪劇。
アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚
里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」
なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。
アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。
【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています
春野オカリナ
恋愛
エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。
社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。
幼馴染を選んで婚約者を追放した旦那様。しかしその後大変なことになっているようです
睡蓮
恋愛
レーベット侯爵は自身の婚約者として、一目ぼれしたミリアの事を受け入れていた。しかしレーベットはその後、自身の幼馴染であるリナリーの事ばかりを偏愛し、ミリアの事を冷遇し始める。そんな日々が繰り返されたのち、ついにレーベットはミリアのことを婚約破棄することを決める。もう戻れないところまで来てしまったレーベットは、その後大きな後悔をすることとなるのだった…。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる