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興味(ユリウス視点)
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「ユリウス、先日の働きについて王太子殿下からお褒めの言葉を賜った。
良くやった。国王陛下もお喜びである」
久しぶりに顔を合わせた父親は、機嫌が良さそうだった。切れ者宰相と呼ばれ、国王陛下の信頼も厚い父である。
「ありがとうございます、父上」
先日の働きとは、ブロウ伯爵家とドロール男爵家の件だろう。俺はブロウ伯爵邸の捜査に魔術師として協力した。
公爵家嫡男の俺が荒事の現場に出向くことは基本的にない。事後報告を聞いた母上には大変心配されたが、無事に帰ってきたので結果良しとされた。
本来の俺の務めは第二王子ライオール殿下の側で仕える事。
それがブロウ家に出向いたのは「アレキサンドライト・セレス子爵令嬢が行方不明」との報せを聞いたからである。
彼女はブロウ伯爵子息の元婚約者で、行方不明になる2日前にブロウ伯爵子息と揉めていた。ならば彼女の失踪にブロウ家が関わっていると考えるのが妥当だろう。
俺は彼女がブロウ伯爵子息に詰め寄られている場面に遭遇したせいか、彼女のことが気になっていた。
そのためライオール殿下を通じて、急遽作戦に参加させてもらうことにしたのである。
結果として彼女は別の現場で無事保護された。
俺はこの事件発覚のきっかけとなったブロウ家の小間使いマリアに話を聞いた。
マリアは7歳の時にセレス領でさらわれ、その後孤児院に入り、10歳の時にブロウ家に売られてきたのだという。
マリアは生まれてからセレス領を出たことがないため、攫われた先のことは全く分からなかった。孤児院では両親やセレス領の事を口にすると職員から折檻されたそうで、孤児院を出た後も自分から周りに相談することは出来なかったそうだ。
マリアに攫われた時の事を聞くと辛そうに顔をしかめた。
領地の子供達は日が暮れる前に家に帰らなければならないが、その日マリアは外に出ていた。
近所の幼い子が迷子になり、友人と共に領内を探していたところ、見知らぬ男3人と遭遇したという。
セレス領を訪れる外部の者は少なく、また領民は全員顔見知りのため、見知らぬ人だということは子供でもすぐにわかる。
しかも男達は探していた幼子を抱え、麻袋に入れていたそうだ。
マリアと友人は怖くなり大人に知らせようとしたところ、背後から捕らえられ、気が付いた時には馬車に揺られていたそうだ。
馬車にはマリアと友人の女児、幼子の男児の3人がいたが、それぞれ別の場所で降ろされたので、その後の行方は分からないという。
マリアは「アレキサンドライト・セレス」の名を覚えていた。
自分より1つ年上で、よく一緒に遊んでくれたお姉さん。彼女は領地の子供達の憧れだった。
領主の娘だが偉ぶったところがなく、優しくて利発で、誰にでも同じ様に接してくれる少女だったという。
✳︎
俺はマリアと共に行方不明になった子供が気になり、行方を調べたところ、マリア以外の2人は、現在セレス領に戻ってきていることが分かった。
その経緯を調べたところ、どちらも間接的にアレキサンドライト・セレスが関わっていることが分かった。
今回のマリアの件といい、他の2人の件といい、セレス子爵令嬢が意図的に関わっているのは明らかだ。
おそらく、攫われた子供達の行方を探していたのだろう。
しかし当時8歳の子供で、両親を亡くした少女が、行方不明の子供達を探し当てるなんてできるものだろうか?
しかも何年もかけてまで……。
俺はアレキサンドライト・セレス子爵令嬢にとても興味を引かれた。
自分の知っているどの令嬢とも違う、何か得体の知れない部分に。
良くやった。国王陛下もお喜びである」
久しぶりに顔を合わせた父親は、機嫌が良さそうだった。切れ者宰相と呼ばれ、国王陛下の信頼も厚い父である。
「ありがとうございます、父上」
先日の働きとは、ブロウ伯爵家とドロール男爵家の件だろう。俺はブロウ伯爵邸の捜査に魔術師として協力した。
公爵家嫡男の俺が荒事の現場に出向くことは基本的にない。事後報告を聞いた母上には大変心配されたが、無事に帰ってきたので結果良しとされた。
本来の俺の務めは第二王子ライオール殿下の側で仕える事。
それがブロウ家に出向いたのは「アレキサンドライト・セレス子爵令嬢が行方不明」との報せを聞いたからである。
彼女はブロウ伯爵子息の元婚約者で、行方不明になる2日前にブロウ伯爵子息と揉めていた。ならば彼女の失踪にブロウ家が関わっていると考えるのが妥当だろう。
俺は彼女がブロウ伯爵子息に詰め寄られている場面に遭遇したせいか、彼女のことが気になっていた。
そのためライオール殿下を通じて、急遽作戦に参加させてもらうことにしたのである。
結果として彼女は別の現場で無事保護された。
俺はこの事件発覚のきっかけとなったブロウ家の小間使いマリアに話を聞いた。
マリアは7歳の時にセレス領でさらわれ、その後孤児院に入り、10歳の時にブロウ家に売られてきたのだという。
マリアは生まれてからセレス領を出たことがないため、攫われた先のことは全く分からなかった。孤児院では両親やセレス領の事を口にすると職員から折檻されたそうで、孤児院を出た後も自分から周りに相談することは出来なかったそうだ。
マリアに攫われた時の事を聞くと辛そうに顔をしかめた。
領地の子供達は日が暮れる前に家に帰らなければならないが、その日マリアは外に出ていた。
近所の幼い子が迷子になり、友人と共に領内を探していたところ、見知らぬ男3人と遭遇したという。
セレス領を訪れる外部の者は少なく、また領民は全員顔見知りのため、見知らぬ人だということは子供でもすぐにわかる。
しかも男達は探していた幼子を抱え、麻袋に入れていたそうだ。
マリアと友人は怖くなり大人に知らせようとしたところ、背後から捕らえられ、気が付いた時には馬車に揺られていたそうだ。
馬車にはマリアと友人の女児、幼子の男児の3人がいたが、それぞれ別の場所で降ろされたので、その後の行方は分からないという。
マリアは「アレキサンドライト・セレス」の名を覚えていた。
自分より1つ年上で、よく一緒に遊んでくれたお姉さん。彼女は領地の子供達の憧れだった。
領主の娘だが偉ぶったところがなく、優しくて利発で、誰にでも同じ様に接してくれる少女だったという。
✳︎
俺はマリアと共に行方不明になった子供が気になり、行方を調べたところ、マリア以外の2人は、現在セレス領に戻ってきていることが分かった。
その経緯を調べたところ、どちらも間接的にアレキサンドライト・セレスが関わっていることが分かった。
今回のマリアの件といい、他の2人の件といい、セレス子爵令嬢が意図的に関わっているのは明らかだ。
おそらく、攫われた子供達の行方を探していたのだろう。
しかし当時8歳の子供で、両親を亡くした少女が、行方不明の子供達を探し当てるなんてできるものだろうか?
しかも何年もかけてまで……。
俺はアレキサンドライト・セレス子爵令嬢にとても興味を引かれた。
自分の知っているどの令嬢とも違う、何か得体の知れない部分に。
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