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セレス子爵の話(ユリウス視点)①
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「クローディア公爵子息におかれましては、娘をブロウ伯爵子息から助けて頂いたそうで本当にありがとうございました」
王都のセレス子爵家の応接室で、俺はセレス子爵から感謝されていた。
ブロウ伯爵子息が孤児院帰りのセレス子爵令嬢を待ち伏せしている場に居合わせ、彼女を助けたからだ。
王太子殿下が主導した貴族の検挙は予定していた成果を上げた。現在さらなる余罪を追及する一方で、事態の収拾に向けても動いている。
そのためにセレス子爵家に王宮からの使者が遣わされることになった。
セレス家がブロウ家の関係先であったこと、及びセレス家長女アレキサンドライトがドロール家により誘拐・監禁されたことに対する配慮である。
俺は使者としてセレス子爵と対面した。
第二王子ライオール殿下は王太子殿下に協力しており、且つ王立学園の生徒を束ねる立場としてセレス子爵令嬢を気にかけていらした。そこでセレス子爵令嬢と面識がある俺が遣わされたのである。
一連の騒動に関してセレス子爵に事の経緯を説明するためだが、セレス嬢の見舞いも兼ねていた。
しかし彼女には会えなかった。
なぜなら既に王都を発っていたからである。
ドロール男爵家別荘から騎士団に保護されたセレス嬢は事件の被害者として事情聴取された後、王都のセレス子爵家に帰された。
薬を使って攫われた彼女は何も覚えておらず、また医師の診察の結果問題がなかったため、セレス嬢は療養に専念することが決まった。
てっきり王都の屋敷で過ごすものと思っていたが、帰宅した翌日には一人で領地に向かったという。
セレス子爵の話によると、セレス嬢は婚約破棄に伴い、王立学園を退学した後は領地に行くつもりだったとのこと。
加えて今回の事件により「落ち着いた場所で療養したい」と本人が希望したため、当初の予定通りに領地入りしたそうだ。
セレス子爵の様子から、本当に娘を大事にしているのだろう。親として心配する気持ちはもちろんだが、娘の意思を尊重する姿勢が伝わってくる。
セレス嬢は養子だが、親子関係は想像以上に良好なようだ。
✳︎
セレス子爵にブロウ伯爵家のことを伝えると、とても驚いていた。
事前の調べでセレス子爵家はブロウ伯爵家の不正に関与していないことはわかっていたが、セレス子爵は本当に何も知らなかった。
もしこのままブロウ家と婚約関係が続いていたら、セレス子爵家にも少なからず影響があっただろう。
セレス子爵家は長女アレキサンドライトの婚約をきっかけに、ブロウ伯爵家との付き合いが始まった。
婚約が決まった時、両家には明確な政略関係がなかったそうだ。セレス子爵はなんとか辞退したかったが、ブロウ伯爵家からの一方的な要望に対し、格下の子爵家には対抗できる力がなかった。
だから婚約に関して、アレキサンドライトに拒否権はなかった。
本人は快諾するかわりに、セレス夫妻に対して「結婚するまではセレス家とブロウ家の実際の交流を最低限に留めるようにしてほしい」と懇願したという。
婚家での自分の立場を有利にするために実家の支援を当てにする場合もあるというのに、アレキサンドライトはその道を塞いだ。そしてブロウ家のことはアレキサンドライトを通して対応する様に、使用人にも徹底したらしい。
セレス夫妻は思うところがあったが、娘の願いを黙って受け入れた。婚約を解消できない以上、娘にはできるだけ思う通りにさせてあげたいとの気持ちだったそうだ。
そのためセレス夫妻はブロウ伯爵家とは形式的な付き合いしかなかった。
ブロウ家の不法行為はセレス家と交流が始まる前から行われていたことが分かっている。セレス家側が不法行為の事実を知らなかったとはいえ、実質的な交流があれば打撃は免れなかっただろう。
幸いにしてセレス家とブロウ家の間にあった契約は、婚約破棄に伴い全て清算されている。しかもセレス家側の要望から、無関与不干渉の誓約書まで取り交わしたと聞いた。
これらはブロウ家有責による婚約破棄に対して、セレス家としての遺憾を表した結果だと貴族社会では捉えられた。
真実の愛を貫いた末に婚約破棄したことで、両家にまつわる噂は市井にまで広がっていた。世間ではセレス子爵家がブロウ伯爵家の悪事に加担していたと疑う者は少なく、社交界も同情的だ。
このタイミングもこの結果も、偶然なのだろうか?
さらにセレス嬢は以前から兄オリバー上級騎士にマリアのことを頼んでおり、マリアが希望すればセレス領に戻れる様に手配していたそうだ。
準備が良すぎるというか、前々から予定している様に無駄のない動きだ、と思ってしまう。
俺の中では、先日感じた違和感が少しずつ大きくなってきていた。
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1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。次は夕方投稿します。
気に入って下さった方はお気に入りやいいね頂けると励みになります^_^
よろしくお願い致します。
王都のセレス子爵家の応接室で、俺はセレス子爵から感謝されていた。
ブロウ伯爵子息が孤児院帰りのセレス子爵令嬢を待ち伏せしている場に居合わせ、彼女を助けたからだ。
王太子殿下が主導した貴族の検挙は予定していた成果を上げた。現在さらなる余罪を追及する一方で、事態の収拾に向けても動いている。
そのためにセレス子爵家に王宮からの使者が遣わされることになった。
セレス家がブロウ家の関係先であったこと、及びセレス家長女アレキサンドライトがドロール家により誘拐・監禁されたことに対する配慮である。
俺は使者としてセレス子爵と対面した。
第二王子ライオール殿下は王太子殿下に協力しており、且つ王立学園の生徒を束ねる立場としてセレス子爵令嬢を気にかけていらした。そこでセレス子爵令嬢と面識がある俺が遣わされたのである。
一連の騒動に関してセレス子爵に事の経緯を説明するためだが、セレス嬢の見舞いも兼ねていた。
しかし彼女には会えなかった。
なぜなら既に王都を発っていたからである。
ドロール男爵家別荘から騎士団に保護されたセレス嬢は事件の被害者として事情聴取された後、王都のセレス子爵家に帰された。
薬を使って攫われた彼女は何も覚えておらず、また医師の診察の結果問題がなかったため、セレス嬢は療養に専念することが決まった。
てっきり王都の屋敷で過ごすものと思っていたが、帰宅した翌日には一人で領地に向かったという。
セレス子爵の話によると、セレス嬢は婚約破棄に伴い、王立学園を退学した後は領地に行くつもりだったとのこと。
加えて今回の事件により「落ち着いた場所で療養したい」と本人が希望したため、当初の予定通りに領地入りしたそうだ。
セレス子爵の様子から、本当に娘を大事にしているのだろう。親として心配する気持ちはもちろんだが、娘の意思を尊重する姿勢が伝わってくる。
セレス嬢は養子だが、親子関係は想像以上に良好なようだ。
✳︎
セレス子爵にブロウ伯爵家のことを伝えると、とても驚いていた。
事前の調べでセレス子爵家はブロウ伯爵家の不正に関与していないことはわかっていたが、セレス子爵は本当に何も知らなかった。
もしこのままブロウ家と婚約関係が続いていたら、セレス子爵家にも少なからず影響があっただろう。
セレス子爵家は長女アレキサンドライトの婚約をきっかけに、ブロウ伯爵家との付き合いが始まった。
婚約が決まった時、両家には明確な政略関係がなかったそうだ。セレス子爵はなんとか辞退したかったが、ブロウ伯爵家からの一方的な要望に対し、格下の子爵家には対抗できる力がなかった。
だから婚約に関して、アレキサンドライトに拒否権はなかった。
本人は快諾するかわりに、セレス夫妻に対して「結婚するまではセレス家とブロウ家の実際の交流を最低限に留めるようにしてほしい」と懇願したという。
婚家での自分の立場を有利にするために実家の支援を当てにする場合もあるというのに、アレキサンドライトはその道を塞いだ。そしてブロウ家のことはアレキサンドライトを通して対応する様に、使用人にも徹底したらしい。
セレス夫妻は思うところがあったが、娘の願いを黙って受け入れた。婚約を解消できない以上、娘にはできるだけ思う通りにさせてあげたいとの気持ちだったそうだ。
そのためセレス夫妻はブロウ伯爵家とは形式的な付き合いしかなかった。
ブロウ家の不法行為はセレス家と交流が始まる前から行われていたことが分かっている。セレス家側が不法行為の事実を知らなかったとはいえ、実質的な交流があれば打撃は免れなかっただろう。
幸いにしてセレス家とブロウ家の間にあった契約は、婚約破棄に伴い全て清算されている。しかもセレス家側の要望から、無関与不干渉の誓約書まで取り交わしたと聞いた。
これらはブロウ家有責による婚約破棄に対して、セレス家としての遺憾を表した結果だと貴族社会では捉えられた。
真実の愛を貫いた末に婚約破棄したことで、両家にまつわる噂は市井にまで広がっていた。世間ではセレス子爵家がブロウ伯爵家の悪事に加担していたと疑う者は少なく、社交界も同情的だ。
このタイミングもこの結果も、偶然なのだろうか?
さらにセレス嬢は以前から兄オリバー上級騎士にマリアのことを頼んでおり、マリアが希望すればセレス領に戻れる様に手配していたそうだ。
準備が良すぎるというか、前々から予定している様に無駄のない動きだ、と思ってしまう。
俺の中では、先日感じた違和感が少しずつ大きくなってきていた。
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