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婚約破棄から11日目 顛末
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婚約破棄から9日目、私アレキサンドライト・セレスは予定通りに、領地へ向かうべく王都を発った。
ドロール男爵家の手の者によって誘拐された私は、監禁された屋敷で意識がないところを兄オリバーに助け出された。
誘拐された被害者の上、監禁中のことを何も覚えていない私は捜査の役に立たない。私に外傷がなく、また私自身が帰宅を希望したため、早々に解放された。
そして傷心を癒すため、王都を離れたのである。
王都ではブロウ伯爵家とドロール男爵家の騒動で持ちきりらしい。
騎士団による一斉捜査が、人々の関心を引いたのだろう。
ブロウ伯爵家については婚約破棄の噂があったから少なからず関心を持たれていただろうし、更なる話題が投下されたことで、噂は騎士団による貴族の検挙の話に塗り替えられるだろう。
盗品の売買、詐欺、盗難、誘拐、監禁、人身売買、さらには8年前の領主殺人容疑も出てきて大変だ。
これならセレス家の婚約破棄の話題なんて吹き飛ぶだろう。
他に関係した家がないか、捜査はまだ続いているそうで、騎士団にいる兄も忙殺されていると思う。
一連の事件により王宮における貴族の勢力図に影響があるかもしれないが、私には与り知らないことなので考えるのはやめる。
一方、私が領地入りする前後で、盗賊らしき集団がセレス領に侵入したという報告があった。
警護に当たっているジーク隊が一人残らず捕らえて、幸い怪我人もでなかった。
捕らえた賊は王都で私を誘拐した者たちの仲間だったようだ。賊は王都とセレス領に人を配置し、確実に私の身柄を押さえる作戦だったらしい。
組織的に動き、背後に貴族がついていたから、今まで捕まらなかったのだろう。
領地の家令から父へ連絡して、賊は騎士団に引き渡し済である。
ドロール男爵家の件に絡む証拠として、兄が適切に処理してくれるだろう。
✳︎
婚約破棄から11日目、父から早馬で報せが届いた。
ブロウ伯爵家とドロール男爵家は事実上の取り潰しになることが決まったそうだ。
事件に直接関与してないトロイ・ブロウは親戚筋に預けられ、アメリア・ドロールは姉の嫁ぎ先に身を寄せることになる。
私は学園で見た2人の姿を思い出す。
お互いに愛を説き共にあることを誓った2人なら、真実の愛の力でこの状況を乗り越えられると信じたい。
彼らの処遇の一端は私にもある。
トロイ様もアメリア様も、今までとは違う環境に置かれて辛い思いをするだろう。
だからこそ相思相愛となった2人に賭けたのだ。どうか励まし合って、乗り越えてほしい。
トロイ様は「真実の愛」を知ったと言っていた。
私自身は、彼らの言う「愛」というものがよく分からない。
愛情ならわかるつもりだ。
両親と過ごした数年間に感じていた気持ちを思い出す。彼らが遺した言葉に、私への深い愛情を感じる。
今の家族や家人、領民に向けるものは、亡き両親に向けるものとは少し違うけれど、それでも私にとっては愛情の類いなのだと思う。
けれどトロイ様とアメリア様の言う「愛」は愛情ではあるけれど、似て非なるもののように思える。
家族ではなく、友人だけど友人とは違う相手に、まさに「特別な感情」を向けている様子だった。
私の中では友人や知人、孤児院の子供達も等しく同様だ。
婚約破棄された今でも、トロイ様やアメリア様は自分にとっては他の友人達と変わらない位置付け。友人若しくは知人の1人のままである。
学園の級友たちはトロイ様とアメリア様の行動に怒っていたけれど、私はそこまでの感情を持てなかった。2人が仲良くなろうと、私は構わなかった。
友人や知人が横並びの位置付けの中で、強いて同等ではないのがシルフィーユ様だ。輝くような存在感で、私はシルフィーユ様のお姿をつい目で追ってしまう。
ただ抱くのは尊敬に近く、恋愛の類いの気持ちではないと思われる。
自分から近づきたいとは思わない。
遠くから眺めていられるだけで、十分なのだから。
私は誰かを側に置かないから
「特別な感情」や彼らの言う「愛」が
わからないのかもしれない。
✳︎
約5年間、私にはトロイ様という婚約者がいたけれども、私は彼の側にいたという実感がない。
トロイ様は私を好ましく思っていなかったし、嫌がる彼を追いかけるようなことはしたくなかった。
トロイ様が望まぬ婚約であること、私が彼の好みではないことなど、初対面でトロイ様は私に素直に話して下さった。
その場にブロウ伯爵夫妻も同席していたけれども、婚約を取りやめることはなかった。ブロウ伯爵は一人息子のトロイ様に愛情を向けても、トロイ様の意思を尊重しない。親の意に逆らうことを認めていない。
そんな場面を目の当たりにしたせいか、私はトロイ様に対して、いつも申し訳ない気持ちになってしまう。
たとえ政略結婚をしなければならなくても、せめて婚約した相手が私でなければ、彼も嫌な気持ちにならないだろうに。
だから婚約者の義務はきちんと果たして、トロイ様の恥にならないように心掛けてきた。そしてトロイ様の負担にならないようにした結果、彼との交流は最低限になった。
できるだけトロイ様の意思を尊重し、なるべく誠実に向き合えればと思っていた。
それが「特別な感情」でないことは分かっている。
なぜなら私はアメリア様のように、トロイ様だけを追いかける情熱がなかったから。
こんな私には、やはり「真実の愛」も分からない。
だけど、あのトロイ様を動かしたくらいなのだ。ブロウ伯爵の意に逆らってまで、成し遂げようとした想いなのだ。
きっと全てを覆すくらい、素晴らしいものなのだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。次から話が動きます。
お気に入りやいいね下さった方、ありがとうございます。励みになります^_^
引き続き楽しんで頂けると幸いです。
ドロール男爵家の手の者によって誘拐された私は、監禁された屋敷で意識がないところを兄オリバーに助け出された。
誘拐された被害者の上、監禁中のことを何も覚えていない私は捜査の役に立たない。私に外傷がなく、また私自身が帰宅を希望したため、早々に解放された。
そして傷心を癒すため、王都を離れたのである。
王都ではブロウ伯爵家とドロール男爵家の騒動で持ちきりらしい。
騎士団による一斉捜査が、人々の関心を引いたのだろう。
ブロウ伯爵家については婚約破棄の噂があったから少なからず関心を持たれていただろうし、更なる話題が投下されたことで、噂は騎士団による貴族の検挙の話に塗り替えられるだろう。
盗品の売買、詐欺、盗難、誘拐、監禁、人身売買、さらには8年前の領主殺人容疑も出てきて大変だ。
これならセレス家の婚約破棄の話題なんて吹き飛ぶだろう。
他に関係した家がないか、捜査はまだ続いているそうで、騎士団にいる兄も忙殺されていると思う。
一連の事件により王宮における貴族の勢力図に影響があるかもしれないが、私には与り知らないことなので考えるのはやめる。
一方、私が領地入りする前後で、盗賊らしき集団がセレス領に侵入したという報告があった。
警護に当たっているジーク隊が一人残らず捕らえて、幸い怪我人もでなかった。
捕らえた賊は王都で私を誘拐した者たちの仲間だったようだ。賊は王都とセレス領に人を配置し、確実に私の身柄を押さえる作戦だったらしい。
組織的に動き、背後に貴族がついていたから、今まで捕まらなかったのだろう。
領地の家令から父へ連絡して、賊は騎士団に引き渡し済である。
ドロール男爵家の件に絡む証拠として、兄が適切に処理してくれるだろう。
✳︎
婚約破棄から11日目、父から早馬で報せが届いた。
ブロウ伯爵家とドロール男爵家は事実上の取り潰しになることが決まったそうだ。
事件に直接関与してないトロイ・ブロウは親戚筋に預けられ、アメリア・ドロールは姉の嫁ぎ先に身を寄せることになる。
私は学園で見た2人の姿を思い出す。
お互いに愛を説き共にあることを誓った2人なら、真実の愛の力でこの状況を乗り越えられると信じたい。
彼らの処遇の一端は私にもある。
トロイ様もアメリア様も、今までとは違う環境に置かれて辛い思いをするだろう。
だからこそ相思相愛となった2人に賭けたのだ。どうか励まし合って、乗り越えてほしい。
トロイ様は「真実の愛」を知ったと言っていた。
私自身は、彼らの言う「愛」というものがよく分からない。
愛情ならわかるつもりだ。
両親と過ごした数年間に感じていた気持ちを思い出す。彼らが遺した言葉に、私への深い愛情を感じる。
今の家族や家人、領民に向けるものは、亡き両親に向けるものとは少し違うけれど、それでも私にとっては愛情の類いなのだと思う。
けれどトロイ様とアメリア様の言う「愛」は愛情ではあるけれど、似て非なるもののように思える。
家族ではなく、友人だけど友人とは違う相手に、まさに「特別な感情」を向けている様子だった。
私の中では友人や知人、孤児院の子供達も等しく同様だ。
婚約破棄された今でも、トロイ様やアメリア様は自分にとっては他の友人達と変わらない位置付け。友人若しくは知人の1人のままである。
学園の級友たちはトロイ様とアメリア様の行動に怒っていたけれど、私はそこまでの感情を持てなかった。2人が仲良くなろうと、私は構わなかった。
友人や知人が横並びの位置付けの中で、強いて同等ではないのがシルフィーユ様だ。輝くような存在感で、私はシルフィーユ様のお姿をつい目で追ってしまう。
ただ抱くのは尊敬に近く、恋愛の類いの気持ちではないと思われる。
自分から近づきたいとは思わない。
遠くから眺めていられるだけで、十分なのだから。
私は誰かを側に置かないから
「特別な感情」や彼らの言う「愛」が
わからないのかもしれない。
✳︎
約5年間、私にはトロイ様という婚約者がいたけれども、私は彼の側にいたという実感がない。
トロイ様は私を好ましく思っていなかったし、嫌がる彼を追いかけるようなことはしたくなかった。
トロイ様が望まぬ婚約であること、私が彼の好みではないことなど、初対面でトロイ様は私に素直に話して下さった。
その場にブロウ伯爵夫妻も同席していたけれども、婚約を取りやめることはなかった。ブロウ伯爵は一人息子のトロイ様に愛情を向けても、トロイ様の意思を尊重しない。親の意に逆らうことを認めていない。
そんな場面を目の当たりにしたせいか、私はトロイ様に対して、いつも申し訳ない気持ちになってしまう。
たとえ政略結婚をしなければならなくても、せめて婚約した相手が私でなければ、彼も嫌な気持ちにならないだろうに。
だから婚約者の義務はきちんと果たして、トロイ様の恥にならないように心掛けてきた。そしてトロイ様の負担にならないようにした結果、彼との交流は最低限になった。
できるだけトロイ様の意思を尊重し、なるべく誠実に向き合えればと思っていた。
それが「特別な感情」でないことは分かっている。
なぜなら私はアメリア様のように、トロイ様だけを追いかける情熱がなかったから。
こんな私には、やはり「真実の愛」も分からない。
だけど、あのトロイ様を動かしたくらいなのだ。ブロウ伯爵の意に逆らってまで、成し遂げようとした想いなのだ。
きっと全てを覆すくらい、素晴らしいものなのだろう。
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1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。次から話が動きます。
お気に入りやいいね下さった方、ありがとうございます。励みになります^_^
引き続き楽しんで頂けると幸いです。
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