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狼狽える事無きけだもの
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少し、違和感は感じていた。隊士の数は目に見えずとも気配で分かる。人数や位置に至るまで大概表面的な上澄みの感覚ではあるが理解出来る。
「..何処かへ消えたうちの一人か、何があった?」
「わからねぇが、タダじゃ済んでねぇだろうぜ。
お前らは先に小屋の中へ入っていろ!
念のため用心をしろよ、常に警戒を忘れるな!」
「御意!!」
副隊長が威厳を示し残りの隊士に促す。戦闘力としてやはり隊士が減るのは痛い、皆剣の腕は確かの侍達に他ならない為に強い信頼常に置いているが野放しにすれば平然と油断しかねない。咄嗟の判断となれば、いつでも人数の非合理性が仇となる。
「早助、解るか?」
「..ああ」
何かが来る、重く強大な鈍い力が徐々に近付いて来るのが分かる。
「構えろ」「わかってるよ。」
足音が一歩ずつこちらへ、ゆっくりと姿を現したのは見た事のある顔だった。
「た..隊長....。」
「お前..! 左近寺か!?
どうしたその傷、誰にやられた!!」
辛うじて刀を握ってはいるが腕が切り裂かれ、足からも血が流れている。
「大変なんですよ...あいつが、あいつがっ..!」
「取り敢えず、中に入れ。医療班に手当てをして貰おうぜ、このままじゃ余りにも危ねぇ」
吾太郎が肩を貸しながら小屋へと誘う。
早助は二人を目で追う事もなく、正面をじっと見つめている。
「……お前は誰だ?」
もう一つの足跡、聞き逃さずにしっかりと鼓膜に捉えていた。左近寺を追いかけていたのも、遠くで響いた悲鳴の元凶であろう事も察しながら冷静に様子を伺っていた。
「……」
「赤鬼..にしてはでかいな。かといって他の妖でもあるまい、どちらにせよ..斬る事には変わりないがな」
刀を抜いて走る、鬼とは幾度となく剣を交えてきた。
武器は単純明快な力、金棒を携えようと動きは変わらない。取るに足らない戦闘だ、いつもと同じならば。
「……!」
金棒を振り上げる、重量から察するに刀では止めきれないと判断し後ろへ踏み込みカラダを退げる。金棒は誰もいない山の土へと振り落とされ、平面の床に傷を付け深く抉る。
「あの様子であれば、動きは遅いか..だが金棒の大きさを見れば機動力がありそうだ。迂闊に近付けば深手を追う可能性があるな..」
幅の大きな金棒は打撃を与える範囲が大きく、振り方によって様々な打撃を生み出せる。最悪投げ飛ばし、飛び道具にする事すらあり得る、確実に今までの赤鬼とは異なる強靭な種だ。
「おそらく一撃でも受ければ致命傷だろう。
ならばこちらも一太刀に力を込めるとするか..」
鬼の振り回す金棒をギリギリで躱しつつ懐に潜り込む
「……?」
「..やはりな、金棒の振り幅に合わせると近接がお留守だ。臨機応変は不可能だったか」
鬼の土手っ腹目掛けて鋒を突き立てる。肌は金棒のように耐久は効かず、飛び道具刃を簡単に受け入れた。
「……!」
刀に腹を貫かれた鬼は金棒を手放し吐血して動きを止めた。
「..所詮は鬼か」
胸を蹴飛ばし刃抜いた。支えを失った鬼の身体はゆっくりと崩れ音を立てて床へ落ちた。
「他愛も無い..」
隊士の保全に戻る、本域は今では無い。
「……」「…!?」
気配が逆立つ、腹から血を流し尚も息をしている。
「..何故生きている?」
金棒を握り直し地に再び足を付け、鼻息荒くこちらを睨みつけている。鬼ではない、酷く成り下がった野性の獣《けだもの》だ。
「……!」「くっ..!」
甘くみていた訳では無い。ただ不覚にも、あの一撃で仕留めたと思っていた
「いつまでやってんだ!?
..っておい、こっち向かって来てるじゃねぇかっ!」
文字通り鬼気迫るタイミングで吾太郎が口を挟む。その勢いのまま吾太郎は一切怯む事なく剣を抜き、駆け寄る鬼の片足の甲を突き刺し地面に固定した。
「さっさとやれ!」
「..言われなくてもだ」
刀を構え疾る早助にカーソルを合わせるように鬼が金棒を振る。このまま近付き相対すれば確実に当たる軌道だが、速さの利が勝る。金棒の一撃を受けるより前に赤鬼の首を斬り落とし、身体の機能を停止させる。結局は妖、その辺の河童とさして変わらない。
「死んだか?」
「首はねりゃ大概死ぬだろ、それより早く来てくれ!
左近寺の様子がおかしいんだ!」
「今度は何だ..」
慌てる吾太郎と共に小屋へ入ると、椅子に縄で身体を括り付けられた左近寺が唸りを上げ暴れていた。
「..何だこれは」
「イカれてるだろ?
医療班が傷の治療をしようと近付いたら突然騒ぎ出して襲い掛かって来たんだ。」
「..狂気だな、鬼のようだ」
声にならない声を上げ、狂乱に身を委ねている。
「仕方ない、斬るか..!」
左近寺の頭上に振り下ろす。
「..何処かへ消えたうちの一人か、何があった?」
「わからねぇが、タダじゃ済んでねぇだろうぜ。
お前らは先に小屋の中へ入っていろ!
念のため用心をしろよ、常に警戒を忘れるな!」
「御意!!」
副隊長が威厳を示し残りの隊士に促す。戦闘力としてやはり隊士が減るのは痛い、皆剣の腕は確かの侍達に他ならない為に強い信頼常に置いているが野放しにすれば平然と油断しかねない。咄嗟の判断となれば、いつでも人数の非合理性が仇となる。
「早助、解るか?」
「..ああ」
何かが来る、重く強大な鈍い力が徐々に近付いて来るのが分かる。
「構えろ」「わかってるよ。」
足音が一歩ずつこちらへ、ゆっくりと姿を現したのは見た事のある顔だった。
「た..隊長....。」
「お前..! 左近寺か!?
どうしたその傷、誰にやられた!!」
辛うじて刀を握ってはいるが腕が切り裂かれ、足からも血が流れている。
「大変なんですよ...あいつが、あいつがっ..!」
「取り敢えず、中に入れ。医療班に手当てをして貰おうぜ、このままじゃ余りにも危ねぇ」
吾太郎が肩を貸しながら小屋へと誘う。
早助は二人を目で追う事もなく、正面をじっと見つめている。
「……お前は誰だ?」
もう一つの足跡、聞き逃さずにしっかりと鼓膜に捉えていた。左近寺を追いかけていたのも、遠くで響いた悲鳴の元凶であろう事も察しながら冷静に様子を伺っていた。
「……」
「赤鬼..にしてはでかいな。かといって他の妖でもあるまい、どちらにせよ..斬る事には変わりないがな」
刀を抜いて走る、鬼とは幾度となく剣を交えてきた。
武器は単純明快な力、金棒を携えようと動きは変わらない。取るに足らない戦闘だ、いつもと同じならば。
「……!」
金棒を振り上げる、重量から察するに刀では止めきれないと判断し後ろへ踏み込みカラダを退げる。金棒は誰もいない山の土へと振り落とされ、平面の床に傷を付け深く抉る。
「あの様子であれば、動きは遅いか..だが金棒の大きさを見れば機動力がありそうだ。迂闊に近付けば深手を追う可能性があるな..」
幅の大きな金棒は打撃を与える範囲が大きく、振り方によって様々な打撃を生み出せる。最悪投げ飛ばし、飛び道具にする事すらあり得る、確実に今までの赤鬼とは異なる強靭な種だ。
「おそらく一撃でも受ければ致命傷だろう。
ならばこちらも一太刀に力を込めるとするか..」
鬼の振り回す金棒をギリギリで躱しつつ懐に潜り込む
「……?」
「..やはりな、金棒の振り幅に合わせると近接がお留守だ。臨機応変は不可能だったか」
鬼の土手っ腹目掛けて鋒を突き立てる。肌は金棒のように耐久は効かず、飛び道具刃を簡単に受け入れた。
「……!」
刀に腹を貫かれた鬼は金棒を手放し吐血して動きを止めた。
「..所詮は鬼か」
胸を蹴飛ばし刃抜いた。支えを失った鬼の身体はゆっくりと崩れ音を立てて床へ落ちた。
「他愛も無い..」
隊士の保全に戻る、本域は今では無い。
「……」「…!?」
気配が逆立つ、腹から血を流し尚も息をしている。
「..何故生きている?」
金棒を握り直し地に再び足を付け、鼻息荒くこちらを睨みつけている。鬼ではない、酷く成り下がった野性の獣《けだもの》だ。
「……!」「くっ..!」
甘くみていた訳では無い。ただ不覚にも、あの一撃で仕留めたと思っていた
「いつまでやってんだ!?
..っておい、こっち向かって来てるじゃねぇかっ!」
文字通り鬼気迫るタイミングで吾太郎が口を挟む。その勢いのまま吾太郎は一切怯む事なく剣を抜き、駆け寄る鬼の片足の甲を突き刺し地面に固定した。
「さっさとやれ!」
「..言われなくてもだ」
刀を構え疾る早助にカーソルを合わせるように鬼が金棒を振る。このまま近付き相対すれば確実に当たる軌道だが、速さの利が勝る。金棒の一撃を受けるより前に赤鬼の首を斬り落とし、身体の機能を停止させる。結局は妖、その辺の河童とさして変わらない。
「死んだか?」
「首はねりゃ大概死ぬだろ、それより早く来てくれ!
左近寺の様子がおかしいんだ!」
「今度は何だ..」
慌てる吾太郎と共に小屋へ入ると、椅子に縄で身体を括り付けられた左近寺が唸りを上げ暴れていた。
「..何だこれは」
「イカれてるだろ?
医療班が傷の治療をしようと近付いたら突然騒ぎ出して襲い掛かって来たんだ。」
「..狂気だな、鬼のようだ」
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「仕方ない、斬るか..!」
左近寺の頭上に振り下ろす。
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