引きこもりの俺の『冒険』がはじまらない!〜乙女ゲー最凶ダンジョン経営〜

ばつ森⚡️8/22新刊

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1-3 ラムレイ辺境伯領グレンヴィルより

41 辺境伯軍の失敗・前

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「結構、まずいみたいですよ」


 今日も今日とて、朝早くから起こされた俺は、不機嫌を隠さずにオリバーを睨みつけた。
 オリバーは俺の寝起きの機嫌の悪さを知っているので、ものともせずに言葉を続けた。

「アッカ村もレンベルグの町も、『辺境伯の依頼だ』という理不尽な理由で、かなり搾取されているようで、民たちから不満の声があがってるみたいです」
「搾取って……飯?」
「そうです。食料が主ですが、野営の物資などもです。わずかな金銭で信じられない量の食料を取られて、寝床を明け渡せと民家や宿屋を脅したり、ひどいみたいです。アッカ村においては、村人の食料が底をついて、その日採れた野菜などしか食べるものがない状態だとか。まあ、今が夏でまだよかったですが、横暴にもほどがあります!」
「あー なんかあいつらやりそー」

 貴族全員がそうだとは思わないけど、オリバーやフェルトの話を聞いていると、貴族っていう肩書きがあるだけで、この国ではなんでもまかり通るような雰囲気がある。
 なにをしてくれるでもないのに、どうして自分たちが偉いと思うんだろうなあ。
 村や町は心配だ。
 ベラんちも最近は大きく商売してるみたいだし、目をつけられてないといいんだけど。
 ま、でも、やつらが来てから、実はもう1週間――

「さすがにそろそろ帰るんじゃない?」
「ですね」

 ダンジョン攻略は、第一階層の半ばと言ったところ。
 冒険者たちも、まったく金貨が支払われない様子に、愛想をつかしどんどん集まらなくなってきていた。
 スクリーンを確認してみれば、冒険者たちは10人ちょっとしかいない。ヒストリフの怒り顔はもうデフォルトだ。
 そろそろ、痺れを切らして総攻撃を仕掛けてくるだろう。

 特にすることもなかった俺は、横目でスクリーンを確認しながら、第4階層の設置にかかっていた。
 今回の遠征で、なんと経験値が貯まったのだ!
 
 一応、オリバーと2人で画面は確認しているが、フェルトなんて後ろの寝椅子で本を読んでくつろいでいた。
 そう――敵は大所帯で来たものの、あんまり進展がないので、なんにもすることないんだよね。

「第4階層はどんなかんじにするんですか?」
「砂漠っていうか、熱い階層にしようかなと思うんだけど、どう思う? 水責めの後は、火責めというか」
「うーん、でもそれだと、前の階層に戻って、水取りに行けちゃいません?」
「でもどちらにしろ、お前らウォーターとかいう魔法あるじゃん。いずれは休憩所的な場所も作らないとだめだし」
「あ、でもだんだん余裕出てきたんですね。そろそろ『飴』対策もしないといけないですよね。でも……砂漠ってすごいですね。作れるんですか??」
「階層全部をぶち抜いて、砂漠のフィールドにしようかと思ってんだよ。前のパーティと鉢合わせないように、蜃気楼のモンスターを召還してさ」
「ええッ! そんなこともできるんですか?? それってもう建設っていうか……異界ですよね」

 驚くことなかれ、実は『本』に書いてあったのだが、異界とリンクする方法があるのだ。
 〝異界〟と言っても異世界というわけではなく、創造したフィールドを召還する……のような形だ。ボス部屋の仕組みや、モンスターの召還契約とシステムは同じで、箱庭のようなものを切り取って使う……という仕様だ。
 常々思うけど、土壁さんと宝石さんは本当にチートだ。

 このダンジョンはそこそこ広い。
 ざっと歩いたかんじの目測だが、東京ドームくらいの広さはありそうだ。
 灼熱の砂漠の『異界』を召還し、境目だけ蜃気楼でぼかす。永遠に続くような砂漠でさまよいながら、下の階を目指さなくてはいけないのはどうだろうかと思ったのだ。
 途中、古代遺跡のような迷路部分があってもいい。
 それは『遮熱』という意味でも休憩場所にもなるし、その中ではその中で迷路があれば、時間稼ぎにもなる。廃墟の町……なんてものがあってもいいかもしれない。

「あとさー。繁殖場のことなんだけど、あれ、効率性を重視して、壁から尻が出てるかんじになってるだろ?」
「そうですね。ゴブリンは穴さえあれば、ほかは特に見てもいないですもんね」
「上半身もったいなくない?」
「――はい?」
「や、せっかくおっぱいとか口とかあるじゃん。壁の逆側に。あれ、なんかに使えないかなー」

 いろんなタイプの顔つきの半裸の男たちが、無防備に壁に並んでいるのだ。男が性対象のやつから見たら、楽しくないかな。怖いか……?
 穴が口しかないのが難点だが、ちょうどいい位置に頭があるので、俺もたまに口を使わせてもらったりする。

「おっぱ…………こほん、これ以上冒険者になにかを強いるのは酷なのでは?」
「うーん。さすがのオリバーでもそう思うか」
「…………あれ……俺ってどんな立ち位置でしたっけ」

 俺はちらりとフェルトのほうを確認する。
 フェルトは本を読んで眠くなったのか、サイドテーブルに本を置きうとうとしており、オリバーと俺の会話はまったく聞いていない様子だ。
 強姦相手の部屋で居眠りできる図太さはすごいなと思う。
 でもこっちが真剣に冒険者のおっぱいの活用法に頭を悩まされてるっていうのに、暇そうにしてるのにイラッとした。

(…………懲らしめよう)

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