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1巻
1-3
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ケイトが慌てたような声をあげ僕に腕を伸ばしたときには、そこにあったはずの壁がなくなり、ぽっかりと、黒い闇があるだけだった。
すでに、よろけている僕は、体重を支えてくれるはずの壁が消失したことで、必然的にその闇の中に放り出された。
「……へ?」
目を丸くして固まる僕の手を、ケイトがガシッと握ってくれた。
本当になんて頼りになる従者なんだ、と思った瞬間、僕の体重が重すぎたのか、なんとケイトは逆に僕に引き寄せられた。
「ええ!?」
僕が驚きの声をあげる中、ケイトもさすがに焦った顔をしていた。
「あ、ケイトでも焦ることあるんだな」なんて、驚きすぎてよくわからなくなった僕の頭が、現在起きている事象を処理するのを諦めるのを感じながら、僕たちは、その闇に吸い込まれるように落ちていったのだった。
「ぎゃああああああああああ」
◇ ◇ ◇
「いってえ、なんだここ……」
ケイトが痛がっている声を聞きながら、僕は青い空を仰いでいた。なぜなら、ケイトと同じく僕も倒れていたからだ。起き上がれないほど全身が痛い。
あの暗闇の中は、暗すぎて全容はわからなかった。だが、滑り台のような、人がちょうど一人入れるくらいの細い管になっており、僕とケイトはその中をひたすら、ぐるぐると滑り落ちてきた。
その管が曲がるたびに、僕とケイトは頭を打ち、肩を打ち、全身のありとあらゆる箇所を打ちつけながら、文字どおり転がり落ちた。
最終的に、この空間に放り出された……という訳だ。
(空が綺麗だな。今までは王妃教育が忙しすぎて、ゆっくりする時間なんてなかったからな……。こうして、青空の下、花畑で横になるなんていつぶり……ん? あれ?)
「――え、空?」
「空ですね。ここどこですか」
驚きのあまり僕は勢いよく体を起こし、全身を走り抜けた痛みに硬直した。もしかしたら服の下は痣だらけかもしれないと思いながら、痛む体にむち打って、僕はきょろきょろと辺りを見渡す。
まるで雨上がりの朝のような澄んだ空気の中、目の前に広がっているのは、永遠に続いているかのように見える花畑だった。
一面に、淡い色の花が咲き乱れ、ちらちらと舞う蝶の羽が見えた。まるで春の穏やかな景色のように、青空が広がっている。
「綺麗なところだな……」
「ええ」
ぼんやりと、その美しい景色に見蕩れている僕とは違い、ケイトの声はピリピリとした緊張感を孕んでいた。辺りを見渡す眼光は、鋭い。
おそらく僕たちは、地下五十階層以上あると言われるダンジョンの、未解明の部分に足を踏み入れてしまったのだろう。
しかし、あんなにモンスターたちが蔓延っていた一階層の奥に、こんなに美しい場所が隠されているなんて思いもしなかった。
僕は夢見心地で辺りを見渡した。そして、ぽやんとした思考のまま、ケイトに声をかけた。
「お昼に、しよっか」
「ほんと図太いですね。神経どこいったんですか」
そ、そんな言い方ないと思う。
ついに『お尻を痛めたがめつい腰ぬけのへっぽこ』という僕の評価に、図太いまで増えてしまった。
この図太いという言葉の、本当に太く、たくましい感じが伝わるだろうか。太った平民のおばさんを連想してしまう『図太い』という言葉が、この気高く美しい僕を形容する言葉として、適切であるはずがない。
むしろ、今までの旅を経て、僕は自分のことを打たれ弱いとすら思い始めているのだ。
こんなに繊細な僕に『図太い』という評価は受け入れられない。僕が恨みがましい目で見ていることに気がついたのか、ケイトがすべてを悟ったように口をひらいた。
「こう、すべてをまるっと含めて、最終的に図太いにたどり着くんですよ」
一体なにがまるっと含まれて、最終的にその結論に至るのか定かではないが、ケイトがそう思っているなら、もしかするとそうなのかもしれない。
よくわからないけれども。もしかしたら、僕も、ケイトのように二十五歳になれば、わかるのかもしれないなあなんて、半ば現実逃避をしながら、僕はうきうきと弁当を広げた。
「……そういうところですよ」
呆れた声を出すケイトを見ながら、「え? どういうところ?」と、首をかしげたら、もう、もはや話してもくれなかった。
あれ、僕はもしかして、ケイトに嫌われてるんだろうか。
もし今の状況で、ケイトに嫌われてしまったら、僕はもう生きていける気がしない。
現実的にも、経済的にも、物理的にも、経験的にも、僕は今、完全にケイトに依存している。そこまで考えて、ハッとした。
(僕は幼なじみのアルフレッドにすら、あんな風に嫌われて……)
もしゃもしゃとサンドイッチを食べながら、僕は幼いころ、まだアルフレッドと仲睦まじかったときを思い出した。
きっかけがなんだったのかは、思い出せない。だがある日ケンカをして、そのまま僕とアルフレッドの関係は、戻ることはなかった。
あのときの僕には、なにが悪かったのか、なにをしてしまったのか、とアルフレッドに尋ね、歩み寄る勇気がなかった。
ただ、時間が解決してくれると思っている間に、王妃教育が多忙すぎて、一緒に遊ぶ時間はどんどんなくなり、そのまま気まずい想いだけを抱え、婚約破棄という結末を迎えてしまった。
(だめだ。また同じことを繰り返しては……)
なぜか緊張して、とくとくと心臓の音が速くなった。
大切な人には、自分にとってその人が大切な人であるということを、きちんと伝えなければならないのだ。もう僕は、同じ失敗は繰り返したくない。
僕は拳を握りしめ、意を決して、ケイトに言った。
「ケイト、僕はお前が好きだ」
「――は?」
「なにか僕に悪いところがあるのなら、遠慮なく言ってくれ」
「……はあ。じゃあ言いますけど、鼻に、サンドイッチのタマゴついてますよ」
僕はゆっくりと、慌てることなく、お弁当の包みに入っていたナプキンを取り出した。そして、気品ある優雅な仕草で、そっと鼻をぬぐった。ちらりとナプキンに目をやると、たしかにそこには黄色いタマゴがついていて、僕はふっと笑みを漏らした。
――って!!
「そういうんじゃ、ないんだけど!」
僕がキレ気味にそう言うと、ケイトは、ぶっと吹き出した。
あはは、とケイトがあまりにも無邪気に笑うから、僕はぽかんと口を開けて固まってしまった。それから、ひとしきり笑い終えたケイトが爽やかに言った。
「オレも弁当、食べることにします」
なんだよ、結局ケイトだってお昼じゃないか、という文句は言わなかった。ごはんは一緒に食べたほうがおいしいと思うから。
いつになくケイトがにこにこしているのは、もしかすると、この穏やかな景色のおかげかもしれない。僕とケイトは、その花畑の中で向かいあって、ゆっくりとサンドイッチを堪能したのだった。
◇ ◇ ◇
お昼を食べ終わった僕たちは、花畑を散策し始めた。
いくら綺麗なところとはいえ、帰り道がわからない以上、僕たちはダンジョンで遭難したに過ぎない。
花畑には、食べられそうな植物や実もちらほらあったが、こんなところで一生を過ごしたら、僕はいつしか妖精にでもなってしまいそうだ。
そんなことを考えていたとき、遠くの花々の間で、小さななにかがキラッと光ったような気がした。目を凝らすと、大きな硝子細工のようなものがあった。
「あれはなんだろう?」
僕がそう言ってその方向を指差すと、ケイトがつられて視線をやった。
少しの間相談し、見に行ってみようということになり、僕はケイトの背中に隠れながら、ゆっくりとその透明ななにかに近づいていった。
近くで見るとそれは硝子細工ではなく、クリスタルでできた灯籠のようだった。明かりを灯すであろう場所には、手のひらに乗りそうなサイズの、羽の生えた女の子が眠っていた。
僕は口を押さえて感嘆の声を上げた。
「うわあ、もしかしてこれが妖精か? すごい。本当に?」
「すごいですね。オレもはじめて見ました」
シンプルな白いドレスから突き出ている、薄く透けた羽は、光を反射してさまざまな色に輝いているように見えた。すよすよと、丸まった背中が、ふくらみ、しぼみ、ふくらみ、しぼみ、と呼吸している様子は、僕を幸せな気持ちにしてくれた。
ケイトも興味津々で妖精を見ていたが、心なしか目元が優しげに和らいでいる。ケイトが僕のほうを見たので、僕は、起こさないようにしないとね、という顔でケイトに微笑んだ。
そのとき、優しい風が辺りをそよぎ、僕たちのもとにふわりふわりと花びらを運んできた。その一枚が僕の鼻先をかすめて――と思ったときにはもう遅かった。
「へ、へぐ、ぶ、ぶあっくしょ!!」
「……」
「わああ! 人間!? どうやってこんなところに??」
僕のくしゃみで、妖精を起こしてしまった。
申し訳ないと思ったが、生理現象なのでできれば許してほしい。隣でケイトが、白い目をしているような気がしたが、そちらは見ないように心がけた。
大慌てで飛び起きた妖精は、ピューッと上に飛び、僕たちと距離を取った。そういえば、妖精を誘きだして捕まえて売ろうとする人間がいると聞いたことがある。だとすれば妖精はきっと、僕たちがいてすごく驚いたはずだ。
現に、その妖精は信じられないものを見るように、僕とケイトの顔を交互に見ていた。あまりにも驚いた表情をしているから、僕は再び、ものすごく申し訳ない気持ちになった。
「起こしてしまって、すまない。その、くしゃみが出てしまって……」
悪いことをしたときは、すぐに謝る。
それはとても大切なことだと、僕は学んだのだ。
妖精はいまだ驚いているようで、微動だにしない。僕はだんだん心配になってきて、「大丈夫か?」と尋ねた。
次第に状況を理解したのか、僕たちが害をなすつもりがないとわかったのか、妖精は少しだけ近づいてきてくれた。
だが、なぜか疑うような視線でケイトのことをじっと見ていて、それにつられるように、ケイトも妙に鋭い瞳で妖精を見つめ返していた。
二人の間に走る緊張感が漂ってきて、僕は首をかしげた。このかわいい妖精は、どうしてこんなにケイトのことを警戒しているんだろう。
そう考えたとき、僕は先日のゴライアスの一件を思い出し、ハッとした。
(ま……まさか、ケイトは妖精をも食べようとしているのか……?)
そんな恐ろしい考えが頭を過ったが、いくらケイトが食いしん坊だとはいえ、さすがにそんなことはないだろうと僕は首を横に振った。
しかし現実として、妖精はケイトに怯えているように見える。僕は慌てて、ケイトの前で手を広げ、念のため注意喚起をしておくことにした。
「け、ケイト。妖精は……食べちゃだめだぞ」
「は?」
「は?」
ケイトと妖精と両方ともが、ぽかんとした顔で僕のことを見た。
だが、今、この状況を把握しているのは僕しかいないはずだ。この切迫した危機的状況を、僕の俊敏な判断と、叡智によって華麗に回避できたことに、ほっと胸を撫で下ろした。
ケイトはなぜかいつもの死んだ魚のような目で僕のことを見ていたが、僕はくるりと妖精に向き直った。
近くで見ると、小さな顔に、つんとした鼻と小麦色の大きな瞳がついていて、本当にかわいらしい顔立ちだ。僕が好奇心を抱いていることがわかったのか、ムッと気合をいれるような素ぶりをして、妖精は僕に話しかけた。
「な、なにものなのかしら! こんなところにたどり着くだなんて」
「ここは一体どこなんだい? 僕たちも気づいたらここにいて、困っているところだったんだ」
妖精はそのかわいらしい顔に似合わず、眉根を寄せながら、「気づいたらここにー?」とケイトをキッと睨み、訝しげに僕を見た。
だが、断じて僕は嘘などついていない。僕が壁の中の滑り台のようなものでここに来た、と説明すると妖精は驚いた顔をした。
「あの通路はよっぽど心の綺麗な人間じゃないと……って、な、なんて綺麗な魂なの!?」
「え、僕?」
僕の周りをくるくると忙しなく飛び回りながら、妖精は僕のことを観察していた。だが、綺麗な魂とは……なんだろうか、と首をかしげる。
現に僕は、婚約者だった幼なじみに故国を追放されるという、要約すれば、野たれ死んでほしいとまで思われている存在だ。そんなことを言ってもらえるほど、僕の魂が綺麗だとは思えなかった。
しゅん、と萎んでいると、妖精は首をかしげた。
「え、なんかあったの?」
僕は泣きそうになりながら、「幼なじみだった婚約者に、野たれ死ねと言われて国外追放になったんだ」と言うと、妖精は若干引いたようで、「それは悲惨ね」と、顔を引き攣らせた。こんなにかわいらしい見た目からは想像できないほど、妖精が顔を引き攣らせているのを見て、ふと僕の中に考えが浮かんだ。
幼なじみだった婚約者に野たれ死ねと言われて、国外追放になるという事象はかなり悲惨だな、と。
僕がもし、幼なじみだった婚約者にそう言われて、国外追放になった人に会ったら、たしかに顔を引き攣らせて「それは悲惨だな」と思うに違いない。
今のところ、そんな可哀想な人に出会ったことはない。そんな可哀想な人がいたら、その人はもう生きる希望を持てないかもしれない、と思ったところで気がついた。
――僕のことだった。
僕の目の中から、湧き出る温泉のようにぶわあと涙が広がって、そしてだーっと滝のように流れ落ちた。
たしかに今の僕は自分が子供のころに願ったような状態ではない。
しかし、他人が引くほど悲惨な状況にあるんだという事実を客観的に知ってしまったことで、僕の中にあった悲しみが、さらなる質量をもってズンとのしかかってくる。
これは、ごはんを食べているときに、鏡を見ながら食べると倍の満腹感を得られる、と小太りなコックのジョンが言っていた事象に似ているかもしれない。
「わあああ! え!? え! ごめん! なんか、ごめんって!!」
「え、エマ様!?」
妖精とケイトが慌てている声が聞こえたが、僕の視界はとぷとぷとあふれ出す涙によって遮られていて、二人の顔はまったく見えない。
その間にも「うっうっ」という僕の嗚咽にあわせて肩が上下し、涙が止まらなかった。
「か、可哀想! あなた……可哀想だわ!」
泣きやまない僕を見かねて、ケイトがハンカチらしき物を取りだしたようで、涙は徐々にそのハンカチに吸い取られていった。
少し見えるようになった視界の中、心配そうな顔をしたケイトと「あわわ」といった顔で焦りながら飛び回っている妖精が見えた。
僕は悲惨な状態にあって、いまだにその悲しみの中にあるけど、こうして心配してくれる従者がいることや、僕が泣くのを見て慌てる妖精がいることは、それでもやっぱり幸せなことかもしれない、と少し思った。
そして、いまだ慌てている妖精は、滝ではなく小川くらいの涙の流れになった僕に言った。
「か、加護あげるから。ね、泣きやみなさい。私の加護すごいから! ね! すごいやつだから!」
必死で伝えてくる彼女には悪いが、加護というものがなんなのかわからずに、僕は首をかしげた。
彼女は小さく笑うと、僕にふうっと優しく息を吹きかける。すると、僕の周りがキラキラと細かい白い光で覆われ、ふわりと優しい花の香りに包まれた。
目を凝らすと、まるで夢でもみているかのように、僕の周りを光でできた小さな花たちが囲んでいた。
「わあ、綺麗だ……」
僕の涙はいつしか止まっていた。
それを見た妖精とケイトが、ふう、と安心したような息を吐くのがわかった。加護がなんなのかはわからなかったが、なんだか心が軽くなったような、なにかに守られているような、そんな不思議な感覚だ。
そして、妖精はその小さな腕を、僕とケイトに向けて、ふわっと広げた。
「私は妖精王なのよ。加護くらいならあげられるわ! あなたは大変な目にあったみたいだけど、これからの旅路に幸が多からんことを、ここから祈っているわ」
まさに妖精王の名を感じさせる、慈愛のこもった微笑みだと思った。
妖精王は、包みこむような笑顔でそう言って、ふと、ケイトに視線を移した。
ほんの一瞬前まであんなに優しい顔をしていたのに、突然スンと真顔になって、妖精王はケイトを睨んだ。
「――あなたの魂は、普通」
「……そうですか」
その次の瞬間、視界が真っ白になった。ケイトは慌てて僕の手を握り胸の中に引き寄せ、ぎゅっと強く抱きしめた。
僕は目をつぶっていたので、なにが起きているのかわからなかった。それでも、あのかわいらしく優しい妖精王のすることだから、怖いことではないような気がしていた。
そして、目を開けるとそこは――
「だ、ダンジョンの入り口?」
「……みたいですね」
僕たちは、無事、ダンジョンから出ることに成功したようだった。
◇ ◇ ◇
「エマ様。どうしても確認したいことがあるんで、ちょっとだけ待っていてもらえますか?」
ケイトがそう言い出したのは、ダンジョンで泥だらけになった服を着替えようと、宿屋に戻ってきたあとだった。
ぽかんとしている僕に向かって、「結界を張っておきますから、絶対に部屋から出ないでください。いいですね」と、オーガのような顔で確認し、闇魔法らしき煙を左手からぶわっと出すと、そそくさと部屋から出ていってしまった。
しきりに「なんか嫌な予感がする」とブツブツぼやきながら出ていったケイトを思い出し、一体なにを確認しに行ったんだろうと考えていると、トントンと窓を叩く音がした。
「エ~マ~ちゃん」
「……え?」
次いで甘い声色で名前を呼ばれて、僕は振り返った。
宿の窓から、見覚えのある赤茶色の髪が覗き、その不思議な青紫色の瞳と視線が交わった。僕の中にぶわっと喜びが込みあげ、衝動とともに名前が口をついて出た。
「テオ!」
「やっぱりエマニュエル様だった」
よっ、と言いながら、テオは軽々と窓枠を飛び越えて、ふわりと中に入ってきた。テオが降りたつときにトンと床が鳴る音を、幼いころから、僕は何度も聞いたことがあった。
「お前はいつも窓から忍び込んでばっかりだな」
一瞬、ケイトのオーガのような顔が頭を過ったが、僕は部屋から出ていないわけなのだから大丈夫だろうと思い直した。
それに、相手はテオドールである。王妃教育でなかなか外出がままならなかった僕は、商家の息子であるテオがうちに訪れるたびに教えてくれる外国の話を、いつも楽しみにしていた。
身分差もあったが、二人だけのときは敬語も使わずに話す仲だ。アルフレッドとはまた違う、僕の大切な幼なじみなのだ。
「まさかペルケ王国でも忍び込むことになるなんて、思わなかったよ」
いつもと変わらない軽口に、ほっとしてしまう。
テオに限ってそんなことはないと思っていたが、やっぱり婚約破棄されてしまった自分のことをどう思うかは、少し気になっていた。
テオがにこっと微笑んで、僕も自然と笑っていた。
だけど、僕を見たテオの顔が、だんだんと真剣なものになる。じっと綺麗な瞳で見つめられて、ドキッと心臓が跳ねた。テオはそっと僕の手を取り、尋ねた。
「――大丈夫?」
「え?」
「無理してるでしょ。辛かったとき、一緒にいられなくて……ごめん」
切なげに細められたテオの瞳を見て、僕は息を呑んだ。
だけど婚約破棄だなんて、普通は想像だにしないはずだ。
用意周到なケイトはなにかを察知していていろいろと用意してくれたが、テオが気がつかないのは当たり前のことで、謝る必要などどこにもない。
テオは母上が亡くなられたとき、僕のことを心配して、夜に僕の屋敷に忍び込んできたことがある。あの頃は、「大丈夫だ」とテオに言えるまで、僕はとても長い時間を費やした。テオの中で、僕はまだあの頃のように、幼く、頼りないままかもしれない。
でも、今は違う。
僕はきゅっとテオの指先を握り返しながら、言葉を返す。
「追放されてまだそんなに経っていないというのに、王都のことなんて忘れてしまうくらい、いろんなことがあったんだ……」
今までの人生はなんだったんだと思うくらい、目まぐるしい数日間を思い出して、僕は一瞬遠い目になった。でも、国外追放になったときよりも、ずっと心が和らいでいた。
だから目の前で心配そうな顔をしているテオにだって、僕はちゃんと言えるはずだった。
「でも僕は大丈夫だよ、テオ。そこそこ元気でやってる」
「エマニュエル様……」
幼なじみに国外追放を宣告されたことは悲しかったけど、僕が本当に悲しかったのは、今まで国のためにと思って頑張ってきたことを否定された気がしたからだったように思う。
微笑みながらテオを見ると、商人が品物を鑑定するときのように、鋭い眼光でじっと観察されて、少し怯む。
でも僕は別に嘘をついているわけではない。笑顔でテオをじっと見つめていると、ふっとテオも笑みをこぼした。
「そう……それならよかった。エマニュエル様……ううん、エマ、なにかおいしいものでも食べにいこっか?」
二人でいるときのような軽口に戻ったテオに、僕は嬉しくて胸の奥が熱くなった。……だが、ケイトのオーガのような顔が頭を過り、一瞬で期待は潰えた。
「い、いや、だめだ。ケイトに部屋から出るなと言われているんだ」
「やっぱりあいつか……ねえ、エマ。ケイトにはなにもされてないんだよね?」
急に怖い顔になったテオに、僕はビクッと体を震わせた。
なにも、とはなんだろうと考えたとき、湖でのケイトの熱っぽい視線を思い出しそうになり、その思考をかき消すように手をパタパタと扇いだ。
ケイトが屋敷で働くようになってから、テオは僕に対して事あるごとに「ケイトに注意しろ」と忠告してきた。
僕にとっては頼りになる従者でしかないが、テオはケイトのことを危険だと思っているようなのだ。「なにもされてないよ」と、くすくす笑いながら言うと、テオはじっと疑いの視線で僕のことを見つめてくる。
「そう? でも、エマ……あいつは絶対になにか隠してると思う。今回のことだって、こんな速さでこの街までたどり着いてるだなんて、思ってもみなかったよ」
真剣な顔でそう言われて、僕は、うーんと首をかしげた。
旅の間、ケイトのことで気がついたことと言えば、ずいぶんと高度な闇魔法が使えることぐらいだった。
心優しいテオがこんなに怪しんでいるのだから、もしかしたら僕が知っていること以外に、なにかケイトは隠しているのだろうか。
僕はまだ屋敷にいたころのことに思いを馳せる。
ケイトの屋敷での勤務態度は普通に真面目だった。というか、かなり真面目だ。
爺や侍女たちの信頼は厚く、覚えも早く、要領もいい。なぜか僕に当たりが強いという以外は変なところなんて思いつかない。
だがさっきテオは「なにもされてないか」と心配そうに僕に確認した。つまりテオは、ケイトが僕に対してなにかよからぬことを企んでいると思っているのだ。
だが、現状、僕は国を追われ財産も奪われた上に、お尻を痛めたへっぽこだと思われている。その僕に唯一残っているのは、「メロン農家になりたい」という誰にも言ったことのない夢くらいしかない。
(なにかを企むにしたって、僕から奪えるものなんてなにも……)
そこまで考えて、僕はハッとした。
僕はとある可能性に行き着いてしまった。ひやりと背筋を嫌な感覚が走る。
もしもこれがテオの危惧することだとしたら、それは由々しき事態であった。その考えに囚われてしまった僕は、どうしようどうしようと焦ってしまう。
じわりと手に汗が滲み、喉が鳴った。
(まさか……ケイトもメロン農家に――!?)
僕は思わず、バッと両手で口を押さえた。
脳内で雷が炸裂したかのような衝撃を受ける。
ずっと僕のことを助けてくれていると思っていたケイトが、将来のライバルになる可能性を秘めていたというのか。そう考え出したら、もう次々と考えがあふれて止まらなかった。
よく考えてみれば、ケイトはことあるごとに、ポケットからオリジナリティあふれるメロンキャンディーを出してきたではないか。あれはもしや、ケイトの創作だったのかもしれない。
僕は拳を握りしめ、がくっとうなだれた。
(好き……なんだ。ケイトも、メロンが……!)
メロンを愛する気持ちは誰にも負けない自信があったけれど、僕にはあんな深い愛とオリジナリティにあふれた、クリエイティブな発想はない。メロン農家になったあと、そんなケイトに勝てるだろうか。
もはや涙目の僕に、さらにテオの恐ろしい言葉が振りかかった。
「とにかく、エマ。もうちょっとあいつのことは警戒してよ。それに……あいつばっかりずるいし」
僕は目を見開いた。
ず、ずるい……とはどういうことだろう。
テオまでケイトを羨むようなことを言ってきたという事実に、僕は狼狽えた。そして僕の頭の中に、恐ろしい考えが浮かんだ。
いやまさか、そんなはずはない。僕はその恐怖を断ちきるように、頭をブンブンと振った。だが、その恐怖は僕の中でどんどん大きくなる。嘘だ。信じたくない。まさか……
(――て……テオも!?)
僕はバッと顔を上げ、びっくりするテオに、衝動のままに尋ねた。
「まさかテオも……好きなのか?」
「へ!? す、好きって……え!!」
た、大変だ……テオが動揺している。それどころか、普段はふわふわと爽やかに笑っている表情を崩さないというのに、明らかに頬が赤くなっていく。
突然思っていたことを言い当てられて、慌てている状態に他ならなかった。
僕は愕然とした。まだメロン農家を始めてもいないというのに、僕の周りにすでに二人もメロン農家を志している人間を見つけてしまうなんて。
すでに、よろけている僕は、体重を支えてくれるはずの壁が消失したことで、必然的にその闇の中に放り出された。
「……へ?」
目を丸くして固まる僕の手を、ケイトがガシッと握ってくれた。
本当になんて頼りになる従者なんだ、と思った瞬間、僕の体重が重すぎたのか、なんとケイトは逆に僕に引き寄せられた。
「ええ!?」
僕が驚きの声をあげる中、ケイトもさすがに焦った顔をしていた。
「あ、ケイトでも焦ることあるんだな」なんて、驚きすぎてよくわからなくなった僕の頭が、現在起きている事象を処理するのを諦めるのを感じながら、僕たちは、その闇に吸い込まれるように落ちていったのだった。
「ぎゃああああああああああ」
◇ ◇ ◇
「いってえ、なんだここ……」
ケイトが痛がっている声を聞きながら、僕は青い空を仰いでいた。なぜなら、ケイトと同じく僕も倒れていたからだ。起き上がれないほど全身が痛い。
あの暗闇の中は、暗すぎて全容はわからなかった。だが、滑り台のような、人がちょうど一人入れるくらいの細い管になっており、僕とケイトはその中をひたすら、ぐるぐると滑り落ちてきた。
その管が曲がるたびに、僕とケイトは頭を打ち、肩を打ち、全身のありとあらゆる箇所を打ちつけながら、文字どおり転がり落ちた。
最終的に、この空間に放り出された……という訳だ。
(空が綺麗だな。今までは王妃教育が忙しすぎて、ゆっくりする時間なんてなかったからな……。こうして、青空の下、花畑で横になるなんていつぶり……ん? あれ?)
「――え、空?」
「空ですね。ここどこですか」
驚きのあまり僕は勢いよく体を起こし、全身を走り抜けた痛みに硬直した。もしかしたら服の下は痣だらけかもしれないと思いながら、痛む体にむち打って、僕はきょろきょろと辺りを見渡す。
まるで雨上がりの朝のような澄んだ空気の中、目の前に広がっているのは、永遠に続いているかのように見える花畑だった。
一面に、淡い色の花が咲き乱れ、ちらちらと舞う蝶の羽が見えた。まるで春の穏やかな景色のように、青空が広がっている。
「綺麗なところだな……」
「ええ」
ぼんやりと、その美しい景色に見蕩れている僕とは違い、ケイトの声はピリピリとした緊張感を孕んでいた。辺りを見渡す眼光は、鋭い。
おそらく僕たちは、地下五十階層以上あると言われるダンジョンの、未解明の部分に足を踏み入れてしまったのだろう。
しかし、あんなにモンスターたちが蔓延っていた一階層の奥に、こんなに美しい場所が隠されているなんて思いもしなかった。
僕は夢見心地で辺りを見渡した。そして、ぽやんとした思考のまま、ケイトに声をかけた。
「お昼に、しよっか」
「ほんと図太いですね。神経どこいったんですか」
そ、そんな言い方ないと思う。
ついに『お尻を痛めたがめつい腰ぬけのへっぽこ』という僕の評価に、図太いまで増えてしまった。
この図太いという言葉の、本当に太く、たくましい感じが伝わるだろうか。太った平民のおばさんを連想してしまう『図太い』という言葉が、この気高く美しい僕を形容する言葉として、適切であるはずがない。
むしろ、今までの旅を経て、僕は自分のことを打たれ弱いとすら思い始めているのだ。
こんなに繊細な僕に『図太い』という評価は受け入れられない。僕が恨みがましい目で見ていることに気がついたのか、ケイトがすべてを悟ったように口をひらいた。
「こう、すべてをまるっと含めて、最終的に図太いにたどり着くんですよ」
一体なにがまるっと含まれて、最終的にその結論に至るのか定かではないが、ケイトがそう思っているなら、もしかするとそうなのかもしれない。
よくわからないけれども。もしかしたら、僕も、ケイトのように二十五歳になれば、わかるのかもしれないなあなんて、半ば現実逃避をしながら、僕はうきうきと弁当を広げた。
「……そういうところですよ」
呆れた声を出すケイトを見ながら、「え? どういうところ?」と、首をかしげたら、もう、もはや話してもくれなかった。
あれ、僕はもしかして、ケイトに嫌われてるんだろうか。
もし今の状況で、ケイトに嫌われてしまったら、僕はもう生きていける気がしない。
現実的にも、経済的にも、物理的にも、経験的にも、僕は今、完全にケイトに依存している。そこまで考えて、ハッとした。
(僕は幼なじみのアルフレッドにすら、あんな風に嫌われて……)
もしゃもしゃとサンドイッチを食べながら、僕は幼いころ、まだアルフレッドと仲睦まじかったときを思い出した。
きっかけがなんだったのかは、思い出せない。だがある日ケンカをして、そのまま僕とアルフレッドの関係は、戻ることはなかった。
あのときの僕には、なにが悪かったのか、なにをしてしまったのか、とアルフレッドに尋ね、歩み寄る勇気がなかった。
ただ、時間が解決してくれると思っている間に、王妃教育が多忙すぎて、一緒に遊ぶ時間はどんどんなくなり、そのまま気まずい想いだけを抱え、婚約破棄という結末を迎えてしまった。
(だめだ。また同じことを繰り返しては……)
なぜか緊張して、とくとくと心臓の音が速くなった。
大切な人には、自分にとってその人が大切な人であるということを、きちんと伝えなければならないのだ。もう僕は、同じ失敗は繰り返したくない。
僕は拳を握りしめ、意を決して、ケイトに言った。
「ケイト、僕はお前が好きだ」
「――は?」
「なにか僕に悪いところがあるのなら、遠慮なく言ってくれ」
「……はあ。じゃあ言いますけど、鼻に、サンドイッチのタマゴついてますよ」
僕はゆっくりと、慌てることなく、お弁当の包みに入っていたナプキンを取り出した。そして、気品ある優雅な仕草で、そっと鼻をぬぐった。ちらりとナプキンに目をやると、たしかにそこには黄色いタマゴがついていて、僕はふっと笑みを漏らした。
――って!!
「そういうんじゃ、ないんだけど!」
僕がキレ気味にそう言うと、ケイトは、ぶっと吹き出した。
あはは、とケイトがあまりにも無邪気に笑うから、僕はぽかんと口を開けて固まってしまった。それから、ひとしきり笑い終えたケイトが爽やかに言った。
「オレも弁当、食べることにします」
なんだよ、結局ケイトだってお昼じゃないか、という文句は言わなかった。ごはんは一緒に食べたほうがおいしいと思うから。
いつになくケイトがにこにこしているのは、もしかすると、この穏やかな景色のおかげかもしれない。僕とケイトは、その花畑の中で向かいあって、ゆっくりとサンドイッチを堪能したのだった。
◇ ◇ ◇
お昼を食べ終わった僕たちは、花畑を散策し始めた。
いくら綺麗なところとはいえ、帰り道がわからない以上、僕たちはダンジョンで遭難したに過ぎない。
花畑には、食べられそうな植物や実もちらほらあったが、こんなところで一生を過ごしたら、僕はいつしか妖精にでもなってしまいそうだ。
そんなことを考えていたとき、遠くの花々の間で、小さななにかがキラッと光ったような気がした。目を凝らすと、大きな硝子細工のようなものがあった。
「あれはなんだろう?」
僕がそう言ってその方向を指差すと、ケイトがつられて視線をやった。
少しの間相談し、見に行ってみようということになり、僕はケイトの背中に隠れながら、ゆっくりとその透明ななにかに近づいていった。
近くで見るとそれは硝子細工ではなく、クリスタルでできた灯籠のようだった。明かりを灯すであろう場所には、手のひらに乗りそうなサイズの、羽の生えた女の子が眠っていた。
僕は口を押さえて感嘆の声を上げた。
「うわあ、もしかしてこれが妖精か? すごい。本当に?」
「すごいですね。オレもはじめて見ました」
シンプルな白いドレスから突き出ている、薄く透けた羽は、光を反射してさまざまな色に輝いているように見えた。すよすよと、丸まった背中が、ふくらみ、しぼみ、ふくらみ、しぼみ、と呼吸している様子は、僕を幸せな気持ちにしてくれた。
ケイトも興味津々で妖精を見ていたが、心なしか目元が優しげに和らいでいる。ケイトが僕のほうを見たので、僕は、起こさないようにしないとね、という顔でケイトに微笑んだ。
そのとき、優しい風が辺りをそよぎ、僕たちのもとにふわりふわりと花びらを運んできた。その一枚が僕の鼻先をかすめて――と思ったときにはもう遅かった。
「へ、へぐ、ぶ、ぶあっくしょ!!」
「……」
「わああ! 人間!? どうやってこんなところに??」
僕のくしゃみで、妖精を起こしてしまった。
申し訳ないと思ったが、生理現象なのでできれば許してほしい。隣でケイトが、白い目をしているような気がしたが、そちらは見ないように心がけた。
大慌てで飛び起きた妖精は、ピューッと上に飛び、僕たちと距離を取った。そういえば、妖精を誘きだして捕まえて売ろうとする人間がいると聞いたことがある。だとすれば妖精はきっと、僕たちがいてすごく驚いたはずだ。
現に、その妖精は信じられないものを見るように、僕とケイトの顔を交互に見ていた。あまりにも驚いた表情をしているから、僕は再び、ものすごく申し訳ない気持ちになった。
「起こしてしまって、すまない。その、くしゃみが出てしまって……」
悪いことをしたときは、すぐに謝る。
それはとても大切なことだと、僕は学んだのだ。
妖精はいまだ驚いているようで、微動だにしない。僕はだんだん心配になってきて、「大丈夫か?」と尋ねた。
次第に状況を理解したのか、僕たちが害をなすつもりがないとわかったのか、妖精は少しだけ近づいてきてくれた。
だが、なぜか疑うような視線でケイトのことをじっと見ていて、それにつられるように、ケイトも妙に鋭い瞳で妖精を見つめ返していた。
二人の間に走る緊張感が漂ってきて、僕は首をかしげた。このかわいい妖精は、どうしてこんなにケイトのことを警戒しているんだろう。
そう考えたとき、僕は先日のゴライアスの一件を思い出し、ハッとした。
(ま……まさか、ケイトは妖精をも食べようとしているのか……?)
そんな恐ろしい考えが頭を過ったが、いくらケイトが食いしん坊だとはいえ、さすがにそんなことはないだろうと僕は首を横に振った。
しかし現実として、妖精はケイトに怯えているように見える。僕は慌てて、ケイトの前で手を広げ、念のため注意喚起をしておくことにした。
「け、ケイト。妖精は……食べちゃだめだぞ」
「は?」
「は?」
ケイトと妖精と両方ともが、ぽかんとした顔で僕のことを見た。
だが、今、この状況を把握しているのは僕しかいないはずだ。この切迫した危機的状況を、僕の俊敏な判断と、叡智によって華麗に回避できたことに、ほっと胸を撫で下ろした。
ケイトはなぜかいつもの死んだ魚のような目で僕のことを見ていたが、僕はくるりと妖精に向き直った。
近くで見ると、小さな顔に、つんとした鼻と小麦色の大きな瞳がついていて、本当にかわいらしい顔立ちだ。僕が好奇心を抱いていることがわかったのか、ムッと気合をいれるような素ぶりをして、妖精は僕に話しかけた。
「な、なにものなのかしら! こんなところにたどり着くだなんて」
「ここは一体どこなんだい? 僕たちも気づいたらここにいて、困っているところだったんだ」
妖精はそのかわいらしい顔に似合わず、眉根を寄せながら、「気づいたらここにー?」とケイトをキッと睨み、訝しげに僕を見た。
だが、断じて僕は嘘などついていない。僕が壁の中の滑り台のようなものでここに来た、と説明すると妖精は驚いた顔をした。
「あの通路はよっぽど心の綺麗な人間じゃないと……って、な、なんて綺麗な魂なの!?」
「え、僕?」
僕の周りをくるくると忙しなく飛び回りながら、妖精は僕のことを観察していた。だが、綺麗な魂とは……なんだろうか、と首をかしげる。
現に僕は、婚約者だった幼なじみに故国を追放されるという、要約すれば、野たれ死んでほしいとまで思われている存在だ。そんなことを言ってもらえるほど、僕の魂が綺麗だとは思えなかった。
しゅん、と萎んでいると、妖精は首をかしげた。
「え、なんかあったの?」
僕は泣きそうになりながら、「幼なじみだった婚約者に、野たれ死ねと言われて国外追放になったんだ」と言うと、妖精は若干引いたようで、「それは悲惨ね」と、顔を引き攣らせた。こんなにかわいらしい見た目からは想像できないほど、妖精が顔を引き攣らせているのを見て、ふと僕の中に考えが浮かんだ。
幼なじみだった婚約者に野たれ死ねと言われて、国外追放になるという事象はかなり悲惨だな、と。
僕がもし、幼なじみだった婚約者にそう言われて、国外追放になった人に会ったら、たしかに顔を引き攣らせて「それは悲惨だな」と思うに違いない。
今のところ、そんな可哀想な人に出会ったことはない。そんな可哀想な人がいたら、その人はもう生きる希望を持てないかもしれない、と思ったところで気がついた。
――僕のことだった。
僕の目の中から、湧き出る温泉のようにぶわあと涙が広がって、そしてだーっと滝のように流れ落ちた。
たしかに今の僕は自分が子供のころに願ったような状態ではない。
しかし、他人が引くほど悲惨な状況にあるんだという事実を客観的に知ってしまったことで、僕の中にあった悲しみが、さらなる質量をもってズンとのしかかってくる。
これは、ごはんを食べているときに、鏡を見ながら食べると倍の満腹感を得られる、と小太りなコックのジョンが言っていた事象に似ているかもしれない。
「わあああ! え!? え! ごめん! なんか、ごめんって!!」
「え、エマ様!?」
妖精とケイトが慌てている声が聞こえたが、僕の視界はとぷとぷとあふれ出す涙によって遮られていて、二人の顔はまったく見えない。
その間にも「うっうっ」という僕の嗚咽にあわせて肩が上下し、涙が止まらなかった。
「か、可哀想! あなた……可哀想だわ!」
泣きやまない僕を見かねて、ケイトがハンカチらしき物を取りだしたようで、涙は徐々にそのハンカチに吸い取られていった。
少し見えるようになった視界の中、心配そうな顔をしたケイトと「あわわ」といった顔で焦りながら飛び回っている妖精が見えた。
僕は悲惨な状態にあって、いまだにその悲しみの中にあるけど、こうして心配してくれる従者がいることや、僕が泣くのを見て慌てる妖精がいることは、それでもやっぱり幸せなことかもしれない、と少し思った。
そして、いまだ慌てている妖精は、滝ではなく小川くらいの涙の流れになった僕に言った。
「か、加護あげるから。ね、泣きやみなさい。私の加護すごいから! ね! すごいやつだから!」
必死で伝えてくる彼女には悪いが、加護というものがなんなのかわからずに、僕は首をかしげた。
彼女は小さく笑うと、僕にふうっと優しく息を吹きかける。すると、僕の周りがキラキラと細かい白い光で覆われ、ふわりと優しい花の香りに包まれた。
目を凝らすと、まるで夢でもみているかのように、僕の周りを光でできた小さな花たちが囲んでいた。
「わあ、綺麗だ……」
僕の涙はいつしか止まっていた。
それを見た妖精とケイトが、ふう、と安心したような息を吐くのがわかった。加護がなんなのかはわからなかったが、なんだか心が軽くなったような、なにかに守られているような、そんな不思議な感覚だ。
そして、妖精はその小さな腕を、僕とケイトに向けて、ふわっと広げた。
「私は妖精王なのよ。加護くらいならあげられるわ! あなたは大変な目にあったみたいだけど、これからの旅路に幸が多からんことを、ここから祈っているわ」
まさに妖精王の名を感じさせる、慈愛のこもった微笑みだと思った。
妖精王は、包みこむような笑顔でそう言って、ふと、ケイトに視線を移した。
ほんの一瞬前まであんなに優しい顔をしていたのに、突然スンと真顔になって、妖精王はケイトを睨んだ。
「――あなたの魂は、普通」
「……そうですか」
その次の瞬間、視界が真っ白になった。ケイトは慌てて僕の手を握り胸の中に引き寄せ、ぎゅっと強く抱きしめた。
僕は目をつぶっていたので、なにが起きているのかわからなかった。それでも、あのかわいらしく優しい妖精王のすることだから、怖いことではないような気がしていた。
そして、目を開けるとそこは――
「だ、ダンジョンの入り口?」
「……みたいですね」
僕たちは、無事、ダンジョンから出ることに成功したようだった。
◇ ◇ ◇
「エマ様。どうしても確認したいことがあるんで、ちょっとだけ待っていてもらえますか?」
ケイトがそう言い出したのは、ダンジョンで泥だらけになった服を着替えようと、宿屋に戻ってきたあとだった。
ぽかんとしている僕に向かって、「結界を張っておきますから、絶対に部屋から出ないでください。いいですね」と、オーガのような顔で確認し、闇魔法らしき煙を左手からぶわっと出すと、そそくさと部屋から出ていってしまった。
しきりに「なんか嫌な予感がする」とブツブツぼやきながら出ていったケイトを思い出し、一体なにを確認しに行ったんだろうと考えていると、トントンと窓を叩く音がした。
「エ~マ~ちゃん」
「……え?」
次いで甘い声色で名前を呼ばれて、僕は振り返った。
宿の窓から、見覚えのある赤茶色の髪が覗き、その不思議な青紫色の瞳と視線が交わった。僕の中にぶわっと喜びが込みあげ、衝動とともに名前が口をついて出た。
「テオ!」
「やっぱりエマニュエル様だった」
よっ、と言いながら、テオは軽々と窓枠を飛び越えて、ふわりと中に入ってきた。テオが降りたつときにトンと床が鳴る音を、幼いころから、僕は何度も聞いたことがあった。
「お前はいつも窓から忍び込んでばっかりだな」
一瞬、ケイトのオーガのような顔が頭を過ったが、僕は部屋から出ていないわけなのだから大丈夫だろうと思い直した。
それに、相手はテオドールである。王妃教育でなかなか外出がままならなかった僕は、商家の息子であるテオがうちに訪れるたびに教えてくれる外国の話を、いつも楽しみにしていた。
身分差もあったが、二人だけのときは敬語も使わずに話す仲だ。アルフレッドとはまた違う、僕の大切な幼なじみなのだ。
「まさかペルケ王国でも忍び込むことになるなんて、思わなかったよ」
いつもと変わらない軽口に、ほっとしてしまう。
テオに限ってそんなことはないと思っていたが、やっぱり婚約破棄されてしまった自分のことをどう思うかは、少し気になっていた。
テオがにこっと微笑んで、僕も自然と笑っていた。
だけど、僕を見たテオの顔が、だんだんと真剣なものになる。じっと綺麗な瞳で見つめられて、ドキッと心臓が跳ねた。テオはそっと僕の手を取り、尋ねた。
「――大丈夫?」
「え?」
「無理してるでしょ。辛かったとき、一緒にいられなくて……ごめん」
切なげに細められたテオの瞳を見て、僕は息を呑んだ。
だけど婚約破棄だなんて、普通は想像だにしないはずだ。
用意周到なケイトはなにかを察知していていろいろと用意してくれたが、テオが気がつかないのは当たり前のことで、謝る必要などどこにもない。
テオは母上が亡くなられたとき、僕のことを心配して、夜に僕の屋敷に忍び込んできたことがある。あの頃は、「大丈夫だ」とテオに言えるまで、僕はとても長い時間を費やした。テオの中で、僕はまだあの頃のように、幼く、頼りないままかもしれない。
でも、今は違う。
僕はきゅっとテオの指先を握り返しながら、言葉を返す。
「追放されてまだそんなに経っていないというのに、王都のことなんて忘れてしまうくらい、いろんなことがあったんだ……」
今までの人生はなんだったんだと思うくらい、目まぐるしい数日間を思い出して、僕は一瞬遠い目になった。でも、国外追放になったときよりも、ずっと心が和らいでいた。
だから目の前で心配そうな顔をしているテオにだって、僕はちゃんと言えるはずだった。
「でも僕は大丈夫だよ、テオ。そこそこ元気でやってる」
「エマニュエル様……」
幼なじみに国外追放を宣告されたことは悲しかったけど、僕が本当に悲しかったのは、今まで国のためにと思って頑張ってきたことを否定された気がしたからだったように思う。
微笑みながらテオを見ると、商人が品物を鑑定するときのように、鋭い眼光でじっと観察されて、少し怯む。
でも僕は別に嘘をついているわけではない。笑顔でテオをじっと見つめていると、ふっとテオも笑みをこぼした。
「そう……それならよかった。エマニュエル様……ううん、エマ、なにかおいしいものでも食べにいこっか?」
二人でいるときのような軽口に戻ったテオに、僕は嬉しくて胸の奥が熱くなった。……だが、ケイトのオーガのような顔が頭を過り、一瞬で期待は潰えた。
「い、いや、だめだ。ケイトに部屋から出るなと言われているんだ」
「やっぱりあいつか……ねえ、エマ。ケイトにはなにもされてないんだよね?」
急に怖い顔になったテオに、僕はビクッと体を震わせた。
なにも、とはなんだろうと考えたとき、湖でのケイトの熱っぽい視線を思い出しそうになり、その思考をかき消すように手をパタパタと扇いだ。
ケイトが屋敷で働くようになってから、テオは僕に対して事あるごとに「ケイトに注意しろ」と忠告してきた。
僕にとっては頼りになる従者でしかないが、テオはケイトのことを危険だと思っているようなのだ。「なにもされてないよ」と、くすくす笑いながら言うと、テオはじっと疑いの視線で僕のことを見つめてくる。
「そう? でも、エマ……あいつは絶対になにか隠してると思う。今回のことだって、こんな速さでこの街までたどり着いてるだなんて、思ってもみなかったよ」
真剣な顔でそう言われて、僕は、うーんと首をかしげた。
旅の間、ケイトのことで気がついたことと言えば、ずいぶんと高度な闇魔法が使えることぐらいだった。
心優しいテオがこんなに怪しんでいるのだから、もしかしたら僕が知っていること以外に、なにかケイトは隠しているのだろうか。
僕はまだ屋敷にいたころのことに思いを馳せる。
ケイトの屋敷での勤務態度は普通に真面目だった。というか、かなり真面目だ。
爺や侍女たちの信頼は厚く、覚えも早く、要領もいい。なぜか僕に当たりが強いという以外は変なところなんて思いつかない。
だがさっきテオは「なにもされてないか」と心配そうに僕に確認した。つまりテオは、ケイトが僕に対してなにかよからぬことを企んでいると思っているのだ。
だが、現状、僕は国を追われ財産も奪われた上に、お尻を痛めたへっぽこだと思われている。その僕に唯一残っているのは、「メロン農家になりたい」という誰にも言ったことのない夢くらいしかない。
(なにかを企むにしたって、僕から奪えるものなんてなにも……)
そこまで考えて、僕はハッとした。
僕はとある可能性に行き着いてしまった。ひやりと背筋を嫌な感覚が走る。
もしもこれがテオの危惧することだとしたら、それは由々しき事態であった。その考えに囚われてしまった僕は、どうしようどうしようと焦ってしまう。
じわりと手に汗が滲み、喉が鳴った。
(まさか……ケイトもメロン農家に――!?)
僕は思わず、バッと両手で口を押さえた。
脳内で雷が炸裂したかのような衝撃を受ける。
ずっと僕のことを助けてくれていると思っていたケイトが、将来のライバルになる可能性を秘めていたというのか。そう考え出したら、もう次々と考えがあふれて止まらなかった。
よく考えてみれば、ケイトはことあるごとに、ポケットからオリジナリティあふれるメロンキャンディーを出してきたではないか。あれはもしや、ケイトの創作だったのかもしれない。
僕は拳を握りしめ、がくっとうなだれた。
(好き……なんだ。ケイトも、メロンが……!)
メロンを愛する気持ちは誰にも負けない自信があったけれど、僕にはあんな深い愛とオリジナリティにあふれた、クリエイティブな発想はない。メロン農家になったあと、そんなケイトに勝てるだろうか。
もはや涙目の僕に、さらにテオの恐ろしい言葉が振りかかった。
「とにかく、エマ。もうちょっとあいつのことは警戒してよ。それに……あいつばっかりずるいし」
僕は目を見開いた。
ず、ずるい……とはどういうことだろう。
テオまでケイトを羨むようなことを言ってきたという事実に、僕は狼狽えた。そして僕の頭の中に、恐ろしい考えが浮かんだ。
いやまさか、そんなはずはない。僕はその恐怖を断ちきるように、頭をブンブンと振った。だが、その恐怖は僕の中でどんどん大きくなる。嘘だ。信じたくない。まさか……
(――て……テオも!?)
僕はバッと顔を上げ、びっくりするテオに、衝動のままに尋ねた。
「まさかテオも……好きなのか?」
「へ!? す、好きって……え!!」
た、大変だ……テオが動揺している。それどころか、普段はふわふわと爽やかに笑っている表情を崩さないというのに、明らかに頬が赤くなっていく。
突然思っていたことを言い当てられて、慌てている状態に他ならなかった。
僕は愕然とした。まだメロン農家を始めてもいないというのに、僕の周りにすでに二人もメロン農家を志している人間を見つけてしまうなんて。
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