悪役令息の僕とツレない従者の、愛しい世界の歩き方

ばつ森⚡️8/22新刊

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リスティアーナ女王国編

34 悪役主従と下ごしらえ・中

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 だが、他の黒装束たちの手袋を嵌めた手が体中を這い回り出して、それどころではなかった。ぬるぬるした液体を身体中に塗りこまれ、体が震えるたびに鎖がガシャンガシャンと音を立てた。
 周りにいる黒装束たちの息が荒くなっていくのがわかる。念入りに胸や股間にその液体を塗られ、明らかに欲情した目で見つめられて、僕は力なく首を横に振った。

「すげえ……綺麗すぎる。やべ」
「……ぁッや、やめろ……」
「こんな白い肌見たこともない」

 さっきの男が目を光らせているせいで、手を出されることはなさそうだが、それでも怖くて怖くてガタガタと震えてしまう。だというのに変な液体を塗られたところから痒いような熱いような痺れが広がっていき、地に着いたつま先が震える。
 
「ぁ……ぅんんッ……な、なんで……」
「なんでだって……かわいー」
「怖い? 気持ちよくなってきちゃった?」

 くすくすと笑いながらペニスの先端をいじられて、ヒッと息を呑んだ拍子にぼろぼろと涙が溢れた。そんなところ、たとえ手袋をしているとはいえ、ケイト以外に触られることなんてないと思っていたのに。

(け、ケイト……助けて。ケイト……)
 
 好きな人にしか触られたことのない場所を執拗に触られて、絶望感が募る。
 黒装束の一人が僕のペニスを撫でながら、さっきの男に尋ねた。
 
「精力は貯めておいたほうがいいんですよね?」
「ああ、そうだな。縛っておいてくれ」

 ちょっと今優しいことを言ってくれたはずのその男の冷酷な言葉に驚いている間に、ペニスの根本にしっかりと海色の紐を巻きつけられてしまった。
 僕は一言言いたかった。

(こんなところで、僕の目と色合わせなくていいよ……!)
 
 僕がぷるぷると羞恥に震えている間に準備が終わったのか、鎖を外され、透けるような白い服を上から着せられ薄く透けた小さな下着をつけられる。後ろで両手を縛り直され、下着の両サイドの紐がきちっと結ばれていくのを見ながら、僕はパニックだった。というか――

「こ、こんな小さな下着……なんのために」
「まあ、脱がせやすいからじゃないか?」

 たしかに下着の横が紐であれば、とても脱がせやすそうな気もする。だが、さっき見た竜の骨の怪物にとって僕が着ている服の脱がせやすさなどというものはまったく問題ではないような気がした。きっと怪物から見ればイカが紐パンツを履いているようなもので、むしろ履いてないほうがいいような気がした。
 でも薄い白い布を着せられ、欲情した状態で後ろ手に縛られている僕を客観的に見て、僕は思った。

(どうしよう……あからさまに生贄というかんじだ!!!)
 
 あの怪物からしてみたら、イカが紐パンツを履いている状態に見えるかもしれないが、魔王に捧げられる生贄として完璧に準備されてしまったことを僕はひしひしと感じていた。
 紐を結び終えた男を、滲む視界のまま見て僕はか細い声で呟いた。

「や、やだ……こんなの」

 僕の様子を見て、男たちは心底おかしそうに笑った。

「……こんな美人を食べちゃうなんてもったいないな」
「ああ、泣き顔すげーかわいい」
「……俺ちょっとまずい」

 服の上からも乳首やペニスを擦られて、僕はもじもじと体をよじった。尻の中に入れられた魔導具が一体どんなものなのかはわからないけど、こんな恐ろしい状況だというのにケイトに愛されたいという欲望だけが募っていく。
 ちらっと自分の体に目をやって僕は言葉を失った。
 薄く透けた布は僕の乳首も、肌の色さえも隠してはいなかったし、小さな布で覆われただけのペニスは紐を伸ばしながら天を仰いでいたからだ。

(こんな、こんな格好……いやだ。恥ずかしすぎる)

 あまりの羞恥にぎゅっと目をつぶっていると、ギィッとまた音がした。
 もしかして! と涙を流したまま目をやると、そこには唖然とした表情のライナスが連れてこられていたようだった。僕とは違い、首にも太い首輪がつけられ、足にも枷がついているのが見える。だが、ライナスの顔色が憤怒の表情に変化するのは一瞬だった。

「エマ……ッッてめえらああああああ」
「う、うわあ! こ、こいつ鉄の手錠を引きちぎりそうだぞ……」

 暴れるライナスを床に転がし、黒装束たちが慌てた声を出した。
 だが、さっきの初老の声の男がしごく冷静な声で言った。
 
「ちゃんと繋いでおけ。それは、勇者だ」
「……お前、やっぱり!」
「えっ」

 ライナスも驚いた顔をしていたが、僕も驚いた。黒装束たちにもどよめきが走る。
 ライナスのことを勇者だとわかってるのかどうなんだろうとは思っていたが、まさか本当に知っていて拘束しているとは思わなかったのだ。それに勇者を目の前にしているというのに、他の黒装束たちとは違いその男はなんら緊張した様子もない。
 現に黒装束たちは自分達が本当に勇者に仇なす行動をしているのだということにうろたえたようで、お互いに顔を見合わせている。だが、男は続けた。

「その勇者は国からたっぷり金をもらい、女と遊び歩いている。ただの敵だ」
「くそ……てめえ!」

 黒装束たちの動揺は、なんだそれならという敵意に一瞬で塗り替えられてしまった。
 ライナスはずっとその男のことを見たまま視線をそらさない。緊迫した雰囲気に、空気がビリビリと震えているような気もする。だというのに、体の中に入れられた球がぷにっと動いた気がして、僕は空気も読まずに声を上げてしまった。
 
「は、……ぁッ……んっ!……」
「エマ……」

 ライナスの心配そうな声に僕はもう「大丈夫だ」と虚勢を張ることもできなかった。
 黒装束たちがざわめいている間に、さっきの男が僕の背後へとまわった。え? と驚いている間に、床に転がされたライナスの前に連れていかれ、後ろから両方の乳首を擦られて「ひあッ」と声をあげてしまった。くにくにと指先でいじられて、男の胸に体重を預けたまま、僕は震えることしかできない。
 ライナスが地を這うような声で言った。

「おい……クソ野郎、どういうつもりだ」
「ほら、ライナス。見て。こんなえっちなことになってる。腰震わせて、かわいいね」
「ぁッ……や、やめ……んんっ」
「…………」
 
 声は初老の男の声のままなのに、僕の背後にいる男ははっきりと『ライナス』と名前を呼んだ。
 それはライナスが勇者であることを知っている人間だという意味だった。僕は力なく首を振りながら、このおかしな事態を打開しなくちゃと思って必死で身をよじる。でも、男の手は布を濡らしてしまっている僕のペニスを布ごしにゆっくりと撫でていく。

「ひッ……ん、だ、だめ……ぁあ」
「はじめて好きになった人を、目の前で辱められるのどんな気持ち?」
「…………」
「ほら見てライナス。すごい気持ちよさそうにしてる。かわいーねー」

 気持ちよくなんてなりたくないのに、ぴくぴくと震えてしまっていることを指摘されて、全身の温度がぶわっと上がる。きっと僕の顔は真っ赤になってしまっているだろう。一体どういう状況なのかがまったくわからなかった。
 でも、はあはあと荒くなる息を吐きながら、この場所にいてきっと僕の味方でいてくれているはずのライナスに向かって朦朧とした意識の中、口にした。

「や、やだ……ライナス、た、助けて」

 自分の体が熱くて、体の中も外も熱くて、ぽろぽろと涙がこぼれる。
 せめて、せめて――こんな恥ずかしい僕の姿を……

「み、見ないで……」
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