悪役令息の僕とツレない従者の、愛しい世界の歩き方

ばつ森⚡️8/22新刊

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出版記念🎁番外編

05 悪役主従とクリスマス

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いつもありがとうございます!
ちるちるさんのサイトで応援してくださったみなさん、本当に本当にありがとうございました!!BLアワードにノミネートできるかどうかはまだわかりませんが、みなさんのおかげで200ポイント達成できました!!
ささやかですがお礼に、二人のクリスマスを書きました!
どうか笑ってくださいますように:)
――――――






「寒い……なんて寒いんだ……」
「まあ、海沿いに滞在しちゃってるからでしょうね」

 おひさしぶりです。僕の名前はエマニュエル・レーフクヴィスト、以前は公爵令息として栄華を極めた僕であったが、現在は魔王の生贄的な立ち位置で世界中を旅している。
 例のごとく、ケイトによってありとあらゆる防寒具を重ね着せられた僕は、もこもことした雪だるま的なにかになって歩いていた。あれほど美しいと称された僕の歩く姿は、いまや「ぽてぽて」といったような効果音がふさわしいほどに愉快なものとなり、非常に不本意である。だが……あたたかいので、この事態を甘んじて受け流している。

(寒いッッ……! 毎日寒すぎる! お日さまはもっとがんばってくれてもいい!)

 そんなことを考えながら、僕たちは海沿いにある小さな町を歩いていた。
 早朝だというのに、辺りからは市場の活気ある声が聞こえてくる。近くの漁村から新鮮な魚が毎日運ばれてくるため、この町はみんな早起きだ。今日はケイトと一緒に年越しに備えるため、買い出しに来たのだ。
 いろんなことがあった今年も……ようやくひと段落をつけようとしていた。
 
 横を歩くケイトを見上げると、ふわりと優しく微笑まれた。
 いつもいじわるな顔ばかりしていると思っていたのに、いつからケイトはこんなに優しい顔をするようになったんだろう。きっと赤くなってしまっている僕の顔の半分は、もこもこしたマフラーが隠してくれていることを願う。
 ミトンに包まれた手を前に差し出すと、ケイトが当たり前のようにぎゅっと握ってくれた。

 ケイトは雪国の生まれだと言っていて、寒さに強いことは知っている。こんな寒さの中でも余裕そうな顔をしていてずるいと、つい恨みがましい目で見てしまう。
 でも、ケイトの吐く息が白く広がるのを見て、冬の中にいるケイトを見るのは嫌いじゃないと……思った。
 たわいもないことを話し、恋人と一緒に年越しの準備をする幸せは……たくさんのことが起きた今年を思うと、奇跡みたいなことだった。

(父上も、屋敷の者たちも、国王陛下も……みながあたたかに過ごしているといいな)

 ケイトが干物にすると言って魚を多めに買ったり、根菜を干すのだと言って多めに買ったりしているのを見ながら、なんでも干してどうにかするんだなと学ぶ。定住しているときは、地下に保冷庫があるからそこに食料を貯めておくが、旅をしているとどうしても保存が効くものを買ったり、作ることになってしまう。
 
 いつもの馬車にどんどんいろんなものが、日々手際よく干されていくのを見て、僕が悪いことをしたら僕も干されてしまうのではないかと、最近少し怯えている。
 ふるりと震えてしまったら、ケイトが心配そうに「もうこれで終わりですから」と言って、大きな布袋を担いだ。

「ケイトの生まれた場所では、どんな風に年末を過ごすんだ?」
「家によりますけど、オレは家でごろごろしてましたね。保存が効く食料を食べてのんびりするんですよ。ああ、でも……」
「え?」
「その前に、クリスマスって行事? があって、それが今日です」

 聞き慣れない言葉に、僕は首をかしげた。
 年越しだけでも一大行事なのに、ほかにもなにかあるだなんて、ケイトの故郷は忙しないなと思う。どんなことをするんだろうと思っていると、ケイトがちらっと僕のことを見ながら言った。
 
「えーと、サンタクロースっていう、赤い服を着た長い髭のおじいさんが……プレゼントを配るっていうか」

 その話を聞いて、なにやらおもしろそうな行事があるんだなと僕は目を瞬かせた。
 道化かなんかなんだろうな。頭の中で、先のくるっとした長いヒゲ束を跳ねさせ、玉乗りをしている赤い老人を思い浮かべた。玉乗りをしながら、お菓子などをばら撒くのかもしれない。
 ケイトは続けた。

「空を飛んで、いろんなところに行って、配るんです」
「なんと、飛行できるのか……!」

 だけど、その道化の老人は驚くべき才能を持っているようだ。
 僕は妖精のクルトを助けたときに、空を飛んで恐ろしい目にあったことを思い出した。そして、長いヒゲの赤い道化の老人が、ものすごい勢いでぐるぐると回りながら空を飛び、プレゼントをばら撒いているのを想像して思った。

(ちょっと怖いな……それ)

 そんな怪しげな老人が配っているのなら、プレゼントとは名ばかりで、中身はカエルの干物とかヘビの抜け殻とかなのではないかと思ったところで、僕は重大なことに気がついた。
 ケイトは最近いろんなものを干しているけど……もしかして、ケイトがサンタクロースなのではないかという疑念が湧く。ケイトは魔王なのだから、空くらい飛べる可能性もある。
 帰ったら、馬車に干してあるさまざまなものの中に、カエルやヘビが混ざっていないか確認しなくては。そんな使命感に燃えていると、ケイトが訊いた。

「エマさまは、なにか欲しいものがありますか?」
「!!!!!」

 僕は凍りついた。
 ここに来て、なぜかケイトが僕の欲しいものを尋ねてきたではないか。僕の抱いていた疑念が、確信に変わりつつあった。

(大変だ……ケイトがサンタクロースなんだ……ッ!)
 
 さっきは僕に正体を隠すために、ヒゲや老人だという嘘をついたのかもしれない。
 さっきまで想像の中ではおかしな道化の老人だったサンタクロースというものが、空を飛び回るヒゲを生やしたケイトにすり替わってしまった。僕は動けなくなったまま、そのケイトの故郷のおかしな習慣にどう反応していいのかを、それこそクルトと一緒に空をぐるぐる飛んだくらいの猛スピードで考えていた。

 正直なところ、僕は干したカエルやヘビの抜け殻は欲しくなかった。
 だが――、ケイトの正体がくだんの〝サンタクロース〟である可能性がある以上、僕はその事実に気がついていないフリをしながら、自然にごく自然に……なにか干されたものを要求するべきだった。
 だが、干された食べ物で好きなのはイモくらいで、それは毎日のように食べていた。メロンを干したことはなかったけど、そもそもメロンはこの時期に手に入るとも思えない。

(ぼ、僕は……い、一体どうしたら……ケイトのことを傷つけずに、なにかしらの干物を希望することができるか……!)

 魚だろうか。だが、魚は今まさに干物にしようとしているところであって、それを希望すればケイトのことを傷つけてしまうかもしれない。僕はもう二度とケイトのことを傷つけたくはなかった。
 愛している人なのだ。
 ろくな案が浮かばず、嫌な汗が背筋を伝う。
 そうこうしている間に、滞在している宿屋に到着してしまった。部屋の扉を開けながら、ケイトが不思議そうに僕のことを見ながら尋ねた。

「――オレ、なんか変なこと言いました?」
「いッ言ってない! ケイトは、断じて変なことを言っていない!」
「……エマさま、また変なこと考えてるでしょ」

 ケイトがいつもの、死んだ魚のような目で僕のことを見た。僕がなにも言えずに涙目になってると、ケイトが困ったような顔で笑った。それから、荷物を下ろしながら、僕の額に唇を落とした。

「そういうとこも好きですけどね」
「ケイト……」

 そう言われて、僕はぎゅうっとケイトに抱きついた。
 慈しむような笑顔を見て、ケイトがサンタクロースであることは……絶対に誰にもバレないようにしようと思ったのだった。

 


 
 翌朝、僕の枕もとにはひとつのプレゼントが届いていた。
 誰がそれを届けてくれたのか……僕だけは知っていたけど、僕はサンタクロースが来てくれたのだと驚いたふりをして、ケイトの様子を窺った。一体なんの干物が入っているのだろうかと、緊張したまま包みをひらくと……メロン色の腹巻きが入っていた。
 ケイトが「こないだお腹冷やしてたから届いたのかもしれませんね」と、さも自分ではないかのように言ったので、僕はふっと笑いながら、「サンタクロースはなんでも知ってるんだな」と言いながら思った。

(干物じゃなくてよかったぁぁー! ありがとうケイ……じゃなかった、サンタクロース!)

 そして、ケイトがサンタクロースなら、ケイトにはクリスマスにプレゼントが来ないのかもしれないと気づいた僕は、昨日のうちに用意しておいたものがあった。昨日、庭で見つけておいたヘビの抜けがらをケイトに差し出した。
 てっきり喜んでくれると思ったのに、ケイトの反応が想像とまったく違ったことは驚きだった。
 
「……え、なにこの小学生みたいないたずら」
「えッッ!」

 ――そんなクリスマスがあったり、なかったり……。

 

 HAPPIEST X'MAS TO YOU ALL!!!
 







――――――――
これからもがんばります!
みなさま、よいお年をお迎えください。 
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