122 / 174
伝説の傭兵団が目覚める時
しおりを挟む
「……! まさか……! そんな……!」
ガリグレッドはレクタリアとの間で感じていた繋がりが消えた事に驚きが隠せなかった。
ガリグレッドの元々の人格は幻想歴まで遡る。かつては女神シルヴェラが統治する国でシルヴェラの使徒として仕えていた。その時の名はジョナード。
ジョナードは以降、シルヴェラに与えられた魔法の力で自身の血族に転生を繰り返していた。
そして時は幻魔歴が終わって新鋼歴に入ったばかりの頃。テンブルク王国の国王だったジョナードはアルグローガの誘いに応じ、五国会談を経てゼルダンシア帝国の一部となる。
だが納得しての併合ではなかった。その時のジョナードには妹がいたが、半ば無理やりアルグローガに奪われたのだ。
妹はそのままアルグローガの子を身ごもり、帝都で人質の様な扱いを受けていた。
ジョナードは転生を繰り返す事で、いくつも戦乱を経験してきた。特に幻魔歴末期から新鋼歴近代までは本当に争いが多かったし、ジョナード自身その中で様々な感情に翻弄されてきた。
そして今の世になって、久しぶりにガリグレッドとして転生した時。幾星霜の時を経てシルヴェラと再会した時は、これは運命であると感じ入っていた。
「せっかく……! ここまできたというのに……!」
地下にいるレクタリアの反応が消えた理由。可能性としては2つしか考えられなかった。
魔法復活の儀式を行ったが、何らかのアクシデントにより儀式そのものが失敗したか。もしくは邪魔が入り、害されたかである。
「確認せねば……!」
ガリグレッドは城の一室から出る。その部屋には様々な貴重品が集めらえており、ガリグレッドはそこにある王の錫杖に用があったのだ。右手に錫杖を持ちながら階段を降りる。
(もしシルヴェラ様が、万が一にでも消滅という事態にあっていれば……! 私の転生魔法もその効力を失う事になる……!)
ガリグレッドの転生も、絶え間なく行える訳ではない。次いつ血族に転生するかはガリグレッド自身にも分からないのだ。
今の時代にシルヴェラと出会えたのは、本当に奇跡と偶然の産物であった。
「ガリグレッド様。今までどちらに? ヴィンチェスター様がお探しでしたよ。おや、その錫杖は……」
廊下でハイラント派の貴族とすれ違う。ガリグレッドは何とか平静を装いつつ、ヴィンチェスターの行き先を聞いた。
「ヴィンチェスター様は今どちらに?」
「皇宮へと行かれました。ウィックリン陛下の面会ついでに、次の后候補を見に行かれたのでしょう」
「そうですか」
本来であれば、この錫杖を簡易大幻霊石として用いる予定だった。
波動が満ちた時にもしヴィンチェスターが怪物と化していなければ、錫杖を使わせてもいいかと考えていたのだ。
だが今はその前提条件が覆された可能性があるし、ヴィンチェスターも呑気に皇宮へ行っている場合ではない。
(どうする……! いや、何をするにせよやはりシルヴェラ様の状態を確認するのが先決……! 私も地下に……!)
「おお、そこにおったか、ガリグレッドよ」
名を呼ばれて顔を上げると、そこにはヴィンチェスターがランダインとログバーツを伴って歩いてきていた。
「探しておったのだぞ。……む、それは! 王権の象徴たる錫杖ではないか……!」
「……は。魔法が復活した時には、ヴィンチェスター殿に必要になる物ですので。こうして探しておったのです」
「おお、そうか! では……」
その時だった。遠くで爆発音が響き、兵士の悲鳴が上がる。
「!?」
「なんだ!?」
広間にいる兵士や貴族たちも何事かと騒ぎ出す。そこに伝令の兵士が走ってきた。
「も、申し上げます! 皇宮より突如、反乱者が現れました……!」
「反乱者だとぉ!? アルフォース家か!?」
「い、いえ! それが……相手は6人でして……!」
「なにぃ!? たった6人にどうしてここまでの騒ぎになる! さっさと鎮圧せんか!」
ヴィンチェスターは怒りから伝令の兵士を怒鳴りつける。だが兵士は委縮しながらも震える声を振り絞った。
「そ、それが……! 奴ら、あまりに強すぎて……! とてもではありませんが、敵いません……!」
「な、なんだとぉ……!?」
■
レクタリアたちが地下に潜入してきたルートは、帝都貴族街……それも中心地に繋がっていた。
俺たちは物陰に隠れながら移動する。周囲にはルングーザ領とテンブルク領の領兵が多く巡回していた。
「完全に抑えられてんなぁ……」
「騎士団も直前に現れた獣や怪物の相手をしていたし、両軍を抑えきれなかったんだろうな」
俺たちはこの場から近いという事もあり、ディアノーラとアデライアに案内してもらって皇宮近くまで移動する。そこもやはり抑えられている様子だった。
「結構厳重だなぁ……」
「おそらく陛下を始め、主だった皇族を軟禁しているのではないだろうか」
「邪魔者はさっさと城から追い出そうってか」
ありそうではあるな。アデライアも不安げな視線を皇宮に向けている。
しかしここからどうしたものかね。とりあえずアデライアを連れて、貴族街を離れるのも手と言えば手だが。
「ヴェルトさま。そして黒狼会の皆さま」
アデライアは顔を上げ、しっかりとした口調で話す。
「この一度だけで構いません……! どうか群狼武風として、私に雇われていただけませんか……!」
「姫様!? それは一体……」
ディアノーラはアデライアの真意を確認する。
「このままヴィンチェスターを捨ておけないのです……! 何もゼルダンシア皇族による治世を継続させるためにお頼みするのではありません。相手はあの結社と手を組み、魔法や人の進化という曖昧な手段で新たに皇帝位を簒奪しようとする者。私にはそれが、ゼルダンシア皇族による治世よりも良いものだとはどうしても思えないのです……!」
言わんとする事は理解できる。ヴィンチェスターにせよ結社の口車にのせられただけだろう。自分の信念や誇りにかけての行動だとは思えない。
「で、このままめちゃくちゃな治世が行われる前に、城を取り戻して欲しいと」
「はい……! そ、その。激しい戦闘の後で大変お疲れなのは重々承知なのですが……!」
アデライアは心から申し訳なさそうに声をあげる。
「報酬は望むもの全て。私にできること、その全てを以てお支払いさせていただきます……! 私自身、皇族の末席に名を連ねる小娘に過ぎません。そんな私では、皆さまをお雇いできるほどの対価をお支払いできるとは限りません。ですが……!」
その声からは必死さが伝わってきた。フィンは面白そうにこっちを見てくる。
「どうするの、ヴェルト。姫様にここまで言わせてさ~」
ロイも静かに頷く。
「今だけは久しぶりに隊長とお呼びしましょうか?」
……ったく。みんなやる気じゃねぇか。
俺はアデライアの頭に手を乗せると、そのまま髪の毛をくしゃくしゃにした。
「ヴェルトさま……?」
「自分で自分の価値を落とす様な事は言うな。俺たちはアデライアだからこそ助けたいと思ったし、レクタリアと戦いもした。俺たちの雇い主だというのなら……群狼武風の主は、やっぱ誇れる人じゃないとな」
「…………!」
「アデライアのために、今日だけ群狼武風の再結集といこうか。ヴェルト隊隊長の俺がローガの代行を務める。異論は?」
「ないよ~」
「ねぇって」
「ありません」
「ない」
「ないのぅ」
こんなにきつい連戦は久しぶりだな。
だが過去にはもっと苦しい時もあったし、みんなこの程度の修羅場は何度も通ってきている。今さらここで止まる様な足も持っていない。
「それじゃ作戦会議といこうか。過去にもやった事があるアレでいこう」
「アレ?」
「敵の首魁の名は分かっているし、あいつらもまだ帝都を抑えたばかり。指令室の設置や情報伝達の経路など、まだ整っていないだろう。これまでやってきた潜入任務に比べたら、楽な部類だ」
■
俺たちは皇宮に向かって堂々と歩いていた。6人でアデライアとディアノーラ、それにリリアーナを囲む様に歩く。
皇宮の前に立つ兵士はこちらに気付き、声をあげた。
「止まれ! 一体なんだ、そいつらは!」
「逃走していた皇女アデライアを捕えた。護衛騎士のディアノーラ、それに侍女も一緒だ。ヴィンチェスター様より、ウィックリン陛下の部屋へとお連れする様に言われたのだが」
「なに……!?」
俺たちは物陰から兵士を襲い、その装備一式を剥ぎ取っていた。
今はテンブルク領の領軍に扮してアデライアを連行するという演技をしている。こうして正面から堂々と皇宮に乗り込む算段だった。
「本当だ……! 情報通り、目が赤いぞ!」
「侍女はフェルグレッド聖王国民か……!」
「ディアノーラも本物だな。正真正銘の皇族だ」
名を呼ばれたディアノーラは、強い眼差しを兵士に向ける。
「アデライア様をウィックリン陛下に会わせるという条件で、大人しくしているのだ。早く通すがよい」
「なにぃ……」
「本当だ。ヴィンチェスター様には既に許可をいただいている。早く通してくれんと、アルフォース家の剣士がいつ暴れるか分からんぞ」
「わ、わかった。通るがいい」
俺たちはそのまま皇宮へと足を踏み入れる。そのままアデライアの指示に従って廊下を歩いた。
「うまくいったねー!」
「指示の確認をする符丁が無かったところを見るに、坊の言う通りまだ体制を整えておらんようじゃのう」
「ま、駄目なら駄目で、正面突破するだけだったがな!」
血の気が多い意見だ。だが今の俺たちにはそれが可能な実力が確かにある。
「あちらです」
アデライアの指し示す部屋の前には4人の兵士が固めていた。俺はそこでも同じ様に事情を話す。
「なに……皇女アデライアだと……!?」
「確かに本物だ……」
「そういう事だ。こっちもヴィンチェスター様の命令なんだ。部屋に入れてくれ」
そうして堂々と部屋へと入る。部屋にはディザイアが立っているだけであり、ウィックリンの姿は見えない。
おそらくその奥に見える扉の奥だろう。ディザイアはディアノーラの姿を確認すると、目を大きく見開いた。
「ディアノーラ……! それにアデライア様も……! 無事であったか……!」
扉を閉め、なるべく奥へと移動する。そこで俺たちは兜を脱いだ。
「!! お、お主らは……!」
「久しぶりだ、ディザイア殿」
「黒狼会……! そうか、お主らが……!」
ディザイアの言葉に、俺は首を横に振る。
「今日、この瞬間だけは。アデライア姫に雇われた群狼武風だ」
ガリグレッドはレクタリアとの間で感じていた繋がりが消えた事に驚きが隠せなかった。
ガリグレッドの元々の人格は幻想歴まで遡る。かつては女神シルヴェラが統治する国でシルヴェラの使徒として仕えていた。その時の名はジョナード。
ジョナードは以降、シルヴェラに与えられた魔法の力で自身の血族に転生を繰り返していた。
そして時は幻魔歴が終わって新鋼歴に入ったばかりの頃。テンブルク王国の国王だったジョナードはアルグローガの誘いに応じ、五国会談を経てゼルダンシア帝国の一部となる。
だが納得しての併合ではなかった。その時のジョナードには妹がいたが、半ば無理やりアルグローガに奪われたのだ。
妹はそのままアルグローガの子を身ごもり、帝都で人質の様な扱いを受けていた。
ジョナードは転生を繰り返す事で、いくつも戦乱を経験してきた。特に幻魔歴末期から新鋼歴近代までは本当に争いが多かったし、ジョナード自身その中で様々な感情に翻弄されてきた。
そして今の世になって、久しぶりにガリグレッドとして転生した時。幾星霜の時を経てシルヴェラと再会した時は、これは運命であると感じ入っていた。
「せっかく……! ここまできたというのに……!」
地下にいるレクタリアの反応が消えた理由。可能性としては2つしか考えられなかった。
魔法復活の儀式を行ったが、何らかのアクシデントにより儀式そのものが失敗したか。もしくは邪魔が入り、害されたかである。
「確認せねば……!」
ガリグレッドは城の一室から出る。その部屋には様々な貴重品が集めらえており、ガリグレッドはそこにある王の錫杖に用があったのだ。右手に錫杖を持ちながら階段を降りる。
(もしシルヴェラ様が、万が一にでも消滅という事態にあっていれば……! 私の転生魔法もその効力を失う事になる……!)
ガリグレッドの転生も、絶え間なく行える訳ではない。次いつ血族に転生するかはガリグレッド自身にも分からないのだ。
今の時代にシルヴェラと出会えたのは、本当に奇跡と偶然の産物であった。
「ガリグレッド様。今までどちらに? ヴィンチェスター様がお探しでしたよ。おや、その錫杖は……」
廊下でハイラント派の貴族とすれ違う。ガリグレッドは何とか平静を装いつつ、ヴィンチェスターの行き先を聞いた。
「ヴィンチェスター様は今どちらに?」
「皇宮へと行かれました。ウィックリン陛下の面会ついでに、次の后候補を見に行かれたのでしょう」
「そうですか」
本来であれば、この錫杖を簡易大幻霊石として用いる予定だった。
波動が満ちた時にもしヴィンチェスターが怪物と化していなければ、錫杖を使わせてもいいかと考えていたのだ。
だが今はその前提条件が覆された可能性があるし、ヴィンチェスターも呑気に皇宮へ行っている場合ではない。
(どうする……! いや、何をするにせよやはりシルヴェラ様の状態を確認するのが先決……! 私も地下に……!)
「おお、そこにおったか、ガリグレッドよ」
名を呼ばれて顔を上げると、そこにはヴィンチェスターがランダインとログバーツを伴って歩いてきていた。
「探しておったのだぞ。……む、それは! 王権の象徴たる錫杖ではないか……!」
「……は。魔法が復活した時には、ヴィンチェスター殿に必要になる物ですので。こうして探しておったのです」
「おお、そうか! では……」
その時だった。遠くで爆発音が響き、兵士の悲鳴が上がる。
「!?」
「なんだ!?」
広間にいる兵士や貴族たちも何事かと騒ぎ出す。そこに伝令の兵士が走ってきた。
「も、申し上げます! 皇宮より突如、反乱者が現れました……!」
「反乱者だとぉ!? アルフォース家か!?」
「い、いえ! それが……相手は6人でして……!」
「なにぃ!? たった6人にどうしてここまでの騒ぎになる! さっさと鎮圧せんか!」
ヴィンチェスターは怒りから伝令の兵士を怒鳴りつける。だが兵士は委縮しながらも震える声を振り絞った。
「そ、それが……! 奴ら、あまりに強すぎて……! とてもではありませんが、敵いません……!」
「な、なんだとぉ……!?」
■
レクタリアたちが地下に潜入してきたルートは、帝都貴族街……それも中心地に繋がっていた。
俺たちは物陰に隠れながら移動する。周囲にはルングーザ領とテンブルク領の領兵が多く巡回していた。
「完全に抑えられてんなぁ……」
「騎士団も直前に現れた獣や怪物の相手をしていたし、両軍を抑えきれなかったんだろうな」
俺たちはこの場から近いという事もあり、ディアノーラとアデライアに案内してもらって皇宮近くまで移動する。そこもやはり抑えられている様子だった。
「結構厳重だなぁ……」
「おそらく陛下を始め、主だった皇族を軟禁しているのではないだろうか」
「邪魔者はさっさと城から追い出そうってか」
ありそうではあるな。アデライアも不安げな視線を皇宮に向けている。
しかしここからどうしたものかね。とりあえずアデライアを連れて、貴族街を離れるのも手と言えば手だが。
「ヴェルトさま。そして黒狼会の皆さま」
アデライアは顔を上げ、しっかりとした口調で話す。
「この一度だけで構いません……! どうか群狼武風として、私に雇われていただけませんか……!」
「姫様!? それは一体……」
ディアノーラはアデライアの真意を確認する。
「このままヴィンチェスターを捨ておけないのです……! 何もゼルダンシア皇族による治世を継続させるためにお頼みするのではありません。相手はあの結社と手を組み、魔法や人の進化という曖昧な手段で新たに皇帝位を簒奪しようとする者。私にはそれが、ゼルダンシア皇族による治世よりも良いものだとはどうしても思えないのです……!」
言わんとする事は理解できる。ヴィンチェスターにせよ結社の口車にのせられただけだろう。自分の信念や誇りにかけての行動だとは思えない。
「で、このままめちゃくちゃな治世が行われる前に、城を取り戻して欲しいと」
「はい……! そ、その。激しい戦闘の後で大変お疲れなのは重々承知なのですが……!」
アデライアは心から申し訳なさそうに声をあげる。
「報酬は望むもの全て。私にできること、その全てを以てお支払いさせていただきます……! 私自身、皇族の末席に名を連ねる小娘に過ぎません。そんな私では、皆さまをお雇いできるほどの対価をお支払いできるとは限りません。ですが……!」
その声からは必死さが伝わってきた。フィンは面白そうにこっちを見てくる。
「どうするの、ヴェルト。姫様にここまで言わせてさ~」
ロイも静かに頷く。
「今だけは久しぶりに隊長とお呼びしましょうか?」
……ったく。みんなやる気じゃねぇか。
俺はアデライアの頭に手を乗せると、そのまま髪の毛をくしゃくしゃにした。
「ヴェルトさま……?」
「自分で自分の価値を落とす様な事は言うな。俺たちはアデライアだからこそ助けたいと思ったし、レクタリアと戦いもした。俺たちの雇い主だというのなら……群狼武風の主は、やっぱ誇れる人じゃないとな」
「…………!」
「アデライアのために、今日だけ群狼武風の再結集といこうか。ヴェルト隊隊長の俺がローガの代行を務める。異論は?」
「ないよ~」
「ねぇって」
「ありません」
「ない」
「ないのぅ」
こんなにきつい連戦は久しぶりだな。
だが過去にはもっと苦しい時もあったし、みんなこの程度の修羅場は何度も通ってきている。今さらここで止まる様な足も持っていない。
「それじゃ作戦会議といこうか。過去にもやった事があるアレでいこう」
「アレ?」
「敵の首魁の名は分かっているし、あいつらもまだ帝都を抑えたばかり。指令室の設置や情報伝達の経路など、まだ整っていないだろう。これまでやってきた潜入任務に比べたら、楽な部類だ」
■
俺たちは皇宮に向かって堂々と歩いていた。6人でアデライアとディアノーラ、それにリリアーナを囲む様に歩く。
皇宮の前に立つ兵士はこちらに気付き、声をあげた。
「止まれ! 一体なんだ、そいつらは!」
「逃走していた皇女アデライアを捕えた。護衛騎士のディアノーラ、それに侍女も一緒だ。ヴィンチェスター様より、ウィックリン陛下の部屋へとお連れする様に言われたのだが」
「なに……!?」
俺たちは物陰から兵士を襲い、その装備一式を剥ぎ取っていた。
今はテンブルク領の領軍に扮してアデライアを連行するという演技をしている。こうして正面から堂々と皇宮に乗り込む算段だった。
「本当だ……! 情報通り、目が赤いぞ!」
「侍女はフェルグレッド聖王国民か……!」
「ディアノーラも本物だな。正真正銘の皇族だ」
名を呼ばれたディアノーラは、強い眼差しを兵士に向ける。
「アデライア様をウィックリン陛下に会わせるという条件で、大人しくしているのだ。早く通すがよい」
「なにぃ……」
「本当だ。ヴィンチェスター様には既に許可をいただいている。早く通してくれんと、アルフォース家の剣士がいつ暴れるか分からんぞ」
「わ、わかった。通るがいい」
俺たちはそのまま皇宮へと足を踏み入れる。そのままアデライアの指示に従って廊下を歩いた。
「うまくいったねー!」
「指示の確認をする符丁が無かったところを見るに、坊の言う通りまだ体制を整えておらんようじゃのう」
「ま、駄目なら駄目で、正面突破するだけだったがな!」
血の気が多い意見だ。だが今の俺たちにはそれが可能な実力が確かにある。
「あちらです」
アデライアの指し示す部屋の前には4人の兵士が固めていた。俺はそこでも同じ様に事情を話す。
「なに……皇女アデライアだと……!?」
「確かに本物だ……」
「そういう事だ。こっちもヴィンチェスター様の命令なんだ。部屋に入れてくれ」
そうして堂々と部屋へと入る。部屋にはディザイアが立っているだけであり、ウィックリンの姿は見えない。
おそらくその奥に見える扉の奥だろう。ディザイアはディアノーラの姿を確認すると、目を大きく見開いた。
「ディアノーラ……! それにアデライア様も……! 無事であったか……!」
扉を閉め、なるべく奥へと移動する。そこで俺たちは兜を脱いだ。
「!! お、お主らは……!」
「久しぶりだ、ディザイア殿」
「黒狼会……! そうか、お主らが……!」
ディザイアの言葉に、俺は首を横に振る。
「今日、この瞬間だけは。アデライア姫に雇われた群狼武風だ」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる