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お母さまの見る世界
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「姫様。よろしかったので?」
「……なにが?」
「このまま黒狼会に滞在することですよぅ」
フランメリアは割り当てられた部屋でエルナーデと話していた。アーノックと合わせ、それぞれ個室を与えられている。
「良いも何も。これ以外に選択肢はないわ。それにメリットもある」
「それはそうですが。事態が動かない可能性もありますです」
「それも加味した上で……よ」
当初はガラム島への帰還を考えていたが、元々上手く帰れる可能性は高いとは言えなかった。
土地勘もなく、金や食糧のやりくりを行い、そして追手にも気を払いながらカルガーム領を目指さなくてはいけなかったのだから。
その点を考えると、今の状況はいくらかマシと言えた。何せディンを撃退できるヴェルトがここにはいるのだし、黒狼会自体も相当な情報収集力を持っている。
何よりヴェルト自身が戦争に否定的なため、フランメリアたちと目的はぶつからないのだ。
だがこのまま屋敷でずっと匿われている……というのも、何もしていない様な気がしてくる。フランメリアはエルナーデの焦りも理解できた。
「ヴェルトは貴族と個人的な伝手も持っている。私の事を話すかはともかく、ここで情報を得るにせよカルガーム領へ向かうにせよ、ヴェルトの力を借りた方が良いのは間違いないわよ」
「頭では分かっているのですが……」
エルナーデもエルナーデで懸念がある。ディンは何らかの方法で自分たちの潜伏場所を見つける手段を持っている。おそらく魔法に通じる何かだろうが、それを防ぐ手段は何も持っていないのだ。
そしてディンの組織と聖武国の貴族で繋がりが見えている以上、本格的な戦争になる前に何とか両者に手を打ちたい。だがそのためのカードが何もそろっていない。
「……今は仕方がないわ。でも。状況はいずれ必ず動く。その時に私たちが何をすべきなのか。決して誤らない様に、常に最善の行動は何かを考え抜きましょう」
フランメリアは故郷のガラム島を脳裏に描く。
(お父様……。どうか早まった真似はしないでください……)
これが両国の誇りを賭けた戦いならともかく、神を信奉するあやし気な組織が裏で暗躍しているのだ。誰かの手の平で踊りながらの戦争など、王族としての矜持が絶対に許さない。
「それと。十中八九、ヴェルトはウィックリンと繋がっているわ」
「……ですね」
「それにアデライアの赤い眼。思い出したのだけれど、あれ多分古の巫女の特徴よね? フォルトガラム聖武国でも昔は赤い眼の巫女が大幻霊石を奉っていたし」
「はいです。それにアデライア様は、生まれながらの赤眼持ちではないとのこと。およそ1年前に急に発現したらしいのですよ。推測ですが……」
「この時代に来たヴェルトたちと何か繋がりがある……か」
魔法や大幻霊石の事など、もはや詳しく知る者など誰もいない。ここでその事に対して考えても、何も結論は出ないだろう。それよりも重要なところは。
「黒狼会と皇族。両者がどれだけの距離感なのかは分からないけど、常に情報を共有している間柄という訳でもなさそうね」
「ですです。もしそうなら、ヴェルト殿は初めから何があったのかご存じだったはずなのですよ」
「……まぁ良いわ。折を見て直接聞けば済む事だし」
状況に頭が追い付いていないのは、こちらも同じなのだ。ヴェルトも今は事態の把握に向け、方々に手を回しているだろう。
やはり今はここで情報がそろうのを待つしかない。フランメリアはそう考え、小さく息を吐いた。
■
「……以上です」
世界新創生神幻会の本拠地では、グリノがお母さまに報告を行っていた。内容はディンたちが帝都で遭遇した男。ヴェルトについてだ。
『なぁに、それ。気になる報告ねぇ』
「はい。エル=ダブラスの一員かとも考えたのですが……」
『それはないわ。だってエル=ダブラスの技術を昇華させたシルヴェラでさえ、魔法に似た何かを生み出すに終わっているもの。それにぃ。話を聞く限り、その男の力は間違いなく魔法そのもの。……どういう事かしら?』
グリノはお母さまの態度に若干の驚きを感じていた。
いつも奔放な印象があるが、今は真面目にグリノの報告を聞いているし、真剣に思考している節が見られる。
『……なぁんか嫌な感じがするのよねぇ』
「嫌な感じ……ですか?」
『ええ。私の手から逃げて幻霊武装を顕現させたミニリス。それにスランも死んだし、その黒甲冑の男の件もあるわ。そしてその男の正体について、こちらには何も情報がないのだもの』
グリノが知る限り、ここまで誰かを警戒しているお母さまは初めて見る。それだけに気になるところもあった。
「……お母さま。おっしゃっていただければ、私がその男を葬ってきますが」
『んくくく……。グリノが? まぁ確かに、相手が本物の魔法使いだった場合、勝てるのはあなたを含めたごく一部の子どもに限られるでしょうけど……』
グリノが気になる点。それは少し話を聞いただけのお母さまが、男を異様に警戒している点だった。
例え相手が魔法使いであろうと、それはこちらも同じこと。ディンは勝てなかったとはいえ、死んでない以上、完全に負けた訳でもないのだ。それに武器を交えての接近戦で不利だというのなら、詠者の魔法を使えばいい話でもある。
そう考えていたが、お母さまはほとんどの子どもたちに勝ち目がないと考えている様だった。
「……他の者たちでは不可能だと?」
『難しいでしょうね。ああ、これは別にあなたたちが役立たずだと言っている訳ではないわよ? ただもしその男が何かしらの手段で波動由来……つまり昔ながらの方法で魔法を使えるというのなら。幻霊由来の魔法とは違い、成長する性質がある』
「波動……?」
グリノの疑問にお母さまが応える事はなかった。
『幻霊由来は量産性に優れているし、一度設定が完了すれば後はフォーマット通りに調整できる利点があるのだけれど。それ以上の発展性がないのが欠点なのよねぇ。だからこそ最初期は安定性よりも、より尖った性能を目指してグリノの様な子どもを作れたのだけれど……』
「……お母さま?」
『ああ、なんだったかしら? そう、あなたが黒甲冑の男をどうにかするという話だったわね。……王女様は視える?』
「視ようと思えば可能です」
グリノは対象の髪があれば、遠視の能力でその姿を捉える事ができる。しかし毛髪は古過ぎては使えないし、対象の場所が離れれば離れるほど景色はあやふやになり、眼球にも痛みが生じるという特徴があった。
その事をしっかりと認識した上で、お母さまはグリノに命じる。
『そう。それじゃ視てくれる?』
「……はい」
グリノは懐から布に包まれたフランメリアの毛髪を取り出し、お母さまに言われた通り遠視をしようと集中し始める。
「…………っ」
眼球の奥から鈍い痛みが広がり始める。だが今、グリノの眼は確かに遠く離れたフランメリアの姿を捉えていた。
「く……。み、視え、ました……。どこかの……屋敷にいます。従者も、一緒です……」
グリノの右目からうっすらと血が滲み始める。遠見は対象の場所が離れていなければ痛みなど何も起こらないが、さすがに帝都を視るというのはグリノと言えど難しい事だった。
『ふぅん? という事は、まだ帝都を出てはいないのね。黒甲冑の男に匿われているのかしら? ……他に何か手がかりはない?』
「は……い。何か、話して……います」
グリノはフランメリアとエルナーデの唇の動きから、おおよその言葉を聞きとっていく。
「黒狼会……それ、に……。赤い……眼……」
『…………!!』
「くぅ……っ!」
グリノは両目を閉じ、その場で片膝をついた。閉じられた瞼からは血が流れている。
『便利な能力なんだけど、欠点が大きいわねぇ』
「……ごめ……なさ……」
『良いわ。それよりぃ。赤い眼について詳しく話してくれるかしら?』
お母さまはグリノの状態など気にした素振りも見せず、得た情報について詳細な報告を促す。グリノは両目を手で抑えながら口を開いた。
「……アデライアという方の眼について話している様子でした。巫女とか大幻霊石とも言っていた様な……。後は生まれながらの赤眼持ちではないとか……」
『すごいわグリノ! お手柄よ!』
「……え」
『さすが私の自慢の子どもね! んくくくく……! そう、そういう事だったのね……! 波動制御因子を受け継ぐ者が、今の時代にその血を急に覚醒させた……! 黒甲冑の男はゼルダンシアの大幻霊石によって祝福を得た魔法使い……!? でもやっぱり分からないわね……! 大幻霊石は確かに砕けているはずだもの! 気になるわぁ! 何より! 今の時代に波動制御因子を目覚めさせた巫女が出現するなんて……! 使い様によっては、私の手で扉を開ける事も可能っ……!』
お母さまは興奮を抑えられない様子で早口でまくしたてていた。だがグリノはそのほとんどの言葉を聞いておらず、その頭には褒められた場面が何度もリピートされている。
(お母さまが……私を自慢の子だと……)
その心が幸福感で満たされていく。眼球にも今は痛みを感じていなかった。
『幻霊由来で魔法を創造できる今、絶対必要という訳ではないのだけれど……! でもまたどこかでシルヴェラが復活しても厄介だし……! やっぱり私の手元で研究素材として欲しいわね……!』
お母さまはお母さまで、シルヴェラ……レクタリアが中心になって結成された組織、エル=グナーデの足取りを追っていた。そしてエル=グナーデが帝国にある何かを狙っていた事も分かっている。
『おそらくシルヴェラは、アデライアという巫女を手中に収めようとして失敗した……! 対抗組織のエル=ダブラスに敗れたものと思っていたけれど……! 黒甲冑の男も絡んでいるのかしら!? んくくくくく……! グリノ! エルオネルと繋いでちょうだい!』
「エルオネル様ですか?」
『そうよぅ! 開戦をすこーし遅らせるの! いろいろ知りたい事ができたしぃ! ま、遅らせられなければ、それはそれで構わないんだけれどね!』
自分の頑張りにより、お母さまは何か大きな気づきを得た。褒めてもらえたし、お母さまの役に立てたという実感がグリノの中でより強くなっていく。
『んくくく……! 女神が統治する世界、その新たなヴィジョンが見えてきたわぁ! ザラークはやっぱり起動できそうにないしぃ。巡洋艦の起動と身体の完成を優先させましょう!』
「……なにが?」
「このまま黒狼会に滞在することですよぅ」
フランメリアは割り当てられた部屋でエルナーデと話していた。アーノックと合わせ、それぞれ個室を与えられている。
「良いも何も。これ以外に選択肢はないわ。それにメリットもある」
「それはそうですが。事態が動かない可能性もありますです」
「それも加味した上で……よ」
当初はガラム島への帰還を考えていたが、元々上手く帰れる可能性は高いとは言えなかった。
土地勘もなく、金や食糧のやりくりを行い、そして追手にも気を払いながらカルガーム領を目指さなくてはいけなかったのだから。
その点を考えると、今の状況はいくらかマシと言えた。何せディンを撃退できるヴェルトがここにはいるのだし、黒狼会自体も相当な情報収集力を持っている。
何よりヴェルト自身が戦争に否定的なため、フランメリアたちと目的はぶつからないのだ。
だがこのまま屋敷でずっと匿われている……というのも、何もしていない様な気がしてくる。フランメリアはエルナーデの焦りも理解できた。
「ヴェルトは貴族と個人的な伝手も持っている。私の事を話すかはともかく、ここで情報を得るにせよカルガーム領へ向かうにせよ、ヴェルトの力を借りた方が良いのは間違いないわよ」
「頭では分かっているのですが……」
エルナーデもエルナーデで懸念がある。ディンは何らかの方法で自分たちの潜伏場所を見つける手段を持っている。おそらく魔法に通じる何かだろうが、それを防ぐ手段は何も持っていないのだ。
そしてディンの組織と聖武国の貴族で繋がりが見えている以上、本格的な戦争になる前に何とか両者に手を打ちたい。だがそのためのカードが何もそろっていない。
「……今は仕方がないわ。でも。状況はいずれ必ず動く。その時に私たちが何をすべきなのか。決して誤らない様に、常に最善の行動は何かを考え抜きましょう」
フランメリアは故郷のガラム島を脳裏に描く。
(お父様……。どうか早まった真似はしないでください……)
これが両国の誇りを賭けた戦いならともかく、神を信奉するあやし気な組織が裏で暗躍しているのだ。誰かの手の平で踊りながらの戦争など、王族としての矜持が絶対に許さない。
「それと。十中八九、ヴェルトはウィックリンと繋がっているわ」
「……ですね」
「それにアデライアの赤い眼。思い出したのだけれど、あれ多分古の巫女の特徴よね? フォルトガラム聖武国でも昔は赤い眼の巫女が大幻霊石を奉っていたし」
「はいです。それにアデライア様は、生まれながらの赤眼持ちではないとのこと。およそ1年前に急に発現したらしいのですよ。推測ですが……」
「この時代に来たヴェルトたちと何か繋がりがある……か」
魔法や大幻霊石の事など、もはや詳しく知る者など誰もいない。ここでその事に対して考えても、何も結論は出ないだろう。それよりも重要なところは。
「黒狼会と皇族。両者がどれだけの距離感なのかは分からないけど、常に情報を共有している間柄という訳でもなさそうね」
「ですです。もしそうなら、ヴェルト殿は初めから何があったのかご存じだったはずなのですよ」
「……まぁ良いわ。折を見て直接聞けば済む事だし」
状況に頭が追い付いていないのは、こちらも同じなのだ。ヴェルトも今は事態の把握に向け、方々に手を回しているだろう。
やはり今はここで情報がそろうのを待つしかない。フランメリアはそう考え、小さく息を吐いた。
■
「……以上です」
世界新創生神幻会の本拠地では、グリノがお母さまに報告を行っていた。内容はディンたちが帝都で遭遇した男。ヴェルトについてだ。
『なぁに、それ。気になる報告ねぇ』
「はい。エル=ダブラスの一員かとも考えたのですが……」
『それはないわ。だってエル=ダブラスの技術を昇華させたシルヴェラでさえ、魔法に似た何かを生み出すに終わっているもの。それにぃ。話を聞く限り、その男の力は間違いなく魔法そのもの。……どういう事かしら?』
グリノはお母さまの態度に若干の驚きを感じていた。
いつも奔放な印象があるが、今は真面目にグリノの報告を聞いているし、真剣に思考している節が見られる。
『……なぁんか嫌な感じがするのよねぇ』
「嫌な感じ……ですか?」
『ええ。私の手から逃げて幻霊武装を顕現させたミニリス。それにスランも死んだし、その黒甲冑の男の件もあるわ。そしてその男の正体について、こちらには何も情報がないのだもの』
グリノが知る限り、ここまで誰かを警戒しているお母さまは初めて見る。それだけに気になるところもあった。
「……お母さま。おっしゃっていただければ、私がその男を葬ってきますが」
『んくくく……。グリノが? まぁ確かに、相手が本物の魔法使いだった場合、勝てるのはあなたを含めたごく一部の子どもに限られるでしょうけど……』
グリノが気になる点。それは少し話を聞いただけのお母さまが、男を異様に警戒している点だった。
例え相手が魔法使いであろうと、それはこちらも同じこと。ディンは勝てなかったとはいえ、死んでない以上、完全に負けた訳でもないのだ。それに武器を交えての接近戦で不利だというのなら、詠者の魔法を使えばいい話でもある。
そう考えていたが、お母さまはほとんどの子どもたちに勝ち目がないと考えている様だった。
「……他の者たちでは不可能だと?」
『難しいでしょうね。ああ、これは別にあなたたちが役立たずだと言っている訳ではないわよ? ただもしその男が何かしらの手段で波動由来……つまり昔ながらの方法で魔法を使えるというのなら。幻霊由来の魔法とは違い、成長する性質がある』
「波動……?」
グリノの疑問にお母さまが応える事はなかった。
『幻霊由来は量産性に優れているし、一度設定が完了すれば後はフォーマット通りに調整できる利点があるのだけれど。それ以上の発展性がないのが欠点なのよねぇ。だからこそ最初期は安定性よりも、より尖った性能を目指してグリノの様な子どもを作れたのだけれど……』
「……お母さま?」
『ああ、なんだったかしら? そう、あなたが黒甲冑の男をどうにかするという話だったわね。……王女様は視える?』
「視ようと思えば可能です」
グリノは対象の髪があれば、遠視の能力でその姿を捉える事ができる。しかし毛髪は古過ぎては使えないし、対象の場所が離れれば離れるほど景色はあやふやになり、眼球にも痛みが生じるという特徴があった。
その事をしっかりと認識した上で、お母さまはグリノに命じる。
『そう。それじゃ視てくれる?』
「……はい」
グリノは懐から布に包まれたフランメリアの毛髪を取り出し、お母さまに言われた通り遠視をしようと集中し始める。
「…………っ」
眼球の奥から鈍い痛みが広がり始める。だが今、グリノの眼は確かに遠く離れたフランメリアの姿を捉えていた。
「く……。み、視え、ました……。どこかの……屋敷にいます。従者も、一緒です……」
グリノの右目からうっすらと血が滲み始める。遠見は対象の場所が離れていなければ痛みなど何も起こらないが、さすがに帝都を視るというのはグリノと言えど難しい事だった。
『ふぅん? という事は、まだ帝都を出てはいないのね。黒甲冑の男に匿われているのかしら? ……他に何か手がかりはない?』
「は……い。何か、話して……います」
グリノはフランメリアとエルナーデの唇の動きから、おおよその言葉を聞きとっていく。
「黒狼会……それ、に……。赤い……眼……」
『…………!!』
「くぅ……っ!」
グリノは両目を閉じ、その場で片膝をついた。閉じられた瞼からは血が流れている。
『便利な能力なんだけど、欠点が大きいわねぇ』
「……ごめ……なさ……」
『良いわ。それよりぃ。赤い眼について詳しく話してくれるかしら?』
お母さまはグリノの状態など気にした素振りも見せず、得た情報について詳細な報告を促す。グリノは両目を手で抑えながら口を開いた。
「……アデライアという方の眼について話している様子でした。巫女とか大幻霊石とも言っていた様な……。後は生まれながらの赤眼持ちではないとか……」
『すごいわグリノ! お手柄よ!』
「……え」
『さすが私の自慢の子どもね! んくくくく……! そう、そういう事だったのね……! 波動制御因子を受け継ぐ者が、今の時代にその血を急に覚醒させた……! 黒甲冑の男はゼルダンシアの大幻霊石によって祝福を得た魔法使い……!? でもやっぱり分からないわね……! 大幻霊石は確かに砕けているはずだもの! 気になるわぁ! 何より! 今の時代に波動制御因子を目覚めさせた巫女が出現するなんて……! 使い様によっては、私の手で扉を開ける事も可能っ……!』
お母さまは興奮を抑えられない様子で早口でまくしたてていた。だがグリノはそのほとんどの言葉を聞いておらず、その頭には褒められた場面が何度もリピートされている。
(お母さまが……私を自慢の子だと……)
その心が幸福感で満たされていく。眼球にも今は痛みを感じていなかった。
『幻霊由来で魔法を創造できる今、絶対必要という訳ではないのだけれど……! でもまたどこかでシルヴェラが復活しても厄介だし……! やっぱり私の手元で研究素材として欲しいわね……!』
お母さまはお母さまで、シルヴェラ……レクタリアが中心になって結成された組織、エル=グナーデの足取りを追っていた。そしてエル=グナーデが帝国にある何かを狙っていた事も分かっている。
『おそらくシルヴェラは、アデライアという巫女を手中に収めようとして失敗した……! 対抗組織のエル=ダブラスに敗れたものと思っていたけれど……! 黒甲冑の男も絡んでいるのかしら!? んくくくくく……! グリノ! エルオネルと繋いでちょうだい!』
「エルオネル様ですか?」
『そうよぅ! 開戦をすこーし遅らせるの! いろいろ知りたい事ができたしぃ! ま、遅らせられなければ、それはそれで構わないんだけれどね!』
自分の頑張りにより、お母さまは何か大きな気づきを得た。褒めてもらえたし、お母さまの役に立てたという実感がグリノの中でより強くなっていく。
『んくくく……! 女神が統治する世界、その新たなヴィジョンが見えてきたわぁ! ザラークはやっぱり起動できそうにないしぃ。巡洋艦の起動と身体の完成を優先させましょう!』
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