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第一話 ~前途多難な初めまして~
01 (秋守)
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『再婚に伴って、秋には同い年の妹が出来るんだ』
父さんの口から零れた衝撃の事実に驚かされて以来、期待に近くて不安にも遠くない心音をいくつほど打ったのかな。
一体どんな子が家族になるんだろう? 仲良くしたいな。と言った高揚感。
クラスでも女の子とはあんまり話さないからなぁ……。変なことを口にしないように気を付けよう。と言った緊張感。
二つの感情をうろうろと彷徨って、こんな状態じゃ実際に対面した時はどれほどまでに浮ついた気分になってしまうのか不安だったけれど。
玄関に立つ二人の女性、特に『妹』となる子を目にした今、思考が停止してしまった。
柔らかい栗色の髪を二つ括りにして、少しばかり俯いている瞳。良く知っている、見慣れた飛生高校の制服を纏った彼女。
分かってはいたけれど、本当に同い年の子が家族になるんだ……!
「……き、あき、秋っ?」
「えっ!? な、何!?」
「ぼーっとしてないで挨拶しろよ」
「あっ! あの、えっと、俺、澄田秋守と言います。……って、今日からは皆が澄田になるんだっけ」
自己紹介した後に、苗字は名乗らなくて良かったんじゃないかと思ってぽろっと口にすると、おばさんは高い声で可愛らしく笑った。
「そうよー、あっくんってば可愛いんだから! 既に知っているとは思うけれど、改めてこっちも自己紹介するわね。アタシがあっくんのママになるまみでーす! それと、この子が……ほら、喋りなさいよ」
おばさんことお母さん、と呼ぶのはまだ抵抗があるのでまみさんと呼ぶけれど、彼女は娘を肘で小突く。
それでもその子は冷たい目をしたまま、ちらっとこちらを見て軽く会釈をするだけ。
「もうっ、ごめんなさいね。この子は夏歩。ちょーっとばかり人見知りが激しくって」
その言葉にほっと落ち着く心。なるほど、人見知りだからさっきから何も喋らないんだ。
俺も人付き合いが得意な方では無いから、無駄に明るい子が妹として現れたらどうしようかと不安だった。
人見知りしてしまうくらいに大人しい子の方が仲良くなれる気がするから、良かったよ。
「父さんはまみの荷物を運ぶから、お前は夏歩の荷物を運んで、部屋にも案内してあげてな」
そう言って、外に停めてある車に向かう父さんの後に全員が続く。
ワンボックスカーに詰まった段ボールの山を目の前にして、思わず零れかけた溜め息を飲み込む。よくもまぁ、これだけの荷物を積んでここまで運転してこられたなぁ。
どの箱が誰の物かを選別して運び出すよりか、とりあえず一つずつ下して行った方が作業の効率が良いかな。
そう思って手前の最上部にあった物を運ぼうとした時、
「それ、私の荷物だから持つわ」
そっと差し出された白くて細い腕と小さな声に、思わず心臓が跳ね上がってしまう。
女の子と話すのは得意じゃないけれど、全く受け付けない訳じゃない。学校に通っていればどうしたって異性と接する機会はあるから。
なのに、どうしてこの子にはこんなにも緊張してしまうんだろう?
家族と言う特別な間柄になるから? ……いや、違う。何かが違うな。
「引っ越してきたばかりで疲れてるだろうし、俺が持つよ。あ、だったら他の軽い物を持って来てもらっていいかな」
「それしかないわ」
「え?」
「私の荷物はその一箱だけ。後は全部、あの人のだから」
腕の中に抱えている茶色の箱は決して重たくない。むしろ軽いと呼んだ方が相応しいこの荷物の量に呆気に取られてしまう。
だって女の子って服やら雑貨やら、何かと私物が多い物なんじゃないのかな……?
「そ、そうなんだ? でも案内も兼ねて部屋まで運ぶよ」
廊下を歩いて二階へと繋がる階段に足を乗せると、木材がミシミシと音を立てる。
背中に感じる視線に、必要以上に緊張してしまう。うわぁ、古い家……と思ってるのかな。
もっと綺麗で新しい家が良かったと、内心で嫌がられていそうだ。
今日までにどうにかこうにか荷物を運び出した元物置の扉を開けて、そっと下した段ボール。
後に続いた彼女は相変わらず冷たい目のまま、きょろきょろと室内を見回す。
用意しておいた布団が一式置いてあるだけで、後は何も無い状況はまずかったかな? こんな家は嫌だと思われていそうで、物凄く不安。
「えー……と、ここが部屋ね。あっ、父さんとまみさんの部屋と、風呂とか台所とかの水回り関係は一階にあるんだ。それと、ベランダはここの突き当りの戸を開けた所だから!」
まるで旅館の仲居さんのように、家の内部について説明する自分の慌て具合に情けなさを感じる。
この子と仲良くなりたいのに。
今日から家族になるとのことだから、ぎこちないながらも軽く笑ってもらいたいのに。
だけど冷たい反応ばかりが返って来るものだから、どう対応したらいいのかが分からない。
父さんの口から零れた衝撃の事実に驚かされて以来、期待に近くて不安にも遠くない心音をいくつほど打ったのかな。
一体どんな子が家族になるんだろう? 仲良くしたいな。と言った高揚感。
クラスでも女の子とはあんまり話さないからなぁ……。変なことを口にしないように気を付けよう。と言った緊張感。
二つの感情をうろうろと彷徨って、こんな状態じゃ実際に対面した時はどれほどまでに浮ついた気分になってしまうのか不安だったけれど。
玄関に立つ二人の女性、特に『妹』となる子を目にした今、思考が停止してしまった。
柔らかい栗色の髪を二つ括りにして、少しばかり俯いている瞳。良く知っている、見慣れた飛生高校の制服を纏った彼女。
分かってはいたけれど、本当に同い年の子が家族になるんだ……!
「……き、あき、秋っ?」
「えっ!? な、何!?」
「ぼーっとしてないで挨拶しろよ」
「あっ! あの、えっと、俺、澄田秋守と言います。……って、今日からは皆が澄田になるんだっけ」
自己紹介した後に、苗字は名乗らなくて良かったんじゃないかと思ってぽろっと口にすると、おばさんは高い声で可愛らしく笑った。
「そうよー、あっくんってば可愛いんだから! 既に知っているとは思うけれど、改めてこっちも自己紹介するわね。アタシがあっくんのママになるまみでーす! それと、この子が……ほら、喋りなさいよ」
おばさんことお母さん、と呼ぶのはまだ抵抗があるのでまみさんと呼ぶけれど、彼女は娘を肘で小突く。
それでもその子は冷たい目をしたまま、ちらっとこちらを見て軽く会釈をするだけ。
「もうっ、ごめんなさいね。この子は夏歩。ちょーっとばかり人見知りが激しくって」
その言葉にほっと落ち着く心。なるほど、人見知りだからさっきから何も喋らないんだ。
俺も人付き合いが得意な方では無いから、無駄に明るい子が妹として現れたらどうしようかと不安だった。
人見知りしてしまうくらいに大人しい子の方が仲良くなれる気がするから、良かったよ。
「父さんはまみの荷物を運ぶから、お前は夏歩の荷物を運んで、部屋にも案内してあげてな」
そう言って、外に停めてある車に向かう父さんの後に全員が続く。
ワンボックスカーに詰まった段ボールの山を目の前にして、思わず零れかけた溜め息を飲み込む。よくもまぁ、これだけの荷物を積んでここまで運転してこられたなぁ。
どの箱が誰の物かを選別して運び出すよりか、とりあえず一つずつ下して行った方が作業の効率が良いかな。
そう思って手前の最上部にあった物を運ぼうとした時、
「それ、私の荷物だから持つわ」
そっと差し出された白くて細い腕と小さな声に、思わず心臓が跳ね上がってしまう。
女の子と話すのは得意じゃないけれど、全く受け付けない訳じゃない。学校に通っていればどうしたって異性と接する機会はあるから。
なのに、どうしてこの子にはこんなにも緊張してしまうんだろう?
家族と言う特別な間柄になるから? ……いや、違う。何かが違うな。
「引っ越してきたばかりで疲れてるだろうし、俺が持つよ。あ、だったら他の軽い物を持って来てもらっていいかな」
「それしかないわ」
「え?」
「私の荷物はその一箱だけ。後は全部、あの人のだから」
腕の中に抱えている茶色の箱は決して重たくない。むしろ軽いと呼んだ方が相応しいこの荷物の量に呆気に取られてしまう。
だって女の子って服やら雑貨やら、何かと私物が多い物なんじゃないのかな……?
「そ、そうなんだ? でも案内も兼ねて部屋まで運ぶよ」
廊下を歩いて二階へと繋がる階段に足を乗せると、木材がミシミシと音を立てる。
背中に感じる視線に、必要以上に緊張してしまう。うわぁ、古い家……と思ってるのかな。
もっと綺麗で新しい家が良かったと、内心で嫌がられていそうだ。
今日までにどうにかこうにか荷物を運び出した元物置の扉を開けて、そっと下した段ボール。
後に続いた彼女は相変わらず冷たい目のまま、きょろきょろと室内を見回す。
用意しておいた布団が一式置いてあるだけで、後は何も無い状況はまずかったかな? こんな家は嫌だと思われていそうで、物凄く不安。
「えー……と、ここが部屋ね。あっ、父さんとまみさんの部屋と、風呂とか台所とかの水回り関係は一階にあるんだ。それと、ベランダはここの突き当りの戸を開けた所だから!」
まるで旅館の仲居さんのように、家の内部について説明する自分の慌て具合に情けなさを感じる。
この子と仲良くなりたいのに。
今日から家族になるとのことだから、ぎこちないながらも軽く笑ってもらいたいのに。
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