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木山すみれ

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木山すみれは兄の影響で幼き日から野球を始め、少年野球チームに所属していた。
小学生の時は男子以上に活躍し、レギュラーメンバーとして試合に出ていたが、中学になるとその差は無くなり、すぐに抜かれてしまった。
負けず嫌いのすみれは必死に努力したが、決して差が縮まる事はなかった。
チームメイトの男子は皆高校の硬式野球部に所属し、甲子園を目指す事になったが、女子は出場資格がないので
すみれは女子の硬式野球部がある咲聖学園に入学した。

だが、咲聖学園は所謂強豪校ではなく、部員もまともにいなかった。
すみれが一年、二年のときは、9人集められずにチーム編成が出来ず、大会に出られない生徒の中で、実力のあるものを寄せ集めた選抜チームから大会に出場した。

その後、すみれの努力もあり、徐々に野球部の部員は増え、今年は正式に学校単位で大会出場を果たす見込みであった。だが、強豪校との実力差はすみれが想像する以上に開いており、練習試合では全く歯が立たなかった。

すみれ自身は十分に通用する実力を兼ね備えていたが、野球はチームスポーツであり、一人ではどうにもならなかった。

三年になってもまた同じ結果になる、そう思っていた矢先に、同級生の優里が野球部に入部してきた。

奇跡、僥倖、神からの贈り物‥ 何と表現すればいいのか

優里の突然の登場は、すみれにとってまさに衝撃的な出来事だった。

「これで勝てる!」

すみれは歓喜した。

だが、問題があった。女子野球の世界ではトップレベルの実力といわれたすみれをして、優里の球をキャッチする事が出来なかったのである。

ど真ん中のストレートはともかく、コーナーを突く球を捕球しようとすると、直前でホップしエラーしてしまうのである。
また、キレの鋭いカーブやスライダーは、わかっていてもその軌道に付いていけずに、後逸する事が度々あった。

すみれは千載一遇のこの好機を絶対に手放す事は出来ないと、猛練習を重ね、一カ月もすると正確に捕球できるようになった。

これで心配事は無くなったかに思われたが、意外なところから綻びが出た。

それは、優里の健康状態であった。

普段あまり体調が優れない様子で、練習を休む日がかならず週に一度、二度あった。

走るのも辛そうで、時折り胸を押さえて立ち止まってしまう事もあった。

その度に心配して駆け寄るすみれだったが、優里は大丈夫と言うばかりで、それ以上は何も話そうとしなかった。



しかし、或る日曜日に優里と二人で自主練をし、一緒に帰る途中、徐に優里が信じられない言葉を発したのだった。

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