78 / 147
尽力
しおりを挟む
「ストライッ!」
優里のストレートに、興院の三番バッター清村が空振りをした。
大輔は頷き、ボールを優里に返した。
しかし、さっきまでとは違い、ボールに勢いがなくなっている。
この回、何としても無失点に抑え試合を終わらせなければならない。
万が一同点にされてもう一イニングとなれば、望み薄の咲聖下位打線に比べ、興院は疲れ果てた優里の球を打つのは間違いない
大輔はそう感じ、祈るような思いで次のボールを待った。
二球目のカーブは清村が上手くタイミングを合わせて拾ったが、レフトのポールから僅か左に切れていく大ファールとなり、期せずして追い込めた。
大輔は一球ストレート高めに外そうとしたが、優里が首を振った。
(勝負?)
大輔がストレートのサインを出してストライクゾーンの内側でミットを構えると、ようやく優里は頷いた。
そして、華奢な体を大きくしならせて投げた三球目は…
「ストライッ!」
清村はバットが出ず、三球三振に倒れると、天を仰いだ。
大輔はその球の威力に驚きを見せたが、一番驚いたのは監督の村上だった。
(水谷…ここに来てギアを上げてきた。
どこにそんな力が残ってたんだ…)
続く四番の杉山は清村への投球を見て、気合いを入れ直してバ右ッターボックスに入った。
(一死二塁…四番か
三番に強硬策を命じておいてここでのバントはない。
真っ向勝負)
大輔はストレートを要求
優里も頷いて、第一球を投じた。
「ストライっ!」
清村が三振した球よりエグいストレートが内角に決まり、杉山は手を出さなかった。
いや、手が出なかったのだ。
(今度は外に…)
大輔は外角ボールゾーンに構えた。
優里は頷き、第二球をサイン通り外角に投げた。
しかし、大輔の要求したコースよりボール一個分内に入ってきた。
杉山は思わずバットを出したが、ミートせず、一塁スタンドに入るファールとなった。
三球目は…
ギアを上げた優里のボールはまだまだ威力があったが、球数を放らせたくない
それが大輔の思いであった。
(三球目は高めにボール二個分外す)
これに手を出してくれれば…
大輔の意図を即座に理解した優里はまた頷き、さらに力を込めて要求通りのコースを突いた。
打つには少し高すぎる球が来たが、その威力によりバットを出さざるを得ず、杉山はコンパクトに振った。
金属音が鳴り響き、打球は優里の頭上を越えていった。
だが、センターの久本はほぼ動かず、平凡なフライとなった打球を難なくキャッチした。
ツーアウト
あと一人
出来過ぎた内容に大輔は、手応えを感じると共に、優里の状態を心配した。
しかし、視線の先の優里はバックを守る内、外野に向かって、あと一人だと言わんばかりに、ツーアウトのジェスチャーをし、皆を鼓舞した。
そして、優里はゆっくりと向き直り、大輔の方に視線を向けた。
(…)
大輔は優里の表情を見て、いけるという自信を持った。
五番の内藤は今日猛打賞で、その全てが長打という一番怖い打者だった。
しかし、それはあくまでも岸が打たれたもの。
最後の場面で集中力を発揮する優里にとっては、前の打者達とそう差はない。
大輔は初球からストレートで行くように指示。
優里も頷き、二塁ランナーを目で牽制しながら目一杯の力を注ぎ、そして投げ込んだ。
優里のストレートに、興院の三番バッター清村が空振りをした。
大輔は頷き、ボールを優里に返した。
しかし、さっきまでとは違い、ボールに勢いがなくなっている。
この回、何としても無失点に抑え試合を終わらせなければならない。
万が一同点にされてもう一イニングとなれば、望み薄の咲聖下位打線に比べ、興院は疲れ果てた優里の球を打つのは間違いない
大輔はそう感じ、祈るような思いで次のボールを待った。
二球目のカーブは清村が上手くタイミングを合わせて拾ったが、レフトのポールから僅か左に切れていく大ファールとなり、期せずして追い込めた。
大輔は一球ストレート高めに外そうとしたが、優里が首を振った。
(勝負?)
大輔がストレートのサインを出してストライクゾーンの内側でミットを構えると、ようやく優里は頷いた。
そして、華奢な体を大きくしならせて投げた三球目は…
「ストライッ!」
清村はバットが出ず、三球三振に倒れると、天を仰いだ。
大輔はその球の威力に驚きを見せたが、一番驚いたのは監督の村上だった。
(水谷…ここに来てギアを上げてきた。
どこにそんな力が残ってたんだ…)
続く四番の杉山は清村への投球を見て、気合いを入れ直してバ右ッターボックスに入った。
(一死二塁…四番か
三番に強硬策を命じておいてここでのバントはない。
真っ向勝負)
大輔はストレートを要求
優里も頷いて、第一球を投じた。
「ストライっ!」
清村が三振した球よりエグいストレートが内角に決まり、杉山は手を出さなかった。
いや、手が出なかったのだ。
(今度は外に…)
大輔は外角ボールゾーンに構えた。
優里は頷き、第二球をサイン通り外角に投げた。
しかし、大輔の要求したコースよりボール一個分内に入ってきた。
杉山は思わずバットを出したが、ミートせず、一塁スタンドに入るファールとなった。
三球目は…
ギアを上げた優里のボールはまだまだ威力があったが、球数を放らせたくない
それが大輔の思いであった。
(三球目は高めにボール二個分外す)
これに手を出してくれれば…
大輔の意図を即座に理解した優里はまた頷き、さらに力を込めて要求通りのコースを突いた。
打つには少し高すぎる球が来たが、その威力によりバットを出さざるを得ず、杉山はコンパクトに振った。
金属音が鳴り響き、打球は優里の頭上を越えていった。
だが、センターの久本はほぼ動かず、平凡なフライとなった打球を難なくキャッチした。
ツーアウト
あと一人
出来過ぎた内容に大輔は、手応えを感じると共に、優里の状態を心配した。
しかし、視線の先の優里はバックを守る内、外野に向かって、あと一人だと言わんばかりに、ツーアウトのジェスチャーをし、皆を鼓舞した。
そして、優里はゆっくりと向き直り、大輔の方に視線を向けた。
(…)
大輔は優里の表情を見て、いけるという自信を持った。
五番の内藤は今日猛打賞で、その全てが長打という一番怖い打者だった。
しかし、それはあくまでも岸が打たれたもの。
最後の場面で集中力を発揮する優里にとっては、前の打者達とそう差はない。
大輔は初球からストレートで行くように指示。
優里も頷き、二塁ランナーを目で牽制しながら目一杯の力を注ぎ、そして投げ込んだ。
2
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる