420 / 469
帰郷
「心ちゃん
忘れ物はないかい?」
武雄が後ろから声をかけてきた。
「うん…
まさか、こんな形で実家に戻る事になるとはね…」
心は荷物をバッグに詰め込みながら、少し笑みを浮かべながら呟いた。
「お父さんの容態が心配だな。」
「電話じゃよくわかんなかったし、とにかく行ってみないと。
それじゃあ行ってきます。」
「気をつけてな。」
「ありがとう。
晃之さんには話してはいるけど、また今晩連絡するって言っておいて。」
「ああ、わかったよ。」
心配そうに玄関で見つめる武雄に、心は微笑んで手を振ると、ドアを開けて外に出ていった。
ここから東京駅まで一時間電車を乗り継いで行き、新幹線と在来線、バスに揺られて、ようやく実家に着く。
およそ五時間の長旅だ。
本来であれば、ニューハーフになった事をカミングアウトしていないだけに、非常に帰りにくい状況であるが、父のアクシデントがあり、そんな事を気にしている場合ではなくなってしまった。
ただ、母は今の自分の姿を見て、腰を抜かさんばかりに驚くであろう。
そして、引きこもりの兄は出てくるだろうか。
自分が不遇な人生を歩んでいるのは、心が生まれてきたせいだと、以前、ハッキリと言った。
その弟が帰ってきたら…
心は憂鬱でしかなかった。
忘れ物はないかい?」
武雄が後ろから声をかけてきた。
「うん…
まさか、こんな形で実家に戻る事になるとはね…」
心は荷物をバッグに詰め込みながら、少し笑みを浮かべながら呟いた。
「お父さんの容態が心配だな。」
「電話じゃよくわかんなかったし、とにかく行ってみないと。
それじゃあ行ってきます。」
「気をつけてな。」
「ありがとう。
晃之さんには話してはいるけど、また今晩連絡するって言っておいて。」
「ああ、わかったよ。」
心配そうに玄関で見つめる武雄に、心は微笑んで手を振ると、ドアを開けて外に出ていった。
ここから東京駅まで一時間電車を乗り継いで行き、新幹線と在来線、バスに揺られて、ようやく実家に着く。
およそ五時間の長旅だ。
本来であれば、ニューハーフになった事をカミングアウトしていないだけに、非常に帰りにくい状況であるが、父のアクシデントがあり、そんな事を気にしている場合ではなくなってしまった。
ただ、母は今の自分の姿を見て、腰を抜かさんばかりに驚くであろう。
そして、引きこもりの兄は出てくるだろうか。
自分が不遇な人生を歩んでいるのは、心が生まれてきたせいだと、以前、ハッキリと言った。
その弟が帰ってきたら…
心は憂鬱でしかなかった。
あなたにおすすめの小説
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?