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喪失
「どうぞ、おかけ下さい。」
事務員の女性に促されて、愛は、ソファーに腰掛けた。
しばらくすると、担当者が入ってきて、一礼して向かい側に座った。
「それで何かわかったんでしょうか?」
愛は、居ても立っても居られず、フライング気味に本題に入った。
担当の男は、茂森といい、愛からの依頼を引き受け、調査をしていた。
調査…
愛が依頼したのは、失踪してしまった夫の捜索であった。
杉原愛は、今年二十五歳で、結婚三年目を迎えたところだった。
夫の心とは同い年で、職場で知り合い、半年の交際を経て結婚した。
結婚後、しばらくして、心に東京本社への転勤を命じる辞令が下り、東京で新婚生活を送る事となった。
しかし、引っ越しの直前に、愛の母が病気で入院。
一人娘の愛は、病床の母を置いて転居する事が出来ず、仕方なく夫の心だけが単身赴任で引っ越す事となった。
新婚早々に、このシチュエーションはキツイと感じていた愛だったが、心は単身赴任した翌月から、毎月一度は帰ってきてくれて、愛の不安を取り除いてくれた。
しかし、半年も経つと、一カ月に一度の帰宅が、三カ月に一度となり、半年に一度と、時が経つにつれ、帰る頻度が極端に減ってしまった。
心曰く、仕事が忙しく、休日出勤も多いという事だった。
愛は不満を言いつつも、我慢して、夫の転勤解除と、母の快方を願いながら日々を過ごしていた。
そんなある日のこと、夫と急に連絡が取れなくなったのだ。
それまでは週に一、二度は電話をしていたにもかかわらず…
心配した愛は、会社に電話をしたが、心は二カ月前に会社を辞めており、行方がわからなくなっていた。
しばらくすると、電話を解約したのか、LINEやメールも送れなくなってしまった。
途方に暮れた愛は、この興信所に調査を依頼。
本日、心の行方がわかったとして、連絡を受け、訪問したのだった。
「それで、夫は?」
愛はある程度の覚悟はしていた。
女の影がある事を。
夫は美男子という言葉が相応しいくらい、キレイな顔をしている。
単身で東京のような華やかな街で暮らしていたら、沢山の誘惑があって然りだ。
しかも、会社を辞めてまで、その相手との交際を貫こうとしたのだ。
茂森の回答を聞くまでもなく、腹は決めておこう…
愛は対面に座る茂森の顔を見つめた。
だが、茂森の口からは意味不明な言葉が返ってきた。
「ご主人を見つけることが出来ました。
今、ご主人は、女性として生活されています。」
聞き間違いか?
女性と生活していると言った?
いや、女性として生活している、たしかにそう言った。
愛は、わけがわからなくなってしまい、聞き直してみたが…
事務員の女性に促されて、愛は、ソファーに腰掛けた。
しばらくすると、担当者が入ってきて、一礼して向かい側に座った。
「それで何かわかったんでしょうか?」
愛は、居ても立っても居られず、フライング気味に本題に入った。
担当の男は、茂森といい、愛からの依頼を引き受け、調査をしていた。
調査…
愛が依頼したのは、失踪してしまった夫の捜索であった。
杉原愛は、今年二十五歳で、結婚三年目を迎えたところだった。
夫の心とは同い年で、職場で知り合い、半年の交際を経て結婚した。
結婚後、しばらくして、心に東京本社への転勤を命じる辞令が下り、東京で新婚生活を送る事となった。
しかし、引っ越しの直前に、愛の母が病気で入院。
一人娘の愛は、病床の母を置いて転居する事が出来ず、仕方なく夫の心だけが単身赴任で引っ越す事となった。
新婚早々に、このシチュエーションはキツイと感じていた愛だったが、心は単身赴任した翌月から、毎月一度は帰ってきてくれて、愛の不安を取り除いてくれた。
しかし、半年も経つと、一カ月に一度の帰宅が、三カ月に一度となり、半年に一度と、時が経つにつれ、帰る頻度が極端に減ってしまった。
心曰く、仕事が忙しく、休日出勤も多いという事だった。
愛は不満を言いつつも、我慢して、夫の転勤解除と、母の快方を願いながら日々を過ごしていた。
そんなある日のこと、夫と急に連絡が取れなくなったのだ。
それまでは週に一、二度は電話をしていたにもかかわらず…
心配した愛は、会社に電話をしたが、心は二カ月前に会社を辞めており、行方がわからなくなっていた。
しばらくすると、電話を解約したのか、LINEやメールも送れなくなってしまった。
途方に暮れた愛は、この興信所に調査を依頼。
本日、心の行方がわかったとして、連絡を受け、訪問したのだった。
「それで、夫は?」
愛はある程度の覚悟はしていた。
女の影がある事を。
夫は美男子という言葉が相応しいくらい、キレイな顔をしている。
単身で東京のような華やかな街で暮らしていたら、沢山の誘惑があって然りだ。
しかも、会社を辞めてまで、その相手との交際を貫こうとしたのだ。
茂森の回答を聞くまでもなく、腹は決めておこう…
愛は対面に座る茂森の顔を見つめた。
だが、茂森の口からは意味不明な言葉が返ってきた。
「ご主人を見つけることが出来ました。
今、ご主人は、女性として生活されています。」
聞き間違いか?
女性と生活していると言った?
いや、女性として生活している、たしかにそう言った。
愛は、わけがわからなくなってしまい、聞き直してみたが…
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