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機会損失
愛が夫と最後に会ったのは、心が八カ月前に東京から自宅に帰ってきたときであった。
このときも、半年振りの帰宅であり、普段から仕事で忙しいという理由から帰らない夫に、愛も渋々ではあるが、了解していた。
だが、心は、既に去勢手術を終えており、女性ホルモンの投与を始めてからは十カ月が経過していた。
このとき、心の外見は明らかに変化しており、気付けるチャンスはあったのだが、まさかそんな事になっているとは夢にも思わない愛は、機会を逸してしまった。
対する心は、大きな緊張感に包まれていた。
前回帰ってきた時は、女性ホルモンを始めて四カ月が経過したところで、それほどの変化は見られなかった。
しかし、その後、一気に女性化が進み、乳房の膨らみ、全身に皮下脂肪が付いて柔らかな印象となり、睾丸摘出により、その傾向がさらに加速していた。
つまり、今回ばかりはバレてしまう。
そして、指摘された時点でカミングアウトしよう…
心は覚悟を決めて、家のドアを開けた。
「お帰りなさい。」
「ただいま」
「あれ?」
ほらっ、来た!
愛の言葉に、心は身構えた。
「心、なんか太ったんじゃない?」
「えっ…
そう?」
「うん。なんか、そんな気がする。
バランスのいい食事してる?」
「あー、なかなか
時間がなくて。」
「ダメだよ、体壊しちゃうよ。
ご飯まだでしょ?」
「うん。
まだ…だよ。」
「そうなんじゃないかと思ってね、今日は、野菜たっぷりのメニューにしたよ。
手洗いとうがいして、早く食べよ。」
ここで、全てバレると、覚悟していた心だったが、愛が鈍いのか、先ずはスルーされた。
だが、時間の問題だった。
もう、心にはタマがないのだから。
このときも、半年振りの帰宅であり、普段から仕事で忙しいという理由から帰らない夫に、愛も渋々ではあるが、了解していた。
だが、心は、既に去勢手術を終えており、女性ホルモンの投与を始めてからは十カ月が経過していた。
このとき、心の外見は明らかに変化しており、気付けるチャンスはあったのだが、まさかそんな事になっているとは夢にも思わない愛は、機会を逸してしまった。
対する心は、大きな緊張感に包まれていた。
前回帰ってきた時は、女性ホルモンを始めて四カ月が経過したところで、それほどの変化は見られなかった。
しかし、その後、一気に女性化が進み、乳房の膨らみ、全身に皮下脂肪が付いて柔らかな印象となり、睾丸摘出により、その傾向がさらに加速していた。
つまり、今回ばかりはバレてしまう。
そして、指摘された時点でカミングアウトしよう…
心は覚悟を決めて、家のドアを開けた。
「お帰りなさい。」
「ただいま」
「あれ?」
ほらっ、来た!
愛の言葉に、心は身構えた。
「心、なんか太ったんじゃない?」
「えっ…
そう?」
「うん。なんか、そんな気がする。
バランスのいい食事してる?」
「あー、なかなか
時間がなくて。」
「ダメだよ、体壊しちゃうよ。
ご飯まだでしょ?」
「うん。
まだ…だよ。」
「そうなんじゃないかと思ってね、今日は、野菜たっぷりのメニューにしたよ。
手洗いとうがいして、早く食べよ。」
ここで、全てバレると、覚悟していた心だったが、愛が鈍いのか、先ずはスルーされた。
だが、時間の問題だった。
もう、心にはタマがないのだから。
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