11 / 409
天職
「多村組長様、ご無沙汰しております。」
胡散臭い男は整髪料がべっとり付着した頭を深々と下げ
媚びへつらうような笑顔を見せた。
「おう、久しぶりだな槇村。
さっき電話で話したのはコイツの事だ。
お前のところで面倒見てやってくれ。」
槇村は亮輔を一目見て歓声を上げた。
「これは!! スゴイ上玉じゃあないですか!!」
「そうだろ?」
「ええ。 さっきお聞きした額でしたら
完済するのもあっという間です。
頑張ってねキミ。」
「…」
槇村は馴れ馴れしく亮輔の肩を何度もポンポンと叩いた。
「と、いうことだ。
亮輔、槇村のところで精一杯頑張って、また戻って来い。」
「はい… わかりました。」
亮輔は肩を落として元気無く、槇村と二人で部屋を出て行った。
槇村は車の助手席に亮輔を乗せエンジンをかけた。
その瞬間、さっきまでの媚びた表情が消え去り、高圧的な態度に急変した。
「お前もつくづくバカだな。 組長の女に手を出すなんて。」
「…」
「おい、よく覚えとけ。お前が借金を返すまでは俺が飼い主だ。
今後一回でもそんな態度をしてみろ。
絶対に許さんからな。」
槇村はヤクザ顔負けの鋭い目つきで亮輔を横目で睨んだ。
「…すいません」
その迫力に亮輔は思わず謝ってしまった。
3ヶ月前の亮輔なら迷わず手が出ていたことだろう。
しかし、去勢された上に女性ホルモンまで投与されている現在、反発する力など微塵も残っていなかった。
「よし、それでいい。 お前はまだ女になって間が無いだろう。
俺が一から教えてやるから楽しみにしておけ。」
槇村は満足げに笑った。
亮輔はもう充分に地獄を味わったと思っていた。
しかし、本当の地獄はこれからだということを、身をもって知ることになる。
あなたにおすすめの小説
世界の終わりにキミと
フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。
そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。
しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…