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抜擢
「専務、白橋町の店でよろしいですね?」
運転手はエンジンをかけながら行き先の確認を亮輔にすると
「うん。そうね…」
亮輔は鏡を取り出し、化粧のチェックをしながら答えた。
「あの… 聞いてもよろしいでしょうか?」
運転手は車をまだ走らそうとせず、亮輔の方を振り返った。
「どうしたの?」
亮輔は鏡をバッグにしまいながら顔を上げた。
「自分は今日付けで、組の方からこちらの会社に来たんですが… 専務が推薦してくれたそうですね。ありがとうございます。
でも、自分なんかを何故推して下さったんですか?」
「えっ? あなた自分でわかんないの?」
亮輔は意外な表情を浮かべた。
「あ… すいません。なんか、出過ぎたことを聞いてしまいまして…」
「ううん。いいのよ。わからないなら教えてあげるわ。多喜クン… あなたを選んだ理由はね… 私があなたを知ってるからよ。」
「えっ?」
「久しぶりね… 多喜。」
「えっ? えっ!?」
「わからないのか? 松山亮輔だよ。」
「え~っ!? じょ、冗談ですよね…
だって 、前に見た時とは、顔も雰囲気も全部違うし‥」
「また手術したんだよ。私が松山亮輔だって事は秘密にしてるんだから誰にも言うなよ。」
「確かに… 今の喋り方は亮輔ぽかったですけど…」
「じゃあ、お前のアソコの特徴を言ってやろうか? 」
亮輔はニヤっと笑って言った。
「やっぱり亮輔なのか…?」
「さっきからそうだって言ってんだろ。」
多喜は一度ハンドルに頭を押しつけた後、再度振り返って亮輔の顔をじっと見た。
「じゃあ、本当の綾香さんは?」
「詳しくは言えないけど、もういないよ。」
「で、亮輔がオヤジの嫁に…」
「まあ、そういうことだよ。」
ようやく多喜はすべてを理解したようだった。
「オヤジと結婚した綾香さんが、実は松山亮輔で、昔仲の良かった俺を引っ張り上げてくれたってことなんだな。」
「勘違いしないでね。私はあくまでもビジネスの事を第一に考えて多喜にこっちに来てもらうように頼んだのよ。」
すっかり女としての雰囲気を纏った亮輔の姿に、多喜は心をかき乱される思いで見つめた。
だが、一つだけ解せない点があった。それは、あれだけ酷い目に遭わされた多村に対して、亮輔自身が感謝と愛情を持っている事だった。
「亮輔、お前、なんでオヤジと一緒になろうと思ったんだ?」
「それは極道の世界でまた生きたいからよ。」
「でも、それってお前の本心なのか?」
「もちろんよ。何か文句あるの?」
多喜と亮輔の言い合いは、少しボルテージが上がっていった。
運転手はエンジンをかけながら行き先の確認を亮輔にすると
「うん。そうね…」
亮輔は鏡を取り出し、化粧のチェックをしながら答えた。
「あの… 聞いてもよろしいでしょうか?」
運転手は車をまだ走らそうとせず、亮輔の方を振り返った。
「どうしたの?」
亮輔は鏡をバッグにしまいながら顔を上げた。
「自分は今日付けで、組の方からこちらの会社に来たんですが… 専務が推薦してくれたそうですね。ありがとうございます。
でも、自分なんかを何故推して下さったんですか?」
「えっ? あなた自分でわかんないの?」
亮輔は意外な表情を浮かべた。
「あ… すいません。なんか、出過ぎたことを聞いてしまいまして…」
「ううん。いいのよ。わからないなら教えてあげるわ。多喜クン… あなたを選んだ理由はね… 私があなたを知ってるからよ。」
「えっ?」
「久しぶりね… 多喜。」
「えっ? えっ!?」
「わからないのか? 松山亮輔だよ。」
「え~っ!? じょ、冗談ですよね…
だって 、前に見た時とは、顔も雰囲気も全部違うし‥」
「また手術したんだよ。私が松山亮輔だって事は秘密にしてるんだから誰にも言うなよ。」
「確かに… 今の喋り方は亮輔ぽかったですけど…」
「じゃあ、お前のアソコの特徴を言ってやろうか? 」
亮輔はニヤっと笑って言った。
「やっぱり亮輔なのか…?」
「さっきからそうだって言ってんだろ。」
多喜は一度ハンドルに頭を押しつけた後、再度振り返って亮輔の顔をじっと見た。
「じゃあ、本当の綾香さんは?」
「詳しくは言えないけど、もういないよ。」
「で、亮輔がオヤジの嫁に…」
「まあ、そういうことだよ。」
ようやく多喜はすべてを理解したようだった。
「オヤジと結婚した綾香さんが、実は松山亮輔で、昔仲の良かった俺を引っ張り上げてくれたってことなんだな。」
「勘違いしないでね。私はあくまでもビジネスの事を第一に考えて多喜にこっちに来てもらうように頼んだのよ。」
すっかり女としての雰囲気を纏った亮輔の姿に、多喜は心をかき乱される思いで見つめた。
だが、一つだけ解せない点があった。それは、あれだけ酷い目に遭わされた多村に対して、亮輔自身が感謝と愛情を持っている事だった。
「亮輔、お前、なんでオヤジと一緒になろうと思ったんだ?」
「それは極道の世界でまた生きたいからよ。」
「でも、それってお前の本心なのか?」
「もちろんよ。何か文句あるの?」
多喜と亮輔の言い合いは、少しボルテージが上がっていった。
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