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新田薫編
初恋
多喜は家に帰るとすぐに薫にLINEした。
ちょっとガツガツしすぎかと思ったが、薫から間髪入れずに返信が来た為、少しホッとした。
次からは、もう少し落ち着いて行動しようと、心に誓った多喜だったが、我慢出来ずに、翌日の月曜日の仕事終わりに薫を食事に誘ってしまった。
これも恋愛馴れしていない多喜らしいところではあったが、薫もそうだったので、何の問題もなく、二つ返事でその誘いに乗ってきた。
「昨日の今日で、もう誘っちゃってすみません。」
多喜は頭を掻きながら、ラーメンを来るのを待った。
緊張気味で、間がもたず、見たくもない壁に貼られたメニューを見つめながら。
「いえ、すごく嬉しいです。」
薫の方も顔を真っ赤にして俯き加減で言った。
二人はラーメンを食べ、今度こそは自分が出すという薫の申し出を固辞して、多喜が支払った。
そして、二人でまたタクシーに乗り、家の前まで帰ってきた。
「新田さん、えっと、少し時間ありますか?」
「え?ワタシは‥大丈夫ですけど」
「そこの公園にちょっとだけ行ってみませんか。」
「公園‥ですか‥
はい。」
真っ直ぐ家に帰るのが惜しいと感じた多喜は、勇気を振り絞って薫を誘ったが、またしても成功した。
マンション近くに大きな池があり、その周りが公園になっている場所がある。
二人とも、単独では来たことがあったが、誰かと訪れた事はなかった。況してや、こんな真夜中に‥
それでも、二人はリラックスして、ベンチに座って、自分の事や、趣味の事等を話し、時間を忘れるくらい楽しいひとときをすごしたのだった。
「あ、もうこんな時間だ。すいません、引っ張りすぎちゃいましたね。」
多喜は自らの腕時計を見て、申し訳なさそうに言った。
「いえ、ワタシの方は、全然大丈夫ですよ。すごく楽しかったです。」
薫がそう言うと、多喜は暫く沈黙し、やがて
、薫の方を見つめて言った。
「新田さん、あの‥」
「はい?」
「知り合ってから、ほんの少ししか経ってないですが‥俺と付き合ってくれませんか。」
「えっ」
薫は驚いて、多喜の顔を見つめた。
自分はもう完全に多喜の事が好きになっていたが、多喜の方もそうだとは夢にも思っていなかった。
こうして誘ってきたのだから、少しは好意を持ってくれていると思っていたが‥
しかし、ニューハーフになって初めて、自らが好きだという感情をもった、この青年に対し、素直に気持ちをぶつけるべきだと、すぐに判断して答えを導き出した。
勿論、確認すべき事は何度でもしておかなければいけなかったが
「多喜さん‥ワタシ、ニューハーフっていうか男ですし‥お付き合いは‥」
「あの、自分にとっては、そんなの関係ありません。
あなたに一目惚れしました。タクシーを待っていたあの時に。
で、昨日、今日こうして一緒に時間をすごさせてもらって、すごく楽しくて、全部が素敵な人なんだって。」
「多喜さん‥」
「俺、あんまり女の人と付き合った事ないから、どうやって告白すんのかわからないんすけど、新田さんには、今、告白しとかないと絶対後悔するって思ったんです。
これは俺の野生の勘です。」
「野生の勘て」
薫は思わず笑ってしまった。
だが、すぐに気を取り直し、多喜の目を見ながら言った。
「ワタシも多喜さんの事が好きです。
こんなワタシで良かったら‥お付き合いしたいです。」
「マジっすか!やった!」
多喜は歓喜の声を上げ、小さく拳を握りしめた。
お互いに合うという感覚はあったが、やはり普通の男女間での話ではなかったので、どっちに転ぶかわからなかった。
が、一方で、薫はきっと受け入れてくれるという自信もあり、多喜の一世一代の告白はあっさりと実を結んだのだった。
ちょっとガツガツしすぎかと思ったが、薫から間髪入れずに返信が来た為、少しホッとした。
次からは、もう少し落ち着いて行動しようと、心に誓った多喜だったが、我慢出来ずに、翌日の月曜日の仕事終わりに薫を食事に誘ってしまった。
これも恋愛馴れしていない多喜らしいところではあったが、薫もそうだったので、何の問題もなく、二つ返事でその誘いに乗ってきた。
「昨日の今日で、もう誘っちゃってすみません。」
多喜は頭を掻きながら、ラーメンを来るのを待った。
緊張気味で、間がもたず、見たくもない壁に貼られたメニューを見つめながら。
「いえ、すごく嬉しいです。」
薫の方も顔を真っ赤にして俯き加減で言った。
二人はラーメンを食べ、今度こそは自分が出すという薫の申し出を固辞して、多喜が支払った。
そして、二人でまたタクシーに乗り、家の前まで帰ってきた。
「新田さん、えっと、少し時間ありますか?」
「え?ワタシは‥大丈夫ですけど」
「そこの公園にちょっとだけ行ってみませんか。」
「公園‥ですか‥
はい。」
真っ直ぐ家に帰るのが惜しいと感じた多喜は、勇気を振り絞って薫を誘ったが、またしても成功した。
マンション近くに大きな池があり、その周りが公園になっている場所がある。
二人とも、単独では来たことがあったが、誰かと訪れた事はなかった。況してや、こんな真夜中に‥
それでも、二人はリラックスして、ベンチに座って、自分の事や、趣味の事等を話し、時間を忘れるくらい楽しいひとときをすごしたのだった。
「あ、もうこんな時間だ。すいません、引っ張りすぎちゃいましたね。」
多喜は自らの腕時計を見て、申し訳なさそうに言った。
「いえ、ワタシの方は、全然大丈夫ですよ。すごく楽しかったです。」
薫がそう言うと、多喜は暫く沈黙し、やがて
、薫の方を見つめて言った。
「新田さん、あの‥」
「はい?」
「知り合ってから、ほんの少ししか経ってないですが‥俺と付き合ってくれませんか。」
「えっ」
薫は驚いて、多喜の顔を見つめた。
自分はもう完全に多喜の事が好きになっていたが、多喜の方もそうだとは夢にも思っていなかった。
こうして誘ってきたのだから、少しは好意を持ってくれていると思っていたが‥
しかし、ニューハーフになって初めて、自らが好きだという感情をもった、この青年に対し、素直に気持ちをぶつけるべきだと、すぐに判断して答えを導き出した。
勿論、確認すべき事は何度でもしておかなければいけなかったが
「多喜さん‥ワタシ、ニューハーフっていうか男ですし‥お付き合いは‥」
「あの、自分にとっては、そんなの関係ありません。
あなたに一目惚れしました。タクシーを待っていたあの時に。
で、昨日、今日こうして一緒に時間をすごさせてもらって、すごく楽しくて、全部が素敵な人なんだって。」
「多喜さん‥」
「俺、あんまり女の人と付き合った事ないから、どうやって告白すんのかわからないんすけど、新田さんには、今、告白しとかないと絶対後悔するって思ったんです。
これは俺の野生の勘です。」
「野生の勘て」
薫は思わず笑ってしまった。
だが、すぐに気を取り直し、多喜の目を見ながら言った。
「ワタシも多喜さんの事が好きです。
こんなワタシで良かったら‥お付き合いしたいです。」
「マジっすか!やった!」
多喜は歓喜の声を上げ、小さく拳を握りしめた。
お互いに合うという感覚はあったが、やはり普通の男女間での話ではなかったので、どっちに転ぶかわからなかった。
が、一方で、薫はきっと受け入れてくれるという自信もあり、多喜の一世一代の告白はあっさりと実を結んだのだった。
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