ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

再点火

「真ちゃん、こんな高そうなお店‥」

薫は周りを見回しながら小声で話しかけてきた。

「そんなに高くないよ。
たまにはイタリアンもいいんじゃない?
ラーメンもいいけど。」

「嬉しい」

今日が何回目の日曜デートだろうか。

二人は映画に行き、買物をした後、多喜が予約していたイタリアンレストランで食事をしていた。

一々薫を感激させたが、デザート後に最後のコーヒーが出た後、多喜は上着のポケットをゴソゴソして、何かを取り出し、手渡してきた。

「はい、これ」

「えっ?」

小さなその箱は、どこをどう見ても指輪に違いなかったが、薫自身、ドラマかコント番組でしか、そういうシチュエーションを目にした事がなかった為、一瞬、頭が真っ白になった。

すぐに気を取り直して、少し手を震わせながら箱を開けると、やはり中身は指輪で、ダイヤだった。

「真ちゃん、これ‥」

「薫、俺らって出会ってまだそんなに経ってなくて、引くかもしれないと思ったけど‥」

「‥」

「俺と結婚して下さい。」

あまりにもストレートなプロポーズだった。

「真ちゃん‥」

薫はそれだけ言った後、少し呆然としていたが、ハッとしたような顔になった。

「真ちゃん、ワタシも真ちゃんの事が大好きで、ずーっと一緒にいれたら良いなって思ってる。
でも、ワタシの戸籍は男だし‥こういうふうにお付き合いするのと結婚は、全く別だと考えてた」

「勿論、戸籍の事があるのはわかってるし、すぐに完璧な結婚をする事が出来ないのは俺にもわかってる。
でも、俺は人生で一番好きな人に出会ったんだよ。
これを逃したくないんだ。」

「真ちゃん‥」

「もし、薫も同じ気持ちでいてくれるなら、受け取って欲しい。」

「ワタシも真ちゃんの事、心から愛してる。
ワタシには勿体無い人だよ‥
だからこそ、簡単には‥」

「好きな気持ちだけじゃダメだって言われるけど、俺はそんな事ないと思うよ。
好きっていう気持ちがあれば、全部何とかなるって思ってる。」

どこまでも真っ直ぐな多喜のプロポーズに、最終的には薫も根負けした。

いや、根負けというより、素直になったのだ。

「ありがとう、真ちゃん‥
こんなワタシですけど、よろしくお願いします。」

薫も一度は女として生きる事を諦め、極道の世界に飛び込んだ。

それでも、理解ある人達のおかげで、また自分らしく生きられるチャンスをもらった。

それならば、例えどんな失敗をしても、素直な気持ちで、自分に正直に生きてみようと、そこで思い直したのだ。

目の前にいる、愛する人を信じてみようと‥
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