ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

再進撃

多喜が薫にプロポーズした翌日、その日もまた二人は仕事終わりに待ち合わせをして、ファミリーレストランに足を運んでいた。

「結婚式の事なんだけど、俺は親いないし、施設育ちだから‥ちゃんとした式にならないかもしれないんだ。」

「ワタシも両方とも亡くなってるし、それにニューハーフだから、呼べる人もいなし、何もしなくても大丈夫だよ。」

「その事なんだけど、俺は薫のウェディングドレス姿が見たいし、二人だけで式挙げない?」

「えっ、いいの?」

いつも、自分がニューハーフという引け目から、何かと多喜の提案を固辞してしまう薫だったが、これには断る素振りを見せなかった。

ウェディングドレスを着るという、幼い頃からの夢が叶おうとしていたからだ。

「今ってさ、ジミ婚てのが流行りみたいじゃん?
二人だけのプランみたいなのもあるらしいよ」

何事も性急に事を進める多喜らしく、昨夜のうちにネットで情報を得ていた。

「あと、新婚旅行の事だけど‥」

多喜はそれだけ言うと、言葉を途切れさせた。自身の携帯が鳴ったからだ。

「あ、ごめん、会社から電話だ。」

多喜は薫に申し訳なさそうに電話に出た。


「もしもし、多喜」

電話の主は亮輔だった。

「あ、専務、お疲れ様です。
どうしたんですか?」

「急なんだけど、明日、社長とそっちに行くから、昼の12時にお店に来てもらっていい?」

「はい、了解しました。
それにしても珍しいですね、社長まで来られるなんて。」

「詳しい事は明日行って話すわ。
それじゃあね。」

亮輔はそれだけ言うと、電話を切った。


「お仕事の電話?」

薫は、少し緊張感をもって話をしていた多喜を、心配そうに見つめた。

「うん。東京から‥
専務と社長が明日こっちに来るらしくて。」

「そうなんだ‥こんな遅くまで電話がかかってくるなんて、真ちゃんも大変だね」

「うーん、それほどでもないけどね。」

多喜は嫌な予感しかしなかった。

自分が任されてる店こそ、敵陣で営業し、抗争に発展しそうな感があったが、互いに自制をしており、すぐに暴発してしまうような事はなかった。

綾香についても、一向に姿を現さず、この一年余りの間、何の進展もなかった。

それ故に、多村が大阪に来る頻度もめっきり減り、平和な状態が続いていたのだ。

多喜も単純に店の売上を伸ばす事に専念出来たし、自分がヤクザだということも忘れそうな勢いだった。

(オヤジが、わざわざ時間を知らせて、こっちに来るということは‥)

多喜は様々なことに思いを馳せたが、その目的を推し量ることは出来なかった。
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