ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

密告

治療を終え、病院を出た二人は、少し緊張した面持ちで、綾香の車の元へ向かった。

「亮ちゃん、上手くいくといいね。」

「うん‥でも、どうなんだろ‥
男だったときの感覚なんて、もう忘れてるし‥」

「大丈夫よ。体が元通りになれば、きっとまた思い出すって。」

「わかった。何か変化があったら連絡する。
それと、綾香、あの人、会合から帰ってきたら、多分あなたを狙ってくると思う。」

「えっ」

「今日の会合で、立正会の許可を取り付けてるはず。
だって、勝手に綾香を捕まえたりなんかしたら、沢木が黙っているとも思えないし、間違いなく戦争になる。
そしたら立正会も垂水組も出てきて、もう泥沼よ。そのための根回しをしてるんだと思うよ。」

「わかった。暫くおとなしくしてるわ。」

「綾香のパパ、庄山組長にもちゃんと伝えといてね。」

「あー、あの人、昨日警察に捕まっちゃったわよ。今、取り調べ受けてんじゃないかな。

いつものように、別件で起訴されて、また別荘に行くと思うわ。」

「それ、マズイじゃん。」

亮輔は焦り気味になって言ったが、綾香は落ち着いたままだった。

「大丈夫よ。沢木組は多村みたいなワンマン体制じゃないから。
他の人達も、指示されなくても自由に動くことが出来るからね。」

「なら、いいんだけど。」

「それよりもさあ、体が元通りになったら、私が言った話、真剣に考えといてよ。」

「あ、うん‥」

「何よ、その気のない返事。
言っとくけど、私が本当に心から愛したのは亮ちゃんだけだったんだから。

二人でさあ、どこか遠くで幸せに暮らそうよ。」

「‥そんなに上手くいくかなあ」

「亮ちゃん!
アンタ、ホントに情けないこと言うようになったわね。昔の亮ちゃんは、あんなにイケイケだったのに。」

「人は変わるわよ。ワタシみたいにタマ抜かれて、徹底的に調教されちゃったら、特にね。」

「心配しないで。そんな気持ちも、体が元通りになったら、吹っ飛んじゃうから。」

「うん‥期待してるわ。
それよりも、暫くの間は出歩かないでね。
ちゃんと見張りも置いてもらうのよ。」

亮輔は念押しをして、車から降りると、綾香は窓を開け、亮輔の顔を見上げた。

「亮ちゃん、幸せになろうね!」

そう言うと、ニコッと笑い、走り去っていった。

亮輔は、ずっと車の方に視線を送っていたが、姿が見えなくなると、ゆっくりタクシー乗場の方に歩いて行った。

この薬が本当に効いたとして、果たして多村から逃げることができるのだろうか?

長年にわたって、多村から受けた恐怖心が、そう簡単には消える事はない‥

亮輔はネガティブな思考から抜け出す事が出来なかった。
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