ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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代理戦争編

出立

自宅に戻ってきた多喜は、慌てた様子で身支度を始めた。


「真ちゃん…
それで、今夜?」

「ごめんな、薫

こんな急展開になるとは思ってなかったんだけど、色んな偶然が重なって、今日しかないってなったんだ。」

「ワタシも行くわ。」

「ダメだよ。何があるかわかんねーし、薫をそんなとこに連れて行けねーよ。」

「大丈夫よ。ワタシだって元極道だし、きっと真ちゃんの役に立てるわ。
っていうか、離れたくないの。」

多喜は一瞬困ったような表情をうかべたが、諦めて薫の思いを受け入れた。

薫は髪を後ろで括り、すっかり大きく膨らんだ乳房を押しつぶすようにサラシを巻いた。ノーメイクで黒のキャップをかぶり、黒のパーカー、黒のジャージ姿になった。

だが、今や女性ホルモンに満たされたその体は、いくらそんな格好をしようとも、女性のシルエットにしか見えなかった。

「薫…」

多喜はぎゅっと薫を抱きしめてキスをした。


「薫、愛してる…
俺、お前と出会えて本当に幸せだよ」

「真ちゃん…やめて
そんな言い方されたら」

薫は目に涙を溜めて、多喜の胸に顔を埋めた。

「大丈夫。俺には薫と幸せな夫婦生活を送る人生しか見えてねーから。

もうすぐだよ。俺たちの夢が叶うのは。」

多喜は自分に言い聞かせるように言うと、薫の手を引き、マンションの下に停めている車に向かった。

二人は車に乗り込むと、一路亮輔達がいる病院に向かった。

「真ちゃん、コレはあるの?」

薫は手でピストルの形を作り、多喜に聞いた。
多喜は頷き、ダッシュボードから拳銃を取り出した。

「ワタシに持たしといてくれる?」

「えっ」

「多分、真ちゃんより扱いは上手いと思うし」

薫は銃を手に取り、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「否定はしないよ。俺は銃なんてほとんど触った事ねえし。

まあ、こんなもの使わないに越した事はないけどな。」



亮輔、綾香、多喜、薫と、四者四様の思いを交錯させながら、事態は予想できない方向に動こうとしていた。
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