ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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代理戦争編

奪還

「珍しい事もあるもんだ。

オヤジが見張りを全員撤収させているなんてな。
やっぱりもう一丁銃を用意してて正解だったぜ。」


「兄貴…」


単身で突入してきたのは大西だった。


大西は銃口を白石に向けたまま、ベッドに横たわる多喜を一瞥した。


「多喜、動けるか?」


「えっ、あ、はい」
 


「白石さんだったな

悪いが多喜は連れてくぜ」



「それは…

困りまんなあ…」


白石は両手を挙げたまま、相変わらずのキツめの大阪弁で大西に言った。


しかし、多喜が向けた銃口を見つめていた白石が、突然視線を切った。


「…」

圧倒的に形勢が有利な大西にとって、白石の微妙な変化は意外に感じた。

そして、白石の視線は銃口ではなく、自分に向けられているということに気付いた。

いや、正確には自分ではなく、自分のやや左側に。


大西は全てを悟り、銃を下ろした。

自分のこめかみに銃口を当てられていたからだ。

横目で見ると、自分に銃を向けているのは多村のボディガードをしている男だった。


「おう、大西
ご苦労だったな

お前か亮輔が必ずここに来ると思って張ってた甲斐があったぜ。」


ボディガードの背後から多村が現れ、笑いながら大西に語りかけてきた。


「これは一本取られました。
庄山を殺るのに失敗したからどこかに身を隠してると思いましたよ。」


大西は両手を挙げたまま、落ち着いた口調で多村に言った。


「おいおい、そんな事で一々潜ってられねえよ。
それに、こっちはまだ圧倒的に有利な立場にあるんだからなあ。

キム達は今も庄山を含め、沢木の連中を消すために動いている。

俺に手を回す余裕はヤツらにはねえよ。」


「さすがですね
少し見誤ったようですね」


「まあ、そういうこった。

多喜、お前にはまだ働いてもらうって言ってたが、早速仕事をしてくれてありがとうな。

お前の人望がこうやって仲間を勝手に引き寄せてくれるってもんだ。

亮輔がここに来なかったのは残念だが、またお前に引き寄せられてここに来るさ。」


「…」


多喜は何も言わず、ただ多村を見つめていた。


「多村はん、さすがでんなあ

さっきはこの男に銃を向けられて、もう死ぬかと思て肝を冷やしましたわ。」

白石は額の汗を拭いながらホッとしたような表情を見せた。


「おい、連れて行け」

多村はお付きの人間に大西を拘束させ、そのまま外に連れ出させた。


「多村はん」


「まあ圧倒的に有利には違わねえが、俺も狙われてるって事は変わりねえからな。

しばらく身を隠すぜ。」

多村は白石にそう言い残して去っていった。


千載一遇のチャンスを逃してしまった多喜は口惜しそうに多村達の背中を見つめた。


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