ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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再起編

思い出の場所

多喜ははやる気持ちを必死に抑えながら地下鉄の駅に向かっていた。

本当ならタクシーに飛び乗りたいところだったが、出所したばかりの身で、そんな贅沢はしていられないと…地下鉄と路面電車を乗り継ぐ事にしたのだった。

そのせいで、一時間以上かかってしまったが、ようやく二人の「思い出の地」に降り立ったのだった。


大西の話によると、薫は毎日その場所に赴き、かなり長い時間をそこで過ごすのだとか。

いまだに重い後遺症やフラッシュバックに苦しむ薫にとって、何もせずにリラックスできる場所があると無いとでは大違いだと…

時刻は午後三時を回ったところだ。

大西の話の通りとすれば、まだそこにいる筈だ。

多喜は早歩きで、二人の思い出の地であるその公園に足を踏み入れたのだった。

桜が咲いているのに気付いた多喜は、薫に出会った頃を思い出していた。

この桜の道を抜けると、広場があり…



池に沿って歩き、遊歩道を抜けると、突き当たりにベンチがあるはず…



多喜は三つあるベンチを左から順番に視線を送った。


「…」


二番目のベンチに薫はいた


何をするでもなく、ただ座り、ぼんやりとハトを見つめていた。


「…」

数歩近づいて、名前を呼ぼうとした瞬間、薫が気付き、顔を上げた。


「…薫…」

確かに痩せていたが、以前に見た姿からは想像も出来ないくらい回復し、顔色も良かった。

薫は、無表情で多喜の姿を見つめていたが、やがて

頬を伝って涙がこぼれ落ちた。


「真ちゃん…


おかえりなさい…」


薫がそう言って立ち上がった瞬間、多喜は駆け寄ってその細い体を力強く抱きしめた。

「薫…

ごめんな…」

それだけ言うと、もう言葉にならず
多喜は声を上げて泣き出した。
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