ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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再起編

羽化

多喜と薫の店がオープンしたその日

そこから20kmほど離れた地で、一人の女が春の日差しを浴び、眩しそうな顔をしていた。



女の前に一台の車が停まり

中から五十代後半と思しき白髪混じりの背の高い男が後部座席から降りてきた。


そして、女の目の前に立つと…

いきなり抱きついた。


「洋子、会いたかったで!」

そして、男は女と熱い口づけを交わした。


「ワタシもよ!

康二!」

決して美人とは言えないその中年女こそ、その昔、亮輔によって性転換させられた多村だった。

今日、ようやく長い服役期間を終え、晴れて外の世界に出てきたのだ。

獄中で知り合い、恋人関係になった大友康二は、先に出所していたが、待ち焦がれた多村と対面し、人目も憚らず熱い抱擁を交わしたのだった。

「さあ、ささやかだがお前の出所を祝う席を用意してあるんや。」

大友は多村の肩を抱き、車に乗せた。

車に乗ると、多村は

「康二、ところでこっちの情勢はどうなの?」

すぐに質問をした。

「ああ、お前の言うてた通りや。

垂水組が六代目の引退によって大幅に弱体化しとる。
離脱した組もいくつも出てきてる。

逆に立正会は、九州の新堂会を傘下にしたのを皮切りに勢力を拡大し、その差が益々拮抗してる。」


「やっぱりね。

弱腰な大将に付いてくる兵隊はいないってことよ。

そんなことより、沢木は?」


「沢木は今もミナミで幅を利かせとる

もう、邪魔する組は存在せえへん。」


「情けない…

ワタシなら沢木に白昼の往来をさせるなんてことを絶対に許さなかったわ」


「せやな。
これから、ミナミの方は洋子に任せるさかい、好きにやったらええ。

キムも健在やで」


「キムか

あの時は役に立たなかったけど、その分、これからしっかり働いてもらうわ。

それより、大西は!?」


「ああ。
大西組は今もミナミのキャバクラと、三宅組のシマを引き継いで平穏にやっとる。
沢木と垂水も、三宅組のシマをそのまま大西が引き継ぐ事を認めとるわけやから、大西組としてもやりやすいわな。」


「くっ…あの外道が

恩を忘れやがって!

松山亮輔はどうしてる!?」


「松山は、沢木の庄山の愛人と逃げとるいう噂やったけど、洋子と同じように性転換して女になってなあ、大西の嫁として組の運営にも携わっとるっちゅー話や。」

それを聞いた多村はニヤッと笑った。

「亮輔の気持ちはよくわかるわ

一度女になったら、もう元には戻れないのよ。
ワタシだって、今さら男になんて戻りたくないもの。
それくらい女の体って最高よ。

でも、亮輔が女になってるってことは、こっちにとっても好都合よ。

大西、亮輔、綾香は絶対に許さない。

殺してやるわ。

それも一番残酷なやり方でね。」


女になっても多村の執念は衰える事を知らなかった。
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