ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

文字の大きさ
272 / 409
road to lord

debate

初詣から帰ってきた未来と涼太は、再び皆が座っている輪に加わった。

しかし、相変わらず父の孝通は未来と話そうとしなかったし、未来もまたその空気の中で会話に参加する事なく、親戚からの質問に口数少なく答えるだけだった。

夕方になり、皆が帰っていったが、涼太だけは帰らずにその場に残った。


「涼太、まだ帰らないんか?」


孝通が依然として座って寛ぐ涼太に言うと


「ああ。
兄貴と義姉さんに少し話がしたくてね。」

と、ハッキリとした口調で言った。


「話?」


「ああ。
未来ちゃんの話だよ。
義姉さんもここに来て話を聞いてくれるかい。」


涼太は台所にいる麻美に声をかけた。


麻美もさすがに無視できず、孝通の隣に座った。

その場には、この三名の他に未来と一美がいたが、一美は麻美が座るのと同時に立ち上がり、自分の部屋に消えていった。

涼太は、自分のためを思って話をしてくれるようだ。

しかし、未来にとっては、この場は針の筵、地獄に変わりなく、とても辛い時間となった。


「兄貴
ここではっきり聞いときたいんだけど、なんで未来ちゃんの事を認めてやんねーんだ?」


「認めるも何も、四年間真面目に大学に行くって言って、大阪に送り出してみればこんな姿で帰ってきた。

これが怒らずにいられるか?」


「いや、別に容姿がどうなろうと、真面目に大学に通ってんじゃん」


「そういう問題じゃない。」


「だったら何が問題か教えてくれよ。
俺はさっき未来ちゃんと話して、今の生き方に何も問題がないっていうか、誰かに文句言われるような筋合いはないって思うんだけど、その辺はどう考えてる?

義姉さん、どうなんだろう?」


「えっ、それは…」


「GIDって知ってる?

俺の会社もさ、未来ちゃんみたいに悩んで生きてきて、ようやくカミングアウトした人がいるんだよ。
勿論、会社も認めてるよ。
だってそういう時代だから。

兄貴はそういう世の中になってるって事を認識してる?
他人事だって思ってんじゃないか。」

涼太の意見はどこまでも正論で、孝通と麻美にとってはどれも耳の痛い話であった。

「じゃあ、兄貴、義姉さん
これだけは聞かせてくれよ。

未来の事をおかしいって思ってるのかどうかを」



「いや、そんな事は思ってない…」


「だったら、認めてやるのが筋なんじゃないか。
ただ、自分の子供がそんなカミングアウトをするとは思ってなかったもんだから、パニクッてしまったって事だよな?」


「まあ、そうだ…」


「よかったな、未来ちゃん
兄貴も義姉さんもちゃんと認めてくれるって。」

かなり強引に答えを出させた涼太に、未来は感謝しながらも、場の空気の重さからリアクションが取れず、何も言えなかった。


感想 1

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

世界の終わりにキミと

フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。 そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。 しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

兄になった姉

廣瀬純七
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話