ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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road to lord

外堀

「特製貝出汁ラーメン、お待ちどうさま」

新年は1月3日から営業を開始した、多喜と薫が経営するラーメン店は、昼前から忙しくしていた。  

ひっきりなしにやって来る客の処理をするのが精一杯で、食べ終わった丼が流しに溜まっていった。

「地鶏醤油ラーメン、三番さんね」


「はいっ」


それでも多喜と薫の息はぴったりで、最短時間での提供を行なっていた。

それでも客の流れは途切れなかったが。

そうこうしている間にまた次の波がやってきた。


「いらっしゃいませ、何人様ですか」

食券機の前に来た客に、薫は元気に声がけをしたが、すぐに口を噤んだ。

入ってきた男二人は、どこからどう見ても一般人ではなかったからだ。

ヤクザ

そう、テンプレのようなヤクザが二人、店に入ってきたのだ。

様子を変に思い、カウンターの中から振り返ってその方向に視線を向けた多喜は、思わず息を呑んだ。


「キム…」


そう、二名の男はキムと顔に見覚えのない者だった。


「お姉さん、オススメは何なの?」


キムは切れ長の目で薫を品定めしながら、話しかけてきた。

薫は一瞬固まって、カウンターの方を見たが、多喜が頷いたので

「あの、味玉付きの貝出汁ラーメンがお勧めです。」

と、ぎこちなく言った。


「じゃあ、それにすっか。

お前もそれでいいな」

キムが後ろの男に言うと、男は

「はい」

と、小さな声で答えた。


「薫、スープが無くなったから、準備中にして。」


「えっ…はい…
わかりました」

多喜が指示すると、薫は入口にかかってあった営業中の札を準備中に変えた。


「お客さん、ちょっとお時間を頂戴してるんですけど大丈夫ですか?」

多喜はテーブル席に座ったキム達に向かって言うと


「ああ。ゆっくりやってくれ」

キムもそう言って手を上げた。

多喜はわざとゆっくりとした手付きになり、今店内にいる客が全員食べ終わるのを待った。

二十分ほどで、キム達以外の客は全員いなくなり、薫は自動ドアのスイッチを切った。

多喜はようやくラーメンを茹で始めると、素早い手つきに変わり、すぐに作り上げた。


「お待たせしました。
味玉付き貝出汁ラーメンです」

薫も、他の客に接するのと同じように愛想良く、ラーメンを二人に差し出した。


「おーっ、これは美味そうだ。」

キムはそう言うと、箸を割り、ラーメンを一口啜った。


「うん、美味い。

美味いよな」


キムは連れの男に言うと、男も

「美味いです」

と、小さな声で返事して頷いた。

二人共、あっという間に完食したが、食べ終わるのを待って、多喜はカウンターから出て、キムの前に立った。


「キムさん」


「さすがだなあ、多喜

ラーメン屋に転身したって聞いてよ、どんなもんだろって半信半疑で来てみたら、めちゃくちゃ美味いじゃねえか。」

キムはそう言うと、多喜の顔を見上げてニヤリと笑った。
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