ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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road to lord

守るべきもの

「ねえ、しんちゃん」


「どうした、薫…」

キムに言われた言葉からまだ立ち直れていない多喜は、椅子に座ったまま、薫を見上げて言った。


「ワタシね
男時代は、少しはケンカの腕に自信があったの。
だから、沢木組長のボディガード兼運転手も務めてて。」


「ああ、そうだったよね。」


「でも、それからニューハーフになって女性ホルモン始めたり去勢して、すっかり筋力が落ちちゃって、心理的にも臆病になり…
で、例の監禁されて打たれた薬物のせいで…今ではあの頃の強さは全く無くなったわ。」

「うん…」


「でも、ワタシはあなたを心から愛してる。

何があってもあなたを守りたい

これは、いつも思ってる事なの。」


「薫…」


「でも、思ってるだけで、別に何をするって事もなかった。

さっきキムって人が来て、ワタシ、ハッとしたわ。
このままじゃいけないって。

少なくとも自分の身は自分で守らなきゃ、またしんちゃんに迷惑をかけてしまうし、それがしんちゃんを危険にさらすことに繋がる。」


「えっ、薫…
どうするつもりだ?」


「しんちゃん、ワタシまた体を鍛え直すよ。」


「えっ…」


「ワタシ、もう十年前になるけど、西長堀の空手道場に通ってたの。
フルコンタクトの実践的なやつ。」


「えっ、そうなの?」


「元々子供との時から死んだ父親に色々やらせられてたの。
ワタシが女っぽいのを嫌ってね。

ヤクザになって、沢木組長を守らなきゃいけない立場になり、もう一度習い始めたの。」


「へえ、そうだったんだね。」


「もう何年も体使った運動とかしてないし、もう一度頑張って鍛え直すわ。
そして、自分の身は勿論、しんちゃんも守りたいの。

だから、家の事とかちょっと疎かになる時があるけど、許して。」


「そんなのは全然構わないけど、無理だけはしないでくれよ。」


「うん。

しんちゃん、愛してる」

薫がそう言うと、多喜は立ち上がって抱きしめた。


「俺もヤクザ同士の抗争に首を突っ込むつもりはないが、自己防衛はしないとな。」

多喜も気合いを入れ直し、ラーメン屋の亭主から、ヤクザだったときの面影が少しだけ戻った。
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