ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

文字の大きさ
318 / 409
懐柔編

緩衝地帯

薫と亮輔は西長堀駅のの2番出口を降り、南巽行きの地下鉄に乗った。


「薫さん、何食べたい?」


「え、ワタシは何でも大丈夫ですよ。」


「ねえ、何か今日は飲みたい気分なんだけど、お酒出す店でもいい?」


「ええ。それは…」


「じゃあ、宗右衛門町の方に行こうよ。
良いお店知ってんのよ、ワタシ。」


亮輔からの提案に、頷いた薫だったが、漠然と嫌な予感がした。


「沙織さん、今はあっち方面に行くの…
まずくないですか?」


「えっ、抗争の件?」


「そうです。

神頭会の構成員が殺されたのもあの辺でしょ?
ちょっと危ない気がします。」


「大丈夫よ。
そのお店、ウチの人の知り合いでね。
会員制だし、お客さんの筋もすごくいいのよ。

それでも心配だったら、若い衆に来てもらうわ。」


「いえ、そこまでは…」


結局、薫は断りきれずに、亮輔に連れられてその店に行く事になった。


「今川」というその店は、飲食店などが入ったビルの五階にあり、寿司屋という形態を取ってはいるが、寿司を肴に酒も楽しめるバーでもあり、完全予約制且つ会員制で運営されていた。


「大将、予約なしでいきなり電話しちゃってごめんね。」


亮輔は薫と横並びに座りながら、カウンター越しに立つ大将に詫びた。


「いえ、この時間は予約入ってませんでしたんで、大丈夫ですよ。」


「ありがとう。」


「おまかせで始めさせてもらってもよろしいですか。」


「うん。お願いします」

大将は丁寧に前にあるまな板を拭き、準備を始めた。


一見して高級そうな店に圧倒され、緊張して表情が固まる薫だったが、それを見越してか、亮輔がいつもより饒舌に会話の主導権を握った。


「ねえ、薫さん

ラーメン屋の方は順調なの?」


「ええ。おかげさまで。

結構常連さんも付いてもらえて、いつも営業時間中にスープが無くなりますので、早めに店を閉める状況になってます。」


「そうなの?

それは何よりね。
多喜にその辺りの才能があったとは、思ってもみなかったわ。」


「しんちゃん…
あ、いえ、主人は何をするにもマジメに取り組むので、たとえ他の仕事を選んでいたとしても、それなりにいけたんじゃないかって思います。」


「相変わらずラブラブだね。」


「はい。
心から愛しています。」


薫は照れる事なく、淀みのない言葉で亮輔に伝えた。


「ワタシも状況が落ち着いたらお店でも始めようかなあ。」


「何のお店ですか?」


「小ぢんまりとした小料理屋みたいなの、何かいいと思わない?」


「はい。すごくいいと思います。」

薫はそう答え、深く頷いた。
感想 1

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

世界の終わりにキミと

フロイライン
エッセイ・ノンフィクション
毎日を惰性で生きる桐野渚は、高級クラブの黒服を生業としていた。 そんなある日、驚くほどの美女ヒカルが入店してくる。 しかし、ヒカルは影のある女性で、彼女の見た目と内面のギャップに、いつしか桐野は惹かれていくが…

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

兄になった姉

廣瀬純七
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

交換した性別

廣瀬純七
ファンタジー
幼い頃に魔法で性別を交換した男女の話